SSブログ

371.古書散歩(その11)=『学校教育法解説』 [24.古書散歩]

 後に文部大臣となった内藤誉三郎が文部省学校教育局庶務課長時代に著した『学校教育法解説 附教育基本法、学校教育法、同施行規則』という本がある。昭和22年8月5日に「ひかり出版社」から発行されている。
 本書の「序」で、当時の文部大臣である高橋誠一郎は、著者を「内藤君は学校教育法案の作製並びに通過の為に文字通り不眠不休の努力を続けた人である」と紹介している。
 著者の「緒言」を読むと、日本国憲法制定後の新しい日本の学制が6・3・3・4に決定され、この方向に向かって、それまで複雑煩瑣な内容であった文部法令を全部廃止して新しい法律にまとめ上げようと大変な努力をした様子が描かれている。そして、順次読み進めていくと、学校教育を取り巻く当時の状況を踏まえて、色々と悩みながら条文を作り上げていったことが分かる。

 教職員の設置に係る規定「第二十八条」の解説を引用する。(69頁)

 第二十八条は小学校の職員について規定したものである。国民学校令第十五条と異なり注目しなければならない点は事務職員を規定したことである。国民学校において、教員が学校に関する庶務に忙殺されて、その担当する教育の成果を充分に挙げ得なかつたような実情に対処するため、特に事務に従事する職員を置こうとしたのである。しかし、予算上の措置も考慮して、第二十八条第一項但書の規定を置いたのである。
 次に教員の名称を小学校、中学校、高等学校及び幼稚園を通じて、教諭及び助教諭に統一した。名称の相違が身分の尊卑を表す様な従来の観念を一掃するためである。国立及び公立の小学校については国民学校と異なり、職名が設けられた訳である。教諭には有資格者が、助教諭には然らざるものが充てられるのであるから当分の間教諭には文部教官又は地方教官が補せられ、助教諭には従来の国民学校本科又は初等科教員免許状を有する者及び助教が任命されることになろう。養護教諭は第百三条によつて、当分の間これを置かなくてもよいことになつている。これは国民学校令附則昭和十八年勅令第六百三十五号第二項に対応するものである。第二十八条第二項の「その他必要な職員」とは講師、学校医、看護婦等を想像している。

 この間、文部科学省は教員の多忙化に対する対策を講じるべく努力をしてきた。そして、今、「チーム学校」と銘打って予算要求し、事務職員をはじめ教員以外の専門職員の増員を目指している。
 引用した文章からは、戦後、新しい学制に基づく教育を推進するに当たって教員の多忙対策が課題となっており、その対策として、教員以外の専門職員としての事務職員の設置を求めたことが分かる。現代の「チーム学校」につながる発想は、学校教育法制定時に既にその芽を膨らませていたのであった。

nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:仕事

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。