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279.トピック=大震災における教員特殊業務手当 [8.トピック]

 東北・関東大震災が発生して十日を迎える。
 3月11日(金)午後2時46分ごろ三陸沖を震源として発生した大地震は、宮城県北部に震度7の揺れを記録した。太平洋側の広い地域に大津波が押し寄せ、港に停泊中の船舶や自動車などが次々と流され、木造家屋はいとも簡単に破壊された。死者・行方不明者は2万人を超えるとの報道である。福島第一原発も津波の被害で水素爆発などが発生した。
 あまりに巨大な自然災害と想像を絶する被害に声も出ないが、一般住民だけでなく、多くの教員が学校で被災し、児童・生徒の保護に当たっている。

 教員が、週休日等において、非常災害時における児童もしくは生徒の保護または緊急の防災もしくは復旧の業務に従事した場合には、6,400円(特に被害が甚大な場合には、12,800円)の教員特殊業務手当が支給されることになっている。ただし、「学校の管理下において行う非常災害時等の緊急業務」であることが前提となっている。
 そのため、「一般住民に対する炊き出し、給水、救護の業務または一般民家に対する家屋補修等の業務に従事した場合、当該業務は規則第24条の2第1項第1号(1)に該当するか」との問いに対して、制度創設時の文部省は、「学校の管理下において行われた業務ではないので該当しない」と答えている。(「教員特殊業務手当の運用に関する質疑応答集」昭48.1.23、48初財2号文部省初等中等教育局財務課長)
 非常災害が発生した場合には、通常、災害対策基本法や災害救助法などを根拠として策定された地域防災計画に基づき、学校に避難所が開設されることが多い。当該計画に学校も組み込まれ、都道府県知事や市町村長の指揮命令系統の下に教職員も置かれ、救助要員や復旧要員などに動員されることがある。このような形態で業務に従事した場合には、もはや「学校の管理下において行う業務」とは言い難いことから、教員特殊業務手当は支給されない訳である。

 昭和48年質疑応答集は、「避難住民の救援業務等は、児童又は生徒の保護の業務に比べて、心身に著しい負担を与える程度が小さい」と考えているのだろうか。それとも、「避難住民の救援業務は、学校の管理下において行われるものではなく、教員としての業務ではないから、学校教育側が当該業務に係る給与を負担する義務はない」との立場なのだろうか。
前者の考え方は、教育という営みの専門性を考えた場合には一見肯けそうなのだが、超過勤務手当制度が採用されていない教員が、現実に週休日等において避難住民の救援業務等に従事した場合の負担を踏まえているとは思えない。
 しからば、後者の立場はどうかというと、「国家公務員の兼職における併給禁止規定は、正規の勤務時間外における超過勤務手当や特殊勤務手当の支給まで禁止するものではない」とする考え方と親和的である。つまり、当該超過勤務を命じた者が、それに対する超過勤務手当(追加賃金+割増賃金)等を負担すべきと考えているのではないかと思われる。
 とはいうものの、首長部局から教員に対して超過勤務手当に相当する手当が支給されるとは思えない。であれば、児童・生徒の保護に当たる場合と比較すると、あまりに給与上の処遇に較差がありすぎるのではないかと思う。

 平成7年兵庫県南部地震に係る教員特殊業務手当の取扱いについて、人事院事務総長通知が発出されている。(平7.2.4 給実乙第103号文部事務次官あて)
 「平成7年兵庫県南部地震により被災した学校の施設等に避難している児童又は生徒を含む被災者の救援業務で学校の管理下において行うものについては、人事院規則9-30(特殊勤務手当)第24条の2第1項第1号(1)に規定する「非常災害時における児童(幼児を含む。以下この項において同じ。)若しくは生徒の保護又は緊急の防災又は復旧の業務」に該当するものとして取り扱ってください。」
 これを受けて、文部省教育助成局財務課から各都道府県教育委員会に対して「人事院通知の趣旨を踏まえつつ、できる限り弾力的な運用がなされるよう配慮願います。」との要請が行われている。

 公立の義務教育諸学校等の教育職員を正規の勤務時間を超えて勤務させる場合は、いわゆる超勤4項目に限定される。国の定める基準によれば、「非常災害の場合に必要な業務に従事する場合であって臨時又は緊急のやむ得ない必要があるときに限るものとする」こととなっている。この規定には、「学校の管理下において…」という文言は入ってはいない。教員特殊業務手当の支給対象となる業務より幅広く解釈してよいのかどうか、詳細に考察できるほどには確認していない。
 先程の財務課の要請は、「学校の管理下において…」という規定とはかけ離れた非常災害時における教員の業務従事実態を踏まえて、敢えて行ったものではないのだろうか…。

 避難生活を余儀なくされた多くの方々にお見舞いを申し上げますとともに、亡くなられた多くの方々の御冥福を心からお祈り申し上げます。

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