290.23年俸給表改定(その4) [36.23年俸給表改定]
さて、今回は行政(一)以外の俸給表の改定について考察したい。
まず、人事院の報告を引用しておく。
(行政職俸給表(一)以外の俸給表)
行政職俸給表(一)以外の俸給表についても、行政職俸給表(一)との均衡を考慮して、俸給月額及び経過措置額の引下げ改定を行うものとする。ただし、(省略)
いつもながら、「行政職俸給表(一)との均衡を考慮」とあっさり書かれているだけであり、具体の改定内容を確認していくほかない。
行政(一)との均衡ということだから、「50歳台:最大△0.5%、40歳台後半層:△0.4%、40歳台前半層:0~△0.3%」を基本として改定している。引下げが開始される制度年齢も同じ考え方である。しかし、詳細にみていくと、ちょっとちがっている部分もある。
まず、行政(一)と俸給月額が全く同じ俸給月額となっている職務の級のある福祉や専門などの俸給表では、俸給月額が行政(一)と同じであれば、当然ながら行政(一)と同一の改定内容となっている。行政(一)と俸給月額が異なる職務の級のうち、行政(一)の職務の級と同格で水準差が小さいものは、行政(一)の相当する職務の級における改定額を基本としつつ、一部修正に止めている。
海事のように水準差のある俸給表では、同格となる行政(一)の職務の級を基本としつつも、俸給月額の水準の高さを考慮したより大きな改定額となっている。
次に、「40歳台前半層が在職する号俸を目途として収れんさせる」具体的な改定額・改定率を確認していくと、やはり微妙に違っている。行政(一)では、収れんさせる部分の改定額は100円単位で綺麗に並んではいない箇所があった。改定額△0.3%は、更に△100円積むと△0.4%となるギリギリの改定額から始めて、43歳で△400円又は△300円となるように、100円単位を基本に綺麗に並べればよいように思われる。
一方、研究や教育(一)のように職務の級の数が少ない俸給表では、改定額が綺麗に並んでいる。このようになめらかに改定額が推移する姿を見ると、行政(一)の改定額は何か別の要素を考慮して一部修正しているのではないか、と思えてくるのである。
また、行政(一)では、下位の職務の級においてある号俸の改定額を本来額に△100円すると、上位の職務の級における同年次の号俸はその影響を受け、逆転しないようにしているものと思われる。そのため、「いびつさ」は各職務の級に伝播した形となったのではないか。この辺りはやはりこのノートの限界であり、人事院に聞いてみないとなんとも分からない。
行政(二)の改定額は、行政(一)の△100円を基本としているのではないかと思う(△200円のところもある。)。行政(二)1級の最高号俸121号俸は大学卒基準とすると制度年齢43歳であるが、改定していない。職務の級ごとに見た改定率の推移を確認すると、△0.2%と△0.3%の開始年齢が、6月遅れている部分がある。これも、在職実態の違いによる影響に配慮したのではないかと思われる。
<行政(二)改定の制度年齢>
職務の級 △0.1% △0.2% △0.3% △0.4% △0.5%
2~3級 43歳~ 43歳9月~ 44歳9月~ 47歳~ 52歳~
4~5級 43歳~ 43歳9月~ 44歳6月~ 47歳~ 52歳~
いずれにしても、本年の改定は昨年の改定とは手法が全く異なったものとなっており、細部の「いびつさ」のために、教(二)(三)の具体の改定額をどう置いていくのか、確信が持てない部分がある。これ以上はもうどうしようもない。
教(二)(三)の具体の改定に当たっての論点を挙げておく。
(1) ブリッジした俸給表であることから、改定対象となる号俸は、同格となる行(一)の職務の級よりも、俸給月額の水準が高くなっていることを踏まえた具体の改定額の配分の在り方。考え方の想定を示しておく。
<教(二)> <教(三)>
1級=行(一)2級→3級マイナス 1級=行(一)2級
2級=行(一)4級→6級 2級=行(一)4級→5級プラス
特2級=行(一)5級→6級プラス 特2級==行(一)5級→6級
