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280.トピック=大震災と教職調整額制度 [8.トピック]

 平成23年4月1日付けの内外教育に「公立学校教員の”時間外勤務”」と題した記事が掲載された。小見出しには、「東日本大震災は非常災害」とあるので、いわゆる”超勤4項目”の議論であろうと見当を付けて読んだ。
 公立学校教員のいわゆる”超勤4項目”について概説した後、次のように述べる。

 「今回のような震災は、まさに非常災害の典型であり、超過勤務を命じることは可能である。だが、教員の健康及び福祉を害しないように考慮しなければならず、教員自身が被災している場合、その「健康及び福祉」とういう観点から、法制度上、超過勤務を命じることに疑義が存在すると考えられる。もっとも、被災しながらも学校にとどまり続けている教員らは、法令によるというよりも、使命感に基づく行為としての側面が強いことは想像に難くなく、被災者を励まし続ける全ての方々に、敬意を表さずにはいられない。」
 そして、後半では教員の多忙化問題を取り上げ、京都地裁08年4月23判決を引用しつつ、「”サービス残業”的な時間外勤務の状態化についても問題が多い」ことを指摘する。
 最後に、「この状況を見る限り、時間外勤務手当・休日給を支給せず、勤務時間の内外を問わず、包括的に評価する教職調整額のシステムは、制度疲労に陥っている。地方公務員一般に準じた時間外勤務管理への移行が期待されるところである」との結論を述べるのである。

 久しぶりに「教職調整額」に関する主張を読んだような気がする。今はもう、「見直し議論は、どこへいったのか」という感じだが、この内外教育の主張には違和感が残る。執筆者は、どのような意図をもってこの記事を書かれたのだろうか。悪気はないのだと思うが、東日本大震災で被災しながらも、使命感に基づき被災者の救援業務に当たっている教員の姿を枕にして、教職調整額制度を告発する構図になっている点に、どうも違和感が残る。
 記事は、未曾有の大震災に伴う教員の業務従事実態に教職調整額制度が機能していないことを具体的に指摘する訳ではない。後半は、「”サービス残業”的な時間外勤務の状態化」問題を取り上げているから、教職調整額制度が超勤の歯止め機能を果たしていないことを指摘しているように読める。非常災害時においてやむを得ず超勤せざるを得ないときの話と、平時においても超勤が常態化している問題を並列にして論じるから頭の中がこんがらがる感じがするのではないか。気にしずぎかもしれないが、両者を関係づけるかのような論法はいかがかと思う。
 ところで、使命感に基づき自らの被災を顧みず、被災者の救援業務に携わっているのは教員以外の職種でも同じであろう。週休日の振替等をしたくてもとてもできるような状況にないのかもしれない。突発的な緊急事態の下で、職員自らの被災によって十分な体制が組めない中では、一定程度配慮するとしても、ある程度の時間外勤務の常態化は避け得ないのではないかと思うのである。これは、教員であるか教員以外の職種であるかを問わず、同じ状況を強いられるのではないか。
 それから、教職調整額制度が超勤の歯止め機能を十分に果たしていないことをもって「制度疲労」と指摘しているのだとすれば、本府省の国家公務員の異常な超勤実態をどう説明するのか。超過勤務手当制度が存在する下であっても、超勤には歯止めがかかってはいない。おそらく、欧州とは異なり青天井となっている超勤規制や、長期勤続を前提とした日本の雇用制度を背景とした労働慣行など、根っこはもっと深いところにあると感じている。

 今回の大災害によって明白となった問題は、超勤の歯止め問題なのではなくて、教員以外の職員に対しては時間外勤務手当が支給されるのに対して、教員に対しては教職調整額の支給でもって終わりとされかねない制度になっていることではないのかと思う。求められるのは、教職調整額の制度疲労の告発ではなく、教職調整額によって包括的に評価したとされる負担の範囲を超えて、さらには教員特殊業務手当によって追加的に評価した負担の範囲をも超えて、更に心身に著しい負担を及ぼすに至っていることを率直に認め、従来の枠に囚われることになく、大胆かつ弾力的な給与の特例措置を早急に講じることではないのか。教員に対して超勤を命じないのが基本の対応であるとしても、建前だけの運用では自発的勤務扱いとならざるを得ない恐れがあるのではないか。そうであれば、せめて、被災現場で倒れそうになりながらも、被災者の救援業務に身を削っている教員たちの努力に報いるために、例えば、教員特殊業務手当の適用範囲の拡大・弾力化や教育業務以外の業務に従事した場合の時間外勤務手当の限定支給など、緊急の給与特例措置が講じられるべきだと思うのだが…。

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