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364.総合的見直しと人件費削減(その8) [44.総合的見直しと人件費削減]

 前回、「均衡の原則」の意味内容について、国家公務員法における規定を確認することから考察を始めた。
今回は、「地方公務員の給与のあり方に関する研究会報告書」から、少し長くなるのだが、関係部分の記述を抜粋しながら、考えていきたい。
 まず、地方公務員における給与決定原則の現状についての記述である。

 次に、職員の給与について「生計費並びに国及び他の地方公共団体の職員並びに民間事業の従事者の給与その他の事情を考慮して定められなければならない」とされている(地方公務員法第24条第3項)。これは「均衡の原則」と呼ばれている。均衡の原則は、具体の給与改定や給与水準の決定にとって重要なものとされているが、この規定の実際の解釈・運用としては、国家公務員の給与に準ずること(=いわゆる「国公準拠」)により実現されると解されている(昭和35年4月1日各都道府県知事あて自治省行政局長通知ほか)。その理由は、毎年官民給与比較及び生計費を考慮して行われる人事院勧告に基づいて決定される国家公務員給与には、生計費及び民間賃金についての考慮が織り込まれていることから、これと同種の職務に従事する地方公務員の給与についてこれに準ずることとすれば、国及び他の地方公共団体とも均衡がとれることとなり、地方公務員法第24条第3項の規定の趣旨に最も適合することになると考えられていることによる(資料4)。(3頁)

 資料4を見ると、もう少し詳しく解説されている。地方公務員法第24条3項を掲載した表の下に矢印を書いて、次のように記述する。

○均衡の原則の実際の運用としては、「国家公務員の給与に準ずる」ことによって実現されると解されている。(=いわゆる「国公準拠」)
  ・昭和35年4月1日各都道府県知事あて自治省行政局長通知ほか
(根拠)
○国家公務員の給与は人事院勧告によって決定されているが、人事院はその整備された体制によって給与制度の研究を行い、毎年官民給与比較及び生計費を考慮して、報告または勧告を行ない、これに基づいて給与が決定されている。
○国家公務員の給与には、生計費及び民間賃金についての考慮が織り込まれているので、これと同種の職務に従事する地方公務員の給与について、これに準じることとすれば、国及び他の地方公共団体とも均衡がとれることとなり、地方公務員法第24条の規定の趣旨に最も適合することとなる。
  ・なお、この場合、「国に準じる」とは、当該団体の組織、規模、地域の社会的条件等に応じ、合理的な範囲内において国の制度を修正し、その団体に適したものとして適用することとされている。
(内容)
○「給与制度」の面と「給与水準」の面の2点から国家公務員と比較
(1)給与制度
  ・給料表の構造、初任給、昇格・昇給の決定方法、各種手当の種類と内容等
(2)給与水準
  ・ラスパイレス方式などの統計的な水準比較

 この資料4の記述、特に「(内容)」の記述は、これまで総務省が地方に対して指導してきた内容をより具体的に示したものであろう。実際、毎年発出される地方公務員の給与改定に関する取扱いについての総務省事務次官通知等を見れば、実に事細かに書かれている。また、平成4年以降は地方公務員給与制度研究会から『地方公務員給与のチェックポイント』が給与実務担当者向けに発行され、給料のラスパイレス指数から始まって、給料表の構造や級別資格基準、初任給基準、更には昇給・昇格の運用、そして、諸手当については一つ一つ国の基準に準じているのかどうかをチェックするようになっており、地方公務員給与の適正化に活用されてきたのであった。