3級=行(一)7級 3級=行(一)7級マイナス
4級=行(一)8級 4級=行(一)7級
(2) 制度年齢43歳から45歳の改定額の配分
研究や教育(一)のように「なめらか」に改定するのか、行政(一)の「いびつさ」を引きずるのか…。
(3) 教(三)の特2級最高号俸と3級最高号俸との逆転問題
今回テーマの(その1)で指摘したとおりである。行政(一)の改定に準ずるとすれば、特2級最高号俸の引下げ額よりも3級最高号俸の引下げ額の方が大きくなることから、逆転状況が更に拡大されることになる。これは、職務給の原則を踏まえると大きな問題ではないかと思っている。
3級加算額の在り方とも関連する部分があるが、3級加算額を増額することは、俸給表改定の方向性と相容れないと思われる。全人連は、モデル俸給表をどのように示すのであろうか…。
(4) 再任用職員の俸給月額の改定
おそらく、2級及び特2級の改定額について、行政(一)の何級に準拠すべきかが問題になるのではないか。再任用以外の職員に適用される俸給月額の改定の在り方とは異なっていることから、再任用は再任用の中で均衡を図る必要がある。したがった、おそらくは、同格となる行(一)の職務の級における改定額が基本となろう。
(5) 4級再任用の俸給月額
4級再任用職員に適用される俸給月額は、これまでは4級初号と同額となっていた。行政(一)10級では、10級再任用の俸給月額と10級初号とは、改定後においても同額となっている。行政(一)10級と同格の他の俸給表でも同じである。これは、△0.5%の改定がスタートする制度年齢が49歳となっているのに対して、初号の位置が制度年齢51歳となっているからである。ところが、教(二)(三)4級の初号の位置は、△0.3%改定に当たる制度年齢44歳にあることから、従来の関係が崩れることになると思われる。
今後、本年の人事院勧告を踏まえた教(二)(三)のモデル給料表が示されることとなろうが、これらの論点について、どのような改定モデルが示されるのか、注目したい。
まず、人事院の報告を引用しておく。
(行政職俸給表(一)以外の俸給表)
行政職俸給表(一)以外の俸給表についても、行政職俸給表(一)との均衡を考慮して、俸給月額及び経過措置額の引下げ改定を行うものとする。ただし、(省略)
いつもながら、「行政職俸給表(一)との均衡を考慮」とあっさり書かれているだけであり、具体の改定内容を確認していくほかない。
行政(一)との均衡ということだから、「50歳台:最大△0.5%、40歳台後半層:△0.4%、40歳台前半層:0~△0.3%」を基本として改定している。引下げが開始される制度年齢も同じ考え方である。しかし、詳細にみていくと、ちょっとちがっている部分もある。
まず、行政(一)と俸給月額が全く同じ俸給月額となっている職務の級のある福祉や専門などの俸給表では、俸給月額が行政(一)と同じであれば、当然ながら行政(一)と同一の改定内容となっている。行政(一)と俸給月額が異なる職務の級のうち、行政(一)の職務の級と同格で水準差が小さいものは、行政(一)の相当する職務の級における改定額を基本としつつ、一部修正に止めている。
海事のように水準差のある俸給表では、同格となる行政(一)の職務の級を基本としつつも、俸給月額の水準の高さを考慮したより大きな改定額となっている。
次に、「40歳台前半層が在職する号俸を目途として収れんさせる」具体的な改定額・改定率を確認していくと、やはり微妙に違っている。行政(一)では、収れんさせる部分の改定額は100円単位で綺麗に並んではいない箇所があった。改定額△0.3%は、更に△100円積むと△0.4%となるギリギリの改定額から始めて、43歳で△400円又は△300円となるように、100円単位を基本に綺麗に並べればよいように思われる。
一方、研究や教育(一)のように職務の級の数が少ない俸給表では、改定額が綺麗に並んでいる。このようになめらかに改定額が推移する姿を見ると、行政(一)の改定額は何か別の要素を考慮して一部修正しているのではないか、と思えてくるのである。
