SSブログ

295.トピックス=中教審答申『教員養成の修士課程化』 [8.トピック]

 平成24年8月28日、中央教育審議会は「教職生活の全体を通じた教員の資質能力の総合的な向上方策について」と題した答申を取りまとめ、文部科学大臣に提出した。
 この答申は、教員養成から免許制度にわたる内容であるが、この学習ノートにとって注目したいのは、教員の高度専門職業人としての位置付けを確立するため、教員養成を修士レベル化し、教員免許制度を改革する方向性を打ち出した点である。

<平成24年答申の抜粋>
 「一般免許状(仮称)」は学部4年に加え、1年から2年程度の修士レベルの課程での学修を標準とし、「基礎免許状(仮称)」は、学士課程修了レベルとする。

 現行の教員免許制度では、高等学校教諭は専修免許状及び一種免許状、その他の校種は専修免許状、一種免許状及び二種免許状に区分され、それぞれの基礎資格は、専修免許状は修士の学位、一種免許状は学士の学位、二種免許状は短期大学士の学位を有することとされている。
 今回の中教審答申と現行制度を比較すると、教員養成レベルが学士から修士に引き上げられ、短期大学士レベルがなくなった点、高等学校と小中学校の区別がなくなった点に違いがある。
 教員の給与制度は、教員の資格体系を形成している免許制度との関連を尊重してきた経緯があることについては、別の箇所でも触れたとおりであるが、今回の中教審答申で打ち出された教員養成の修士レベル化及び教員免許制度の改革が実施されるのが何時になるのか分からないが、実施されるとしたならば、現行の教員給与制度にどのような影響を与えるのであろうか。

 まず、旧教(二)及び旧教(三)の初任給基準を確認しておく。

<旧教(二)の初任給基準>
 博士課程修了 旧2-9(6月)→現2-31
 修士課程修了 旧2-5(0月)→現2-13
 大学卒      旧2-2(0月)→現2-1
 短大卒      旧1-4(6月)→現1-11

<旧教(三)の初任給基準>
 博士課程修了 旧2-12(6月)→現2-43
 修士課程修了 旧2-8(0月)→現2-25
 大学卒      旧2-5(0月)→現2-13
 短大卒      旧2-2(6月)→現2-3

 修士課程以上に着目すると、博士課程及び修士課程の修学期間については、1年につき1.5号俸に評価されていることがわかる。これは、旧教育職俸給表(一)~(四)等においては、「職務遂行に当たり高度の専門的知識が必要とされ、しかもその知識が大学院の修士課程等を修了することにより初めて修得できるものがあること」からであると説明されている(人事院給与法令研究会人事院給与局長鹿児島重治編集『改正冶与制度詳説』(昭和61年、学陽書房)参照。)。
 したがって、初任給基準については、優秀な人材の確保の観点から、一定の措置が既に講じられている。

 ところで、昭和60年の11級制への移行に当たっては、人事院は「定年制度の施行による在職期間の明確化等に伴い、標準的な職員の採用から退職までの公務員生活を想定した制度設計に基づき必要号俸数を設定」したのであった。いいかえると、標準的に昇給した場合に制度年齢で何歳まで昇給させるのかという観点から、必要号俸数を確保したとも言える訳で、これまでこの学習ノートでも、行(一)及び旧教(二)(三)の俸給制度表を作成し、様々な観点から考察してきた。
 その後、平成18年の給与構造改革により一律同年齢までという設定の姿が崩れた面はあるのだが、それでもなお、すべての俸給表に均衡的に現れている姿はある。そういう点から、今回の中教審答申による教員養成の修士レベル化及び教員免許制度の改革を捉えた場合には、修士課程等の修学期間の1.5評価が影響し、必要号俸数の不足を来さないかということが気になるところだ。
 すなわち、俸給制度表上の修士課程修了の初任給基準の位置が、大学卒のそれよりも1年有利になっていることから、現行で4号俸(1年分)不足しないだろうかということである。
 とはいえ、在職者は現行教員免許制度の資格体系を前提に初任給が決定された以上、それ以上の措置は必要ないと考えられ、直ちに問題が発生することはないだろう。実際に中教審答申の内容が実施に移され、新制度の下で養成され採用された教員が、50歳台後半を迎える頃に初めて影響が出るのだろうから、気の長い話ではある。ただ、高齢層に近い年齢の中途採用者が増えている教員採用の現実を踏まえるならば、速やかなる措置は必要になるのかもしれない。ただし、現行の教(一)及び教(二)の俸給制度表を作成して確認すると、行(一)と比較して最高号俸の位置が1年低くなっているように思われるが…。

nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:仕事

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。