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372.読書=『過労死時代に求められる信頼構築型の企業経営と健康な働き方』 [29.読書]

 佐久間大輔『過労死時代に求められる信頼構築型の企業経営と健康な働き方~裁判例から導かれる過労死予防策~』(労働開発研究会、2014年)
 著者は、労災・過労死事件を中心にした労働紛争などを扱っている東京弁護士会所属の弁護士である。
 本書は、過労死が社会問題となる中で、増加する労災認定や労働紛争に対して、裁判例から導き出される対処法を解説するものである。学者の書いた本とは違って、体系的に理論を示すようなものではなく、紛争解決の実務家らしく、裁判になった事件に対して最高裁だけでなく下級審で示された考え方を一つ一つ丁寧に分類整理し、過労死予防策のポイントを解説したものとなっている。そしてそれは、企業にとっての企業防衛や危機管理だけでなく、実際に過労死を予防し、真に労働者が健康で働くことができる職場環境の整備に役立てられるものとなっている。

 本書の構成は次のとおり。

第1部 経営戦略と労働法
第1章 ビジネス倫理と経営戦略
 第2章 労働法の基礎知識
第2部 従業員の健康を守る義務
 第1章 使用者の補償義務
 第2章 使用者の義務違反
 第3章 因果関係、過失
 第4章 使用者の予防義務
 第5章 パワハラ・いじめ
第3部 信頼を基礎とした人事
 第1章 傷病による配置転換
 第2章 傷病による勤務軽減
 第3章 休職と復職
 第4章 傷病による退職勧奨

 最近の裁判例の傾向からすると、簡単に言えば「労働者から申し出がなかったから、使用者には責任はない」というような考え方は甘いよ、ということのようだ。そして、単に危機管理と言った視点からだけでなく、企業戦略としても、労働者との「信頼」をベースにしながら、労働者が健康で働ける環境整備を目指す経営が求められるよ、ということを主張されている。
 多忙化が指摘される教員の職場環境を考える際にも、大変参考になる。一読を勧めたい本である。

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