また、行政(一)では、下位の職務の級においてある号俸の改定額を本来額に△100円すると、上位の職務の級における同年次の号俸はその影響を受け、逆転しないようにしているものと思われる。そのため、「いびつさ」は各職務の級に伝播した形となったのではないか。この辺りはやはりこのノートの限界であり、人事院に聞いてみないとなんとも分からない。
行政(二)の改定額は、行政(一)の△100円を基本としているのではないかと思う(△200円のところもある。)。行政(二)1級の最高号俸121号俸は大学卒基準とすると制度年齢43歳であるが、改定していない。職務の級ごとに見た改定率の推移を確認すると、△0.2%と△0.3%の開始年齢が、6月遅れている部分がある。これも、在職実態の違いによる影響に配慮したのではないかと思われる。
<行政(二)改定の制度年齢>
職務の級 △0.1% △0.2% △0.3% △0.4% △0.5%
2~3級 43歳~ 43歳9月~ 44歳9月~ 47歳~ 52歳~
4~5級 43歳~ 43歳9月~ 44歳6月~ 47歳~ 52歳~
いずれにしても、本年の改定は昨年の改定とは手法が全く異なったものとなっており、細部の「いびつさ」のために、教(二)(三)の具体の改定額をどう置いていくのか、確信が持てない部分がある。これ以上はもうどうしようもない。
教(二)(三)の具体の改定に当たっての論点を挙げておく。
(1) ブリッジした俸給表であることから、改定対象となる号俸は、同格となる行(一)の職務の級よりも、俸給月額の水準が高くなっていることを踏まえた具体の改定額の配分の在り方。考え方の想定を示しておく。
<教(二)> <教(三)>
1級=行(一)2級→3級マイナス 1級=行(一)2級
2級=行(一)4級→6級 2級=行(一)4級→5級プラス
特2級=行(一)5級→6級プラス 特2級==行(一)5級→6級
3級=行(一)7級 3級=行(一)7級マイナス
4級=行(一)8級 4級=行(一)7級
(2) 制度年齢43歳から45歳の改定額の配分
研究や教育(一)のように「なめらか」に改定するのか、行政(一)の「いびつさ」を引きずるのか…。
(3) 教(三)の特2級最高号俸と3級最高号俸との逆転問題
今回テーマの(その1)で指摘したとおりである。行政(一)の改定に準ずるとすれば、特2級最高号俸の引下げ額よりも3級最高号俸の引下げ額の方が大きくなることから、逆転状況が更に拡大されることになる。これは、職務給の原則を踏まえると大きな問題ではないかと思っている。
3級加算額の在り方とも関連する部分があるが、3級加算額を増額することは、俸給表改定の方向性と相容れないと思われる。全人連は、モデル俸給表をどのように示すのであろうか…。
(4) 再任用職員の俸給月額の改定
おそらく、2級及び特2級の改定額について、行政(一)の何級に準拠すべきかが問題になるのではないか。再任用以外の職員に適用される俸給月額の改定の在り方とは異なっていることから、再任用は再任用の中で均衡を図る必要がある。したがった、おそらくは、同格となる行(一)の職務の級における改定額が基本となろう。
(5) 4級再任用の俸給月額
4級再任用職員に適用される俸給月額は、これまでは4級初号と同額となっていた。行政(一)10級では、10級再任用の俸給月額と10級初号とは、改定後においても同額となっている。行政(一)10級と同格の他の俸給表でも同じである。これは、△0.5%の改定がスタートする制度年齢が49歳となっているのに対して、初号の位置が制度年齢51歳となっているからである。ところが、教(二)(三)4級の初号の位置は、△0.3%改定に当たる制度年齢44歳にあることから、従来の関係が崩れることになると思われる。
今後、本年の人事院勧告を踏まえた教(二)(三)のモデル給料表が示されることとなろうが、これらの論点について、どのような改定モデルが示されるのか、注目したい。
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