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366. 総務省検討会報告(その1) [45.総務省検討会報告]

 12月22日の時事ドットコムに次の記事が掲載された。

給料表の引き下げ勧告を=22人事委に要請-総務省検討会
 地方公務員の給与制度について議論する総務省の有識者検討会は22日、給料表の引き下げなどを柱とした「給与制度の総合的見直し」を勧告していない5府県17政令市の人事委員会に対し、早期に対応するよう求める最終報告をまとめた。住民の理解と納得を得るため、国と同様の取り組みを実施する必要があると指摘した。
 総合的見直しは、各地域、各世代の職員給与を民間に近づけることが目的で、国と地方自治体が来年度から実施する。民間よりも高いと指摘されている55歳以上の職員の給与を大きく引き下げる一方、民間賃金水準が高い都市部などに支給する「地域手当」の支給額を引き上げる。
 検討会は8月の中間報告で、全国の自治体に国と足並みをそろえるよう求めたが、岩手、秋田、群馬、京都、熊本の5府県と、札幌、千葉、新潟を除く17政令市の人事委は、今秋の勧告に見直し内容を盛り込まなかった。高知県も勧告していないが、既に55歳以上の職員給与が低く抑えられており、見直しは必要ないと判断した。(2014/12/22-15:50)

 前回までは、給与の総合的見直しと人件費削減をテーマに考察してきたが、その際の視点を意識しながら、早速、報告書(「地方公務員の給与制度の総合的見直しに関する検討会」報告書、平成26年12月)を見てみよう。
 まず、「地方公務員の給与決定原則(職務給の原則、均衡の原則)」について説明する2頁の記述の気になる部分を抜粋する。平成18年3月の「地方公務員の給与のあり方に関する研究会報告書」において給与決定の考え方の再検討が行われたことを紹介し、次のように述べる。

 そこでは、職務給の原則を徹底していくことの必要性が確認されるとともに、均衡の原則について、従来の国公準拠の考え方を刷新することが示されている。すなわち、給与制度(給料表の構造や手当の種類・内容等)については、公務としての近似性・類似性を重視して均衡の原則が適用されるべきであり、人事院等の専門的な体制によって制度設計されている国家公務員の給与制度を基本とすべきであること、給与水準については、地域の民間給与をより重視して均衡の原則を適用すべきであること、ただ、この場合に、仮に民間給与が高い地域であったとしても、公務としての近似性及び財源負担の面から、それぞれの地域における国家公務員の給与水準をその地域の地方公務員の給与の水準決定の目安と考えるべきであることなどが示されている(資料5)。

 問題は、最後に留意点として示された部分の記述である。平成18年の報告書の該当部分の記述と比較する。(本来は14~15頁の該当部分の記述全体掲載すべきだが、問題と思う箇所のみ掲載する。)

 この場合、仮に民間給与が著しく高い地域であったとしても、公務としての近似性及び財源負担の面から、それぞれの地域における国家公務員の給与水準をその地域の地方公務員の給与の水準決定の目安と考えるべきである。

 注目するのは、「民間給与が著しく高い」との記述から「著しい」が削除され、単に「民間給与が高い」という風に書き換えられていることだ。
 平成18年の報告書では、従来の国庫準拠の考え方の刷新を説明するに当たって、慎重な態度でもって説明しており、給与水準についても民間準拠が原則であると述べている。

 給与水準については、地方分権の進展を踏まえ、地域の労働市場における人材確保の観点や、住民等の納得を得られる給与水準にするという要請がより重視されると考えられることから、地域の民間給与をより重視して均衡の原則を適用すべきである。

 その上で、平成18年報告書は、国家公務員の給与水準を目安と考えるべきであることについて、「民間給与が著しく高い地域であったとしても」というように、まるで東京都を言外に述べるかのごとく補足意見的に述べている。
 一方、今回の報告書は、平成18年報告書を引用しているように見せながらも、国家公務員の給与水準を目安とすることを一層強調したものとなるような意図をもって記述しているとの印象を受ける。つまり、平成18年報告書では、地域の民間給与をより重視した視点に立っているのに対して、今回の報告書は、国家公務員の給与水準を重視すべきと強調したものとなっているのである。総合的見直しを勧告しなかった団体に対して実施を迫るために、無理矢理理論武装をしようとしている、と思えてならない。


 次に、「地方公務員給与における対応の方向性」について述べた箇所で、給料表についての現状認識に触れたところである。(5頁)

 地方公務員給与においては、総体としては平成18年以降の給与構造の見直しにより一定の成果を上げており、一部には人事委員会機能の発揮による地域民間給与の更なる反映を行っている団体もある。しかし、例えば都道府県で見ても、地域間の民間給与の差の反映はまだ道半ばとも言える(資料3)。また、(以下、略)

 「地域間の民間給与の差の反映はまだ道半ばとも言える」として示している資料3を見てみる。
 そこでは、平成16年と平成25年について、①総務省が実施している「地方公務員給与実態調査」に基づく地域手当(調整手当)を加味した上での職員給与の都道府県間の水準差、②人事院・人事委員会が実施している「職種別民間給与実態調査」基づく都道府県の民間給与の水準差及び③いわゆる賃金センサスのデータのうちの公務類似データに基づく都道府県の民間給与の水準差について、それぞれ全国単純平均からの乖離を指数化し、その変化を示している。数値のみ抜粋する。

<47都道府県における給与差>
              平成16年   平成25年
①総務省調査(職員)   21.4ポイント → 28.6ポイント
②人事院・人事委民調   23.3ポイント →  29.6ポイント
③賃金センサス      30.5ポイント →  30.6ポイント

<上位・下位10団体ずつを除いた27団体における給与差>
              平成16年   平成25年
①総務省調査        3.4ポイント →  5.9ポイント
②人事院・人事委調査    8.9ポイント →  7.7ポイント
③賃金センサス      10.3ポイント →  11.6ポイント

 このデータが正しいのかどうか、このような比較が正しいのかどうか、残念ながら確かめるだけの余力がない。ただ、言いたいのは、もし、このような比較が正しいものとして成り立つのであれば、①総務省調査と③賃金センサスに基づくデータさえあればよいことになると言っていることにならないか、ということだ。つまり、人事院・人事委員会の調査は信用できないと言っているように思えてならない。
 もちろん、別の箇所では、例えば「人事院等の専門的な体制によって制度設計されている国家公務員の給与制度(云々)」とか、「専門的な第三者機関である人事院において(云々)」と述べているのであり、人事院の調査を信頼しなければ、報告書の主張が瓦解することになる。したがって、ここでは、ずばり「人事委員会の調査は信用できない」と述べていることになる。そのこともあって、今後に向けた課題として、人事委員会機能のあり方に言及しているのだと思われる。
 (しかし、人事委員会の調査が信用できないのならば、人事院と都道府県人事委員会等が連携・協力して実施している職種別民間給与実態調査そのものを否定していることにはならないのだろうか。そうすると…。)


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