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365.総合的見直しと人件費削減(その9) [44.総合的見直しと人件費削減]

前回の考察を通して、国家公務員法に規定する均衡の原則の考慮事項と地方公務員法に規定する均衡の原則の考慮事項は重なってはいるが異なっていることを確認した。

<国家公務員法に規定する均衡の原則>
 ①生計費、②民間における賃金、③その他人事院の決定する適当な事情

<地方公務員法に規定する均衡の原則>
 ①生計費、②国の職員の給与、③他の地方公共団体の職員の給与、④民間事業の従事者の給与、⑤その他の事情

 違うのは、「国の職員の給与」及び「他の地方公共団体の職員の給与」である。同じ均衡の原則と言っても、考慮事項にこれらの事項が加えられていることから、「国公準拠」の考え方が生まれてくるのであり、刷新するとは言っても、この考え方に従えば「362.総合的見直しと人件費削減(その6)」で引用した記述が正当化されることになる。
 しかし、そうは言っても、「この場合、仮に民間給与が著しく高い地域であったとしても、公務としての近似性及び財源負担の面から、それぞれの地域における国家公務員の給与水準をその地域の地方公務員の給与の水準決定の目安と考えるべきである」と考えについては、やはり納得はできない。
 なぜなら、縷々考察してきたように、均衡の原則といっても、出発点は、情勢適応の原則をどのような考え方を基本に実現するのかという問題であり、同時に、労働基本権制約の代償的機能を人事院及び人事委員会が発揮する際の実際的な指針になるものであることを踏まえると、何よりも民間における賃金、民間の事業の従事者の給与との均衡を図ることが基本中の基本となるべきものと思うからである。それを「公務としての近似性の面」はよいとしても、「財源負担の面」という法律上規定されていない(「その他の事情」の説明にも含まれていない)要素を持ち出して「それぞれの地域における国家公務員の給与水準をその地域の地方公務員の給与の水準決定の目安と考えるべき」というのは、筋が違うのではないか。
 職員の人件費財源となる交付税の削減は、地方公共団体によっては脅威となるものであろう。しなしながら、臨時特例法による国家公務員の給与削減のあおりで地方公務員の給与財源が一方的に削減された際には、あれだけの異論の声を地方から上げたではないか。この報告書のこの一文も、その考え方の根っこにある思想は同じなのではないか。「地方は放っておくと人件費負担の増大を招くような給与制度・給与水準としてしまう恐れが多分にあるから、我々国の役人が目を光らせ、しっかりと導いてやらねばならないのだ。」と、正に後見主義的な地方自治観によって指導されているように思える。
 真の地方自治に基づく給与制度のあり方からすれば、いずれここで示された考え方は、変更されなければならない時が来るだろう。

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