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367. 総務省検討会報告(その2) [45.総務省検討会報告]

 12月22日に公表された「地方公務員の給与制度の総合的見直しに関する検討会」報告書の内容について、前回に引き続き見ていきたい。

 まず、「見直しの進め方等」の「人事委員会勧告との関係」について取り上げる。少し長いが、該当箇所を抜粋する。(8~9頁)

(1)人事委員会勧告との関係
 人事委員会を設置している団体にあっては、職務給の原則や均衡の原則を踏まえつつ、人事委員会機能を適切に発揮することにより、見直しに取り組むことが求められる。
 すなわち、公民比較方法の検証、公民較差のより一層精確な算定、勧告内容等に対する説明責任の強化等に努めつつ、当該団体の給与制度・運用・水準の状況や、国の制度見直しの内容を踏まえた上で、必要な対応について検討を行い、適切な勧告を行うことが求められる。
 これに関し、既に人事委員会が地域民間給与に準拠した勧告を行っているので給料表等の見直しの理由が見いだせない等の声を聞くことがある。
 しかしながら、国家公務員法の均衡の原則が基本的に民間における賃金を考慮事項とし、民間準拠による給与改定を行うこととしているのとは異なり、地方公務員法の均衡の原則においては、民間給与とともに、国家公務員給与も考慮事項の一つとされていることから、国家公務員給与の見直しがあれば、それを踏まえた当該団体の給与の検討が求められるところである。また、地方公務員給与においては、前述のとおり、平成18年以降の給与構造見直しが一定の成果を上げている一方、地域間の民間給与の差の反映はまだ道半ばとも言え、この点を十分考慮した上で、各人事委員会において適切な勧告を行うことが重要である。さらに、均衡の原則の適用においては、3.でみたとおり、給与水準については地域民間給与をより重視しつつ、民間給与が高い地域であっても当該地域の国家公務員の給与水準を目安とすることとして整理されていることを十分踏まえておく必要があろう(資料5)。

 見てのとおり、今年の人事委員会勧告において、人事院勧告に準じた給与制度の総合的見直しの勧告を行わなかった団体の人事委員会報告での見解を念頭に、これに反論する形の意見を述べている。
 曰く、「地方公務員法の均衡の原則は、国家公務員法の均衡の原則とは異なる」と。
 そして、「国家公務員給与も考慮事項の一つなのだから、また、地域間の民間給与の差の半径はま道半ばとも言えるから」という理由を挙げた上で、「均衡の原則の適用においては、給与水準については地域民間給与をより重視」するのだけれども、「民間給与が高い地域であっても当該地域の国家公務員の給与水準を目安とすることとして整理されていることを十分踏まえておく必要があるんだよ。」と言うのである。
 簡単に言えば、「民間給与か国家公務員給与かいずれか水準の低い方に合わせなさい。」という訳である。本来、人事委員会勧告は、人事院勧告同様に労働基本権制約の代償的機能を果たすべく、憲法上の要請からギリギリのところで認められた制度であるはずである。そういった観点からの積極的な説明もなく、単純に「地方公務員法の均衡の原則には国家公務員給与も考慮事項になっている。」ということのみで、短絡的に報告書の結論を導き出しているように思えてならない。民間均衡論を超える国準拠論についての丁寧な説明もなく、一言「公務としての近似性、財源負担の面から」という文言を理由に挙げるのみであり、論理の組み立てとしては極めて薄っぺらに思える。言い過ぎだろうか。

 次に、「人事委員会勧告の状況等」について述べた箇所を見ていく。(11頁)

 (略)また、勧告を見送った理由として、見直しによって給与水準が変動しこれまでの公民均衡が崩れることや他の団体の対応を踏まえて検討する必要があることを挙げている人事委員会が多いほか、独自給料表の見直しや他の諸課題と今回の見直しとを一体的に検討するため時間を要すること、地域手当の指定基準に対して検討を行う必要があること等を挙げている人事委員会がある。
 これらの理由で給与制度の総合的見直しについて勧告が行われていない団体においては、6.(1)でみたとおり、人事委員会は地方公務員法の均衡の原則に基づき国の給与制度の見直しを考慮する必要があること、スケジュールについても6.(2)のとおり、国・地方を通じて公務員給与の抱える課題への対応であることから、国の見直し時期を念頭に対応を行うことが求められること、また、地域手当にあっては5.(3)のとおり、地方公務員においても国の基準にのっとることが原則と考えられること等に鑑みると、住民・国民の地方公務員給与への理解と納得を得るためにも、国の見直し方針を踏まえ、速やかに必要な対応を取ることが求められると考えられる。

 今回、総合的見直しの勧告を行わなかった団体に対して、「住民・国民の地方公務員給与への理解と納得を得るためにも、国の見直し方針を踏まえ、速やかに必要な対応を取ることが求められる」と言っているのである。つまり、「先ほど報告書で説明したとおり、地方公務員給与制度上、我々の解釈・説明が正しいのだから、サッサと国準拠で実施しろ。」と言外に述べているとしか受け取れない言い方である。総務省とすれば、今回勧告を行わなかった人事委員会のうち、積極的に理由を説明しているものに対しては、メンツを潰されたような感覚を持ったのではないだろうか。この報告書を読むと、そのような総務省の怒りと焦りが見て取れるような…。

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