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294.古書散歩(その9)=『職階制と人事行政』 [24.古書散歩]

 昭和27年6月に教育資料社から発行された本書の著者は、人事院給与局職階部格付課長の弥富賢之である。後に弥富氏は本田技研工業に迎えられ、1960年に賃金管理研究所を設立し、いわゆる弥富式のシンプルな賃金制度を民間企業に広めたことについては、以前にもこのノートで紹介した。(258.読書=『正しい賃金の決め方』)

 弥富氏は、「はしがき」で次のように述べる。

 「職階制のない所に新しい人事行政はあり得ない」とは有名な行政学者ホワイト氏の言葉であるが、わが国においても国家公務員の職階制はすでに完成の段階にあり、地方公務員の職階制も着々親展しつつあって、職階制に対する関心は、官界といわず民間といわずいよいよ深まりつつあることは誠に喜ばしいことである。
 職階制が如何に運営されるかは、わが国の民主主義発展の成否を決定するものにほかならない。そしていまや、国家公務員の職階制は、制定の段階から実施の段階に入ってきたわけであるが、本書は職階制の立場から人事管理の問題をとり上げてとりまとめたものである。

 職階制を批判する側が主張する職階制のイメージは、労働者を分断・支配する手段であるかのごとくであるが、当時の人事院の理解は、「職階制が如何に運営されるかは、わが国の民主主義発展の成否を決定するものにほかならない」との言葉に象徴されるように、日本の公務員制度民主化に不可欠の制度との理解であったのである。

 本書の守備範囲は人事管理全般に及ぶのだが、この学習ノートにとって特に注目すべきは、給与思想の転換、給与制度の簡素化と合理化、職階制の給与制度への適用、俸給表の基本構造などについて解説する部分である。これを読めば、当時、人事院が国家公務員法に規定する職務給の原則を実現すべく、どのような思想をもって俸給制度を構想したのかをうかがい知ることができる。最近の人事院は自らの商売道具をオープンにすることがなくなったことを思うと、極めて貴重な内容が示されている。

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