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384.読書=『地方を食いつぶす「税金フリーライダー」の正体』 [29.読書]

 村山祥栄『地方を食いつぶす「税金フリーライダー」の正体』(講談社+α新書、2015年)
 「藻谷浩介氏激賞!!」とする帯に引かれて手に取ってみた。著者は、現役の京都市会議員で、帯には「ベストセラー『京都・同和「裏」行政』でセンセーションを巻き起こした現役市会議員が再びタブーに切り込む問題作!!」とある。
 第1章は、「人件費」が財政を食いつぶす、である。「ちゃんちゃらおかしい特殊勤務手当」という項目もあって「またか」という感じなのだが、一応読んでいくと…、行政職給料表の給料水準の重なりを取り上げている箇所があった。項目のタイトルは、蔓延る「出世したくない症候群」となっている。

 もう一点は、年功序列・終身雇用の究極形と言える人事制度だ。「頑張っても頑張らなくても給与は同じ」「出世しても、出世しなくても給与は同じ」、ただ「年功序列、歳を取った分だけ給与は上がる」というのが公務員人事だ。だから頑張らない職員が後を絶たず、これでは頑張る者も頑張らなくなっていくばかりだ。
 その極端な例が係長昇進だ。(略)多くの自治体では、係長になるには試験を受けねばならない。しかし、係長認定試験の受験率は低迷を続け、その受験率はたった23%。つまり、8割近い職員が係長試験を受けたがらないのだ。京都市に限らず、全国の自治体で同じように「出世したくない症候群」が万円しているとも聞く。
 しかし、なぜ職員は出世したがらないのであろうか。それは、左上図の京都市の行政職の給料表を見れば納得する。
 民間企業では役職に応じて給与水準が異なり、一般的には役職ごとの金額の重なりはほとんどない場合が多い。ところが京都市の給料表を見ると、役職間の給与月額が、かなりの部分で重なっていることがわかる。つまり、わざわざ勉強をして係長試験を受けて、将来苦労の多い管理職にならなくても、ヒラ(係員)のままで残業手当を加算すれば、部長級に近い給与を受け取ることができてしまうわけだ。事実、京都市の場合、職員の役半数が「ヒラ」で退職する。彼らからは、「出世するなど馬鹿らしい」という声まで飛び出しているのが実態だ。(66~67頁)

 掲載されている京都市の行政職給料表の図を見ると、級間の給与水準の重なりが大きい姿が示されている。ただし、正確な金額は明示されていないので、京都市の例規集によって京都市職員給与条例で定められている行政職給料表を確認してみる。

<京都市の行政職給料表>
 1級(係員) 1~97号給 130,200~268,400円
 2級(係員) 1~137号給 178,300~339,400円
 3級(主任) 1~149号給 214,000~394,800円
 4級(係長) 1~117号給 262,300~420,300円
 5級(補佐) 1~105号給 283,700~436,700円
 6級(課長) 1~97号給 315,200~474,900円
 7級(部長) 1~89号給 348,600~519,500円
 8級(局長) 1~81号給 392,500~579,100円

 京都市の行政職給料表は国の行(一)とは異なる8級の級構成であり、それぞれの職の職責の度合いの評価は難しいところがあるが、ざっとみると、総務省が示している都道府県の等級別基準職務表ではなく、国の行(一)の本府省に適用される標準職務のより高い職位を意識したつくりとなっている。例えば、京都市の5級・課長補佐の水準は、国の6級、すなわち都道府県の課長・本府省の課長補佐の水準を上回る水準であり、京都市の6級・課長の水準は、国の7級、すなわち都道府県の総括課長・本府省の室長の水準を上回る水準となっている。
 それはさておき、各級の巾や水準の重なり具合を見ておこう。上下の巾の金額、初号に対する最高号給の率、1級上位の級との重なっている金額、1上位の級と重なっている割合の順番に示す。国の行(一)についても掲載しておく。

<京都市の行政職給料表 上下の巾と水準の重なり>
 1級(係員) 138,200円 2.06 90,100円 65.2%
 2級(係員) 161,100円 1.90 125,400円 77.8%
 3級(主任) 180,800円 1.84 132,500円 73.3%
 4級(係長) 158,000円 1.60 136,600円 86.5%
 5級(補佐) 153,000円 1.54 121,500円 79.4%
 6級(課長) 159,700円 1.51 126,300円 79.1%
 7級(部長) 170,900円 1.49 127,000円 74.3%
 8級(局長) 186,600円 1.48

<行(一) 上下の巾と水準の重なり>
 1級 107,300円 1.78 57,200円 53.3%
 2級 120,300円 1.64 83,400円 69.3%
 3級 130,100円 1.58 91,200円 70.1%
 4級 124,800円 1.47 97,600円 78.2%
 5級 109,900円 1.38 78,500円 71.4%
 6級 100,500円 1.31 55,100円 54.8%
 7級 88,700円 1.24 42,100円 47.5%
 8級 64,100円 1.15 12,600円 19.7% 
 9級 72,100円 1.15 7,800円 10.8%
 10級 40,200円 1.08

 これをどのように考えるか。京都市の行政職給料表の各級の水準の重なり状況はまるで給与構造改革前のようであり、より年功的要素を色濃く残していることは間違いないだろう。

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