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359.総合的見直しと人件費削減(その3) [44.総合的見直しと人件費削減]

 前回、給与制度の総合的見直しの実施に伴う国家公務員の人件費削減効果について考察してみた。今回は、地方公務員の場合を考えてみたい。

給与制度の総合的見直しの第一の眼目は「地域間の給与配分の見直し」であるが、これに対して、例えば、熊本県人事委員会は10月9日の報告で次のような見解を明らかにしている。

ア 地域間の給与配分の見直し(給料表水準の見直し)
 人事院は、「民間賃金の低い地域における官民給与の実情をより適切に反映するための見直し」を課題の一つとして、民間賃金水準の低い12県における官民の較差と全国の較差との率の差を踏まえ、国家公務員の地域間の給与配分を適正化するために、全国共通に適用する俸給表の水準を平均2%引き下げることを勧告しました。
 本県においては、上記6の(2)のアで述べたとおり地域の民間給与との均衡を図ることを念頭に置いて職員給与の改定を行うこととしており、本年の給与の改定の実施後には、職員給与が地域の民間給与と均衡する状況にあります。
 また、本県は、民間賃金水準の低い12県に含まれず、今回、地域間の給与配分の見直しの一環として行われる地域手当の支給地域の見直しにおいても、本県内に支給地域が設けられていません。
 このような状況のもとで、人事院勧告に準じて本県の給料表水準を引き下げれば、現給保障の経過措置を講じたとしても、来年度以降、地域の民間給与との均衡が図れなくなることが予見されます。
 地域の民間給与を公務により反映するという今回の見直しの趣旨に鑑みれば、地域間の給与配分の見直しにおいては、単に国に準じて見直しを行うのではなく、地域の民間給与との均衡を図ることに重きを置いて対処する必要があると考えます。
http://www.pref.kumamoto.jp/uploaded/attachment/95584.pdf

 つまり、熊本県人事委員会は、「国に準じて給料表を引き下げた場合、民間均衡を図るためには地域手当を引き上げる必要がある。しかし、地域手当を引き上げようにも県内に支給地域が設けられていないため、民間均衡が図れない。」と言っているのである。
 もう一つの例として、京都府人事委員会の報告(11月5日)を取り上げてみよう。
 
(ア) 地域間の給与配分の見直し(給料表水準及び地域手当の見直し)
 人事院は、この総合的見直しは俸給表水準の引下げ分を原資として地域手当の支給割合の引上げ等により給与配分の見直しを行うものであるとしており、国においては、見直しの実施後も全体の給与水準は維持されるものと考えられる。
 一方、本府が国に準じて見直しを実施した場合には、地域手当や単身赴任手当は引き上げられることとなるが、その引上げ幅は給料表水準の引下げ幅には及ばないため、職員の給与水準は本年の公民較差に基づく改定後の給与水準よりも低下し、民間給与水準との均衡が維持できないこととなる。
 なお、国と本府でこのような相違が生じる大きな要因は、国と地方では手当制度や手当の受給状況が異なるために、給料表の引下げ分の原資を国と同じように手当に配分できないことにある。
 具体的には、国が今回の見直しで俸給表水準の引下げに合わせて見直しを行う手当の中には、国にしかない手当が含まれていることや、地域手当、単身赴任手当等の受給者の状況が異なることが挙げられる。
 また、これに加えて、国の地域手当に係る指定基準は全国に勤務する国家公務員を対象としたものであるため、地方公共団体の実情までは考慮されておらず、地域における民間賃金水準をきめ細かく反映できるようなものになっていないことや、一定の規模以下の市町村の状況が十分に考慮されていないことも影響しているものと考えられる。
 このような制度上の問題により民間との均衡が維持できなくなることは、これまでの本府における給与改定の基本的考え方には合致しないものであり、本委員会としては、本府が給与制度の総合的見直しを実施する場合においても、給与水準については府内の民間給与との均衡を重視していくことが適当であると考える。
http://www.pref.kyoto.jp/jinjii/documents/02houkoku.pdf

 京都府人事委員会は、民間均衡が図れなくなる大きな要因として、地域手当の支給状況の相違に止まらず、国と地方では手当制度や手当の受給状況が異なることを指摘している。
 国と地方との手当受給状況の違いは、総務省が公表している資料によれは、次のとおりとなっている。

<平均給料月額+諸手当月額=平均給与月額>
  平成25年度 地方 41,980円(11.3%) 328,842円(88.7%) 370,822円(100%)
        国  69,037円(18.3%) 307,220円(81.7%) 376,257円(100%)
  ※25年度は給与削減があったため、23年度も確認しておく。
  平成23年度 地方 43,246円(11.5%) 334,379円(88.5%) 377,625円(100%)
        国  70,518円(17.7%) 327,205円(82.3%) 397,723円(100%)
「平成25年度地方公務員給与実態調査結等果の概要」から

 給与全体に占める手当の割合を見ると、国平均は約18%だが、地方平均では約11.5%であり、6.5ポイントも少ない状況になっている。

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