 そして、「検討すべき課題」のうち、「給与決定の考え方」については、「職務給の原則」に関して言及した後、次のように記述する。

 地方公務員の給与は「生計費並びに国及び他の地方公共団体の職員並びに民間事業の従事者の給与その他の事情を考慮して定められなければならない」(地方公務員法第24条第3項)とされている(均衡の原則)。これについては、国家公務員の給与に準ずることによって実現されると解されてきた(いわゆる「国公準拠」の考え方)。
 このような考え方が確立・定着してきた背景には、人事院等の調査体制や専門知識により決定した国家公務員給与を基礎にしていることに一定の合理性があり、対内的・対外的な説得力があったこと、したがって、給与の適正化を推進する上で有効であったこと、地方公共団体にとっても、独自の給与制度を企画・管理することよりも負担が少なく、また住民等への説明にも効果的であったことなどが考えられる。
 しかしながら、改めて地方公務員給与を見た場合、給与水準について、ラスパイレス指数の全国平均が国を下回るとともに、9割以上の団体が国以下となる一方で、地方公共団体によっては、国公準拠の考え方が、地域民間給与と比較して地方公務員給与が画一的に高止まる傾向の背景となっているとの指摘がある。また地方分権の流れの中で、給与決定についても、より地方公共団体の自主性・主体性を拡大したものへ変革していく必要性も指摘されている。さらに、国家公務員の給与自体が、地域民間給与の反映などの改革により大きく変容してきている。以上のことから、これまでの給与決定の考え方を再検討する必要がある。
 ただ、その結果、仮にも不適正な給与制度・運用等を招来することになれば、当該地方公共団体の公務能率の阻害や給与費の増大につながるのみならず、地方公共団体全体に対する不信を招きかねない。したがって、それぞれの地方公共団体が自主的・主体的に給与決定を行うことを前提としつつも、情勢適応の原則や職務給の原則に沿った適正な給与制度や運用等が確保される方策についても十分に検討する必要がある。

 地方公務員給与を取り巻く環境の変化を踏まえて、従来の画一的な国公準拠の考え方を再検討すべき考えを表明しているのだが、一方、根深い地方不信に基づく釘刺しも忘れていない。
その上で、「改革の方向」を次のように述べている。

 (略)、均衡の原則については、その意味内容について、吟味する必要がある。特に、制度及び水準の両面について国家公務員の給与に準じることで、あるべき地方公務員の給与が実現されるという従来の「国公準拠」の考え方については、再考すべき時期に来ている。
 そこで、地方公務員法が規定する5つの考慮事項について分析すると次のとおり整理できる。
ア 生計費
 地方公共団体の職員も労働者である以上、職員及びその扶養家族の生活維持がなされるべきであり、これを考慮する必要がある。
イ 国の職員の給与
 国家公務員は地方公務員と同様に憲法第15条第2項に言う「全体の奉仕者」として法令等に基づき公務に従事する者であり、かつその給与は国民、住民の負担を財源にしている点で両者は近似していることから、これを考慮する必要がある。
ウ 他の地方公共団体の職員の給与
 職務の近似性、類似性、一般的な地方公務員の給与の相場観という観点から、これを考慮する必要がある。
エ 民間事業の従事者の給与
 地方公務員の採用も労働市場の中で行われており、適材を確保するために民間に匹敵する給与を支給する必要があるという観点と、給与の財源を負担する国民、住民の納得を得られる水準にするという2つの観点から、これを考慮する必要がある(注)。
(注)国家公務員の給与においても、労働基本権が制約されていることを踏まえ、①民間企業と異なり、市場原理による給与水準の決定が困難であること、②公務員も勤労者として社会一般の情勢に適応した適正な給与の確保が必要であること、③民間給与は雇用情勢や生計費・物価などを反映して決定されるものであることから、労使交渉に代わる方策として、民間賃金に準拠してこれを決定することは、労使双方及び納税者である国民の理解を広く得られる方法となっているとされている。また、能率的な公務運営の確保という観点から見ても、民間と採用面において競争関係に立つ有為な人材を公務に確保することが、国民によりよい行政サービスを提供する前提となるものであり、民間賃金に準拠した処遇は、公務の能率性・効率性の発揮にとって重要な要素となっていると考えられている。(参照:人事院「地域に勤務する公務員の給与に関する研究会基本報告」)
オ その他の事情
 一般的にはアからエに類似する事情として、地域の経済事情(地場産業の景況、中小企業等の状況)や当該地域における職員採用の難易などが考慮の対象となると考えられる。
 以上5つの要素を考慮して給与決定を行うことが「均衡の原則」の意義であり、本研究会としてこれは妥当なものであると考える。その上で、具体的に給与制度の立案や運用、給与改定等を行う際にどのような対応をとることがこの原則に適うことになるのか検討する必要がある。

 そして、これに続けて「本研究会では、給与制度面での適用の場面と給与水準面での適用の場面を分け以下のように対応することとし、従来の国公準拠の考え方を刷新することを提言する。」として、「362.総合的見直しと人件費削減(その6)」で引用した記述につながっていくのである。

 ここまで、いささか引用した文章が多くて何が言いたいのかよく分からないものとなっているのだが、注目したいのは、当たり前と言われるのかもしれないが、国家公務員法が求める均衡の原則の考慮事項と地方公務員法が求める均衡の原則の考慮事項は重なっているが異なっているということである。

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