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390.臨時・非常勤教員(その3) [46.臨時・非常勤教員]

 前回、臨時的に任用された職員の給与の取扱いについて、公立の義務教育諸学校等の教職員として勤務する場合には給料表が適用されることが多いが、それ以外の職場で勤務する職員の場合には給料表が適用されないのはなぜなのか、との疑問を示した。
 まず、『自治体の新臨時・非常勤職員の身分取扱(第1次改訂版)』(学陽書房、2002年)ではどのように解説しているのか、確認しておく。

 「② 臨時的任用職員の勤務条件は、通常勤務職員と同様、条例で定めなければならないが、必ずしも、すべての勤務条件が通常勤務職員と同一でなければならないものではない。例えば、給料については給料表を適用しても構わないし、給料表以外の賃金単価を用いても差し支えない。定期昇給も特別昇給も適用されないが(適当な給料表の級に格付けすることが必要ならば行っても構わない。)
 給料は賃金で支給されるが、その額は条例で定めるより、年度毎に予算で決められるのが通常である。(略)」(51頁)

 この記述では、要するに、「給料表を適用しても構わないし、賃金単価を適用しても構わない、どちらでもよい」と説明している。
 別の箇所では、次のような記述もある。

 「(1) 臨時的任用職員は一般職の職員として地公法の適用を受けるので、勤務の対価は、原則として、給与条例によることになるが、臨時的任用職員という性格から、日給であり手当は時間外勤務手当と休日給に限定されるのが通常である。(略)」(120頁)

 こちらの方は、給料表の給の字も出てこない。
 「身分取扱いの実際」と題した第2部の記述も見てみる。

 「臨時的任用職員の給料は、正規任用の通常勤務職員とは切り離し、任命権者が事務執行規程で定めるのが一般的であることはすでに触れたところである。具体的には、「給料については、日額とし、賃金予算の範囲内において支給する」等と規定し、予算上の統一単価(時間単価)によるのが一般的である。しかし、採用候補者名簿がない場合に行う臨時的任用の場合は、理論的には職自体が恒久的であると考えられることから、その場合は、正規任用の通常勤務職員の給料体系に準じたものを考える必要もあろう。」(183頁)

 「正規任用の通常勤務職員の給料体系に準じたもの」と述べているが、正規任用の職員と同じ給料表を適用してよいとまでは述べていない。
 しかし、その続きに教職員の場合の記述が出てくる。

 「臨時的任用職員のうち、産休法又は育休法の規定に基づき任用された教職員の場合は、産休又は育休に入る教職員と同等以上のレベルで教科を担当し、授業の継続性を確保する必要性がある等の理由から、給料額の決定を初め、正規の教職員が適用を受ける給与制度がそのまま適用される。すなわち、採用の時点で、正規任用の通常勤務教職員と同様に、経験年数、学歴免許等を考慮した上で、給料額が決定される。また、給料の調整額や諸手当も正規の教職員と同等の条件で支給される。」(183頁)

 教職員には正規任用と同様に給料表を適用すべきことが示され、その理由も簡単に述べている。その説明に違和感はない。
 そして、この記述に続いて、「いずれにしても、任用形態の相違を無視し、画一的に統一単価で給料額を決定するのは、合理的とは言いがたい。」と述べるのである。
 例えば、こんな行政実例がある。

○昭三一.三.八 自治丁発第三三号 石川県総務部長あて 自治庁公務員課長回答「地方公務員法の疑義について」
照会
三 臨時的任用の職員は給与、勤務時間その他の勤務条件について、別個に条例で定めない限り、他の職員と同様の取扱となすべきか。
回答
三 臨時的任用の職員の給与、勤務時間等について、他の職員と異なる取り扱いをしようとする場合は、その異なる措置についての定めがなければならないものと解する。

○昭三六.六.五 自治丁公発第四七号 高知県総務部長あて 自治省公務員課長回答「臨時職員の給与の取り扱いについて」
照会
 地方公務員法第二二条の規定により雇用される臨時的任用職員は、一般職の公務員であり職員の給与に関する条例の適用を受けるものと解されるが、この場合
(1) 一般職の職員の給与に関する条例中に「臨時職員の給与については、この条例の規定にかかわらず予算の範囲内で任命権者が別に定める」と規定するのは、地方公務員法第二四条第六項の規定に違反するか否か、またその理由。
(2) 適法であるとすれば適当か否か。不適当である場合その理由。
回答
 地方公務員法第二二条の規定に基づく臨時的任用職員の給与については、他の職員と同様に給与に関する条例を適用すべきものであるが、同条例中に特別の定めをして差支えないものと解する。

