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286.へき地手当(その11) [35.へき地手当]

 地域主権改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案(いわゆる地域主権推進一括法案)が、衆議院で一部修正の上、平成23年4月28日に成立、同年5月2日に公布された。この法律は、平成21年10月7日に提出された地方分権改革推進委員会第3次勧告によって示された「義務付け・枠付けの見直し」の第一弾が盛り込まれているのだが、「地域主権」という言葉は野党の主張を受け入れて削除あるいは変更され、法律名は、「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律(第1次一括法)」となった。

 地方分権改革は、住民に身近な行政に関する企画・決定・実施を、できる限り地方自治体に委ねることを基本として、国と地方の役割分担を徹底して見直す取組であり、「自治立法権の拡大による『地方政府』の実現へ」との副題を付けた地方分権改革推進委員会第3次勧告は、「義務付け・枠付けの見直しと条例制定権の拡大」、「地方自治関係法制の見直し」、「国と地方の協議の場の法制化」を柱としている。
 「義務付け・枠付けの見直しと条例制定権の拡大」は、国が決めていた基準に代えて条例で基準を規定できるよう法律を改正し、地方の独自性の発揮ができるようにすることであるが、へき地教育振興法の一部改正は、そのひとつである。
へき地教育振興法の一部改正の内容は、へき地学校等の指定やへき地手当等の月額に関して、改正前の規定では「文部科学省令で定める基準に従い、条例で指定する(定める)」としていたが、改正後の規定では「文部科学省令で定める基準を参酌して、条例で指定する(定める)」とされ、平成24年4月1日に施行されることとなった。

 ところで、平成21年12月15日閣議決定の地方分権改革推進計画では、「参酌すべき基準」の意義について、「地方自治体が十分参酌した結果としてであれば、地域の実情に応じて、異なる内容を定めることが許容されるもの」と明記している。つまり、地域の実情に応じて、都道府県が独自の基準を設けることが可能なのである。そのため、都道府県が厳しい財政事情を背景に、へき地学校等の規定基準をより厳しく見直すのではないかとの危惧を表明している教職員組合もある。
 しかし、都道府県が独自の基準を設ける場合には、「国の基準を十分に参酌した上で、地方自治体の主体的な判断により、国の基準を補正(上書き)するものであることから、当然、地域の実情に応じて国の基準を補正(上書き)すべき理由が必要となるのであって、理由もなく行うことは許されない」と理解されている。(平成21年6月5日、第86回地方分権改革推進委員会議事録参照。)

 今後、第1次一括法の公布を受けて、文部科学省により、へき地教育振興法施行規則の改正が行われることとなる。その際には、理念的には、基準の大綱化が行われるべきこととなろう。しかし、前回までに考察したとおり、へき地学校等指定基準を20年ぶりに行い、新基準に基づく級地区分の見直しを平成22年4月に行ったばかりである。しかも、へき地手当制度におけるへき地学校等の格付け基準と特地勤務手当制度における特地官署の格付け基準との較差が更に広がった状況にあっては、文部科学省としても、大綱化に向けた指定基準の見直しを短期間に行うことはできないであろう。
 将来見直しが行われるとしても、特地官署の格付け基準と同じとすることは、影響の大きさからしてありえないと思われるが、これまで、教育の機会均等を保障する観点から行ってきた特地官署の格付け基準との差別化について、大綱化後の基準においてどう維持していくのか、難問が控えている。

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