SSブログ

363.総合的見直しと人件費削減(その7) [44.総合的見直しと人件費削減]

 今回は、いまさらになるが、改めて「均衡の原則」について、確認しておきたい。
 まず、国家公務員法における均衡の原則は、国家公務員法第64条第2項に規定されている。

(俸給表)
第六十四条
2 俸給表は、生計費、民間における賃金その他人事院の決定する適当な事情を考慮して定められ、かつ、等級ごとに明確な俸給額の幅を定めていなければならない。

 この均衡の原則について、例えば、『公務員給与法精義』(尾崎朝夷ほか共著、学陽書房)から抜粋してみよう。

 次に、公務員給与のあり方の基本についていえば、前述のように公務員の給与が税金によって負担されるのが通例である以上、国民ないし住民の納得の得られるような社会的妥当性をもった給与であることが、当然に要求される。しかし、これは一面では職員の利益、不利益にも連なることであり、公務員側の納得もまた得られるものであることが必要とされるであろう。そしてこのことは具体的にはその決定の基礎となる前述の人事院または人事委員会の報告、勧告のあり方ともそのまま関係することとなるが、国家公務員法は公務員給与を決定する要素として、生計費、民間賃金および人事院の決定する適当な事情の三つを掲げており(同法第六十四条第二項)、実際にもこれを基本としての運用が図られている。なかでもこのうちの民間賃金との関係である官民給与の均衡という考え方は、現在、公務員の給与を決定するうえでの基本理念であり、地方公務員法の場合はもとより、例外的に団体交渉による給与の決定が認められている現業職員の場合にも、重要な要素の一つとされている。(6頁)

 人事院の給与勧告の歴史は、すでに相当に長い。したがって、その間の社会情勢の変化なり技術面での進歩等と関係して、細部の面ではいろいろの経過も経ているが、常に基礎となり根幹となっているのは、一貫して官民給与の均衡を図るという考え方である。国家公務員法が公務員給与決定の要素として掲げるものとして、生計費、民間賃金および人事院の定める適当な事情の三つがあることは、別に第一章でも述べたが、このうちの民間賃金を基礎として官民給与の均衡を図るということは、労働市場の面で公務に必要な人材を確保するうえでの必要条件であり、他方、世間一般の賃金相場に従うという意味では、もっとも客観的、納得的であり、これに勝る指標はない。さらにまた、それは社会の発展ないしは国の経済の成長等による成果を、間接的に公務員にも均てんさせるということでもあって、この面からも十分の意義を有しているといえるであろう。(25頁)

 国家公務員法が定める3つの給与決定要素のうち、民間賃金との関係である官民給与の均衡という考え方が現在の公務員給与を決定するうえでの基本理念となっている。そして、人事院の給与勧告は、公務員給与の公正の確保と労働基本権制約の代償的措置として情勢適応の原則に従って行われるものであるが、その基礎となり根幹となっている考え方が、「官民給与の均衡を図るという考え方」なのだと説明している。
 次に、地方公務員法における均衡の原則を確認してみる。

(給与、勤務時間その他の勤務条件の根本基準)
第二十四条
3 職員の給与は、生計費並びに国及び他の地方公共団体の職員並びに民間事業の従事者の給与その他の事情を考慮して定められなければならない。

 これについて、ちなみに『地方公務員給与制度詳解』(地方公務員給与制度研究会編著、学陽書房)から抜粋する。

4 均衡の原則
 地方公務員の給与以外の勤務条件については、地方公務員法第二四条第五項の規定により、「国及び他の地方公共団体の職員との間に権衡を失しないように適当な考慮が払われなければならない。」こととされているが、勤務条件のうち給与については、同条第三項において、「生計費並びに国及び他の地方公共団体の職員並びに民間事業の従事者の給与その他の事情を考慮して定められなければならない。」ものとされている。これがいわゆる「均衡の原則」と呼ばれているものである。
 (略)
 この均衡の原則に基づき、地方公務員の給与は「国に準ずる」ことが基本とされている。これは、国家公務員の給与についてはその決定に当たり、「民間事業の従事者の給与」や「生計費」が十分に考慮されているので、国家公務員の給与に準じて定給与決定をすることが法に定める均衡の原則の趣旨に最も合致すると考えられるためである。また、国家公務員も地方公務員もいずれも公務に従事するものであって、その職務が類似しており、さらに給与の財源が租税で賄われていることなどから考えれば、法に定める原則をまつまでもなく、同様の考え方で給与決定をすることがむしろ当然であろう。地方公務員法第二四条第三項には、「他の地方公共団体の職員」の給与も掲げられているが、すべての地方公共団体において国に準じた適正な給与決定がなされていれば、他の地方公共団体の職員の給与との均衡はおのずと維持することができよう。(27・28頁)

 上記は、1988年11月発行の<全訂新版>からの抜粋であり、「地方公務員の給与のあり方に関する研究会」が言うところの「従来の画一的な国公準拠の考え方」ということになる。
 次に、同研究会の報告書からその辺りの記述を追いながら、次回、考えてみたい。

nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:仕事

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。