 臨時的任用の教員に関しては、次の実例がある。

○昭三一.八.二○ 委初第九一号 北海道教育委員会教育長あて 文部省初等中等教育局長回答「『女子教育職員の産前産後の休暇中における学校教育の正常な実施の確保に関する法律』の施行に伴う臨時的任用職員の身分取扱等について」
照会
一 臨時的に任用される職員は、地方公務員法第三条に規定する一般職に属する職員と解し、身分等は一般正規任用職員と同様の取扱を実施してよいか。
二 前号の場合「可」とすると、教員給料表を適用させなければならないと考えるがどうか。
三 臨時的に任用される職員の任用期間の特殊性にかんがみ、給料、扶養手当及び勤務地手当のみを支給し、その他の給与を支給しない旨、条例をもつて定めても差支えないか。
回答
一 女子教育職員の産前産後の休暇中における学校教育の正常な実施の確保に関する法律(以下「法律」という。)第四条の規定により、臨時的に任用される教育職員は、地方公務員法第三条に規定する一般職の職員である。
二 教員としての給料表が適用される。
三 法律第四条の規定により、臨時的に任用される教育職員は一般職の職員であるから、地方公務員法第二四条第六項の規定により、給与は条例で職員の職務と責任に応じて定めなければならない。なお、教育公務員特例法第二五条の五の規定の適用がある。

○昭三一.八.二七 委初第二二五号 岩手県教育委員会教育長あて 文部省初等中等教育局長回答「女子教育職員の産前産後の休暇中における学校教育の正常な実施の確保に関する法律に基づき臨時的に採用される教育職員の諸給与について」
照会
二 諸手当の支給について
  市町村立学校職員給与負担法第四条に基づき支給すべきと思われるがどうか。
回答
二 市町村立学校職員給与負担法第一条及び第二条の教員には臨時的に任用される教員も含まれる。

 以上要するに、臨時的任用職員の給与は、他の職員と同様に給与条例を適用すべきであり、従って給料表を適用すべきであるが、条例に基づき別の取扱いをしても差し支えないと考えられている、ということだ。
 また、少なくとも産休代替の教員については教育職給料表を適用すべきであること。そして、少なくとも都道府県が給与負担すべき公立学校教員には臨時的任用の教員も含まれる、すなわち、報酬や賃金ではなく給料の支給が前提である、ということなのである。産休代替にせよ、欠員補充にせよ、児童生徒に対する教育をつかさどる、すなわち、小学校での学級担任をはじめ、教科指導だけでなく、生徒指導も含めてフルタイムの業務に責任を持って従事する必要があることを踏まえると、正規教員と同様の身分取扱いを基本とすべきことは言をまたないのではないだろうか。同僚がカバーするとともにアルバイトを採用することでなんとか執行体制を確保できる可能性が比較的高い他の一般行政分野とは、大きく異なる。

 ちなみに、国家公務員の場合は、国家公務員法第60条第1項の規定により、地方公務員同様に臨時的任用を行うことができる。臨時的任用をした場合に国家公務員の人事異動通知書には給料はどのように記載されるのだろうかと思い、「人事異動通知書の様式及び記載事項等について」(昭和27年6月1日13─799、人事院事務総長発)を見てみたが、明らかにはならなかった。そこで、『国家公務員 任用実務のてびき』を見てみた。第5節の「臨時的任用」の説明には、「臨時的職員(臨時的任用された職員のこと=編注)は常勤職員であり、定員法上も、定員内である」とある。また、臨時的任用を行う場合の人事異動通知書については、「係員(○○局○○課)に臨時的に任用する 任期は平成○○年○○月○○日までとする 行政職俸給表(一)○級○号俸を給する」という記載例になっている。
 国においては、臨時的任用であっても、給料表を適用するのが基本であるらしい。

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