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296. 古書散歩(その10)=『職階制と人事行政』(2) [24.古書散歩]

 弥富賢之著『職階制と人事行政』については、この学習ノートにとって「極めて貴重な内容」と紹介しておきながら、具体的な内容まで紹介していなかった。全部をここに掲載することはむろん不可能であるが、その一端ぐらいは紹介しておこう。

 従来人事院で試みられてきた方法は、上記独身青年男子一人当りの標準生計費と、民間給与調査から得られる一四級六号(局長級)相当額との二点を、等比級数曲線で結んで、俸給曲線をうる方法であったが、職階制に基づく職務分析が次第に進に従って、職級(等級)ごとに民間給与額を調査して、これを補正する方向に進みつつある。
 今回の人事院の給与ベース勧告によれば、二級三号、四、二○○円、一四級六号、三八、○○○円(何れも現行の職務の級による)となっているが、これらが果たして給与準則で、いかにとり入れられる調整されるかは不明であるので、ここでは民間給与調査を主体とし、若干を「人事院が決定した適当な事情」で補正することによって、次のような俸給表決定の基本的要素を得たものと仮定して論を進めることとする。
〔想定〕
 (1)等級数 八等級
 (2)Ⅷ等級1号  四、○○○円 Ⅰ等級1号 三○、○○○円 と仮定する。
 (3)各等級間の標準在級年数 四・五~六年
 各等級間の級間隔は、職務の複雑と責任の程度の差、現実には等級の平均的な資格要件の差として認識され、通常これは昇任のために必要とされる平均的な在級年数とされる。
 以上の想定によって指数曲線を描き、各等級別の初号を決定することができる。(第四図参照)

 この考え方については、186.古書散歩(その1)で紹介した滝本忠男著『公務員給与創設』でも説明されている。

 俸給表の作成には種々の方法がある。これは俸給表の作成とも密接な関係のある問題である。現行の或いは最近勧告した俸給表についてその作成方法を説明すれば、先ずマーケット・バスケットより成年単身男子の標準生計費を定め之に所要の公課を附加して勤務地手当非支給地に於ける俸給額を定める。これを何号俸と定めるかは別の研究による。即ち、統計的に成年単身男子が何号俸に相当するかを定める。この際、民間に於ける同程度の職務の給与と均衡を図ることを併せて考えるべきである。
 別に最高号俸に相当する俸給額を民間給与調査より求める。ところがかかる上位の級の給与の巾は相当に広く、従つてその幅は相当に広く、従つてその幅の中のどの額を用いるかは相当の問題である。この問題は、また政府の給与政策と密接に関係する処である。
 かくして得た上下二点を等比級数により結ぶ。

 この考え方は現在も受け継がれているのだろうか…。
 便宜、11級制に移行した昭和60年改定俸給表と給与構造改革後の平成18年改定俸給表により確かめてみる。
 各級の初号の金額を級別に1級から11級又は10級まで順番に並べてみると、少々いびつだが指数曲線に近い関係になっていると見える。ちなみに、この金額を級別資格基準である経験年数により置き換えてみる。すると、指数曲線にほぼぴったり一致する曲線を描いていることがわかるのである。

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