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395.臨時・非常勤教員(その7) [46.臨時・非常勤教員]

 前回、臨時的任用の期間が12月を超えて共済組合に加入するという事態になったらどうなるのか考えてみたのだが、そもそも臨時的任用という任用方法でもって年度を超えるような事態に至るのは望ましくないだろうし、制度設計上も限界があるだろうから、本来は根本的な解決策を見いだすべきだろう。この問題はこのノートの守備範囲を大きく超える内容になるし、指摘だけに止めておく。

 さて、常勤講師の身分取扱いを別の面で複雑にしているものがある。それは、公務災害における常勤講師の取扱いなのだが、公立学校における常勤講師などの沿革的経緯を踏まえて、他の職種にはない特殊なものとなっている。
 まず、地方公務員災害補償法の適用される職員の定義を確認しておく。

<地方公務員災害補償法>
(定義)
第二条 この法律で「職員」とは、次に掲げる者をいう。
一 常時勤務に服することを要する地方公務員(常時勤務に服することを要しない地方公務員のうちその勤務形態が常時勤務に服することを要する地方公務員に準ずる者で政令で定めるものを含む。)
二 (略)

 前に取り上げた地方公務員等共済組合法第2条の規定とほとんど同じ書きぶりであり、条文だけを読むと、政令で定めるもの、すなわち常勤的非常勤職員に該当しない限り、常勤講師には地方公務員災害補償法は適用されないのではないか、と思ってしまう。ところがどっこい、そんなに事は単純ではない。常勤講師には例外的に同法を適用する扱いになっているのである。
 その辺りの事情について、地方公務員災害補償基金が発行している『月刊 災害補償』の2000年・12月号にレポートが掲載されている。『地方公務員災害補償制度・実務講座② 地方公務員災害補償法の適用対象職員の範囲』である。少々長くなるが、該当箇所を引用する。

(2) 例外的な取扱い
 臨時的に任用された職員は、原則として常勤の職員には該当しないものとして取り扱われているが、義務教育学校等の教職員については例外的な取扱いがなされており、次に掲げる場合には臨時的任用であっても「常勤の一般職の職員」として取り扱うこととされている。
① 女子教職員の出産に再指定の補助教職員の確保に関する法律(以下「産休法」という。)第3条第1項(同条第3項において準用する場合を含む。)の規定に基づき臨時的に任用された教職員(校長(園長を含む。)、教頭、教諭、養護教諭、助教諭、養護助教諭、講師(常勤に限る。)、実習助手、寮母、学校栄養職員及び事務職員)
② 年度の中途で教職員の欠員が生じたとき又は教職員が結核性疾患その他の傷病により比較的長期にわたる休暇を受け若しくは休職にされたときに、当該学校の教職員の職務を補助させるため地公法第22条第2項の規定により任用された教職員(対象は①に同じ。)
③ 地方公務員の育児休業等に関する法律(以下「育休法」とい。)第6条に基づき臨時的に任用された教職員(対象は①に同じ。)
 これは、地公災法制定時における市町村立学校職員給与負担法(以下「負担法」という。)の改正及びその後の関連法改正の経緯に鑑みて特例を設けているものである。すなわち、地公災法が制定される以前は、負担法の適用となる職員の公務災害補償に係る費用については、同法第1条の規定により都道府県の負担によることとされていたが、地公災法の制定に伴いこれらの職員の公務災害補償に要する費用については同法第49条第1項において基金に対する負担金の形で都道府県が負担することとなり、負担法第1条の規定から都道府県が公務災害補償に要する費用を負担するという規定が削除された。一方、産休法第3条第1項の規定に基づき臨時的に任用された教育職員(いわゆる産休補助教員)についても負担法の適用があるものとされていることから、都道府県は当該職員に係る負担金を支払わねばならないが、当該職員について基金の補償の対象となる職員に該当しないとすると両者の取扱いに矛盾が生じるため、産休補助教員については、臨時的任用であってもすべて基金の補償の対象となる職員に該当することとされた。(昭43.1.13 自治省行政局決定、昭47.1.31 自治給第4号:資料①、③)
 同様に、教員に欠員が生じた場合等に地公法第22条第2項の規定により任用された教員についても、その勤務形態、勤務内容等に産休補助教員と差異はないため、基金の補償の対象となる職員に該当することとされた。(昭43.5.2 自治給第47号、昭47.1.31 自治給第4号:資料②、③)
 また、負担法は市町村立の義務教育学校及び高等学校の職員を対象とするものであるが、県立高等学校の職員等負担法の対象とならない職員で、その任用形態が負担法対象職員と同様であるものについても、その勤務形態、職務内容等に負担法対象職員と何ら差異はなく、財政負担区分の問題だけでこれらの職員と取扱いを異にすることは地公災法の目的、職員間の均衡からみて適当でないことから、同様にすべて地公災法上の職員に該当することとされた。(昭47.1.31 自治給第4号:資料③)
 当時の産休法の対象は「教育職員」とされていたが、昭和53年に行われた同法の改正により「学校栄養職員」及び「事務職員」も同法の対象とされ、法律名においても「教育職員」が「教職員」に改められた。これに伴い、地公災法の適用に関する取扱いにおいてもおれら「学校栄養職員」及び「事務職員」を含めたものとすることとし、これらの職員が産休又は長期休暇等のため不在となる場合に同法又は地公法に基づきんじてきに任用された者についてはすべて地公災法上の職員として取り扱うものとされた。(昭59.4.3 自治給第14号:資料④)
 廃止前の義務教育諸学校等の女子教育職員及び医療施設、社会福祉施設等の看護婦、保母等の育児休業に関する法律(以下「旧育休法」という。)は、昭和50年に制定されたものであるが、同法第2条第1項に規定する「義務教育諸学校等」に勤務する同条第3項に規定する「教育職員」が、同法第3条第2項の規定により、育児休業を許可された場合において、同法第15条に基づき臨時的に任用された「教育職員」については、上記産休法に基づき臨時的に任用された職員とその勤務形態、職務内容等に差異はないため、これも地公災法上の職員として取り扱うこととされた。(昭59.4.3 自治給第14号:資料④)
 なお、同法は、育休法の制定に伴い廃止され、育児休業及び代替職員の臨時的任用に関する規定は教育職員等に限らず他のすべての職種も同様に取り扱うものとされたが、「教育職員」については職務の特殊性及びそれまでの経緯から、地公災法上の取扱いは従前どおりとされている。また、旧育休法の対象とされていなかった「学校栄養職員」及び「事務職員」が育休法第6条に基づき臨時的に任用された場合についてであるが、産休又は長期休暇等のため臨時的に任用された同職種の職員とその勤務形態、職務内容等に差異はないため、これも地公災法上の職員として取り扱うこととされている。(14~16頁)

 現行制度の複雑さを理解するためには沿革的経緯を踏まえなければならない理由がここにも存在する。

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