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418. 読書=『公務員の賃金-現状と問題点』 [29.読書]

 早川征一郎+盛永政則+松尾孝一編著『公務員の賃金-現状と問題点』(旬報社、2015年)
 早川氏は法政大学名誉教授、盛永氏は日本国家公務員労働組合連合会常任顧問、松尾氏は青山学院大学経済学部教授。本書は、研究者と国公労連のメンバーによる研究活動の成果であり、問題点の指摘は組合運動の立場からのものとなっている。
 内容は、組合活動の立場からではあるが、公務員賃金の現状と課題が概観できるものとなっている。個別の問題点について更に考察したい場合には、本書を手がかりにすればよい。

 序章 公務員賃金とは何か
 第1章 公務員賃金決定と人事院勧告制度
 第2章 人事院勧告制度下の公務員賃金決定
 第3章 国家公務員賃金の現状と課題
 第4章 地方公務員の賃金
 第5章 公務員賃金決定の社会・経済的影響
 終章 公務員賃金決定と労働基本権

 しかし、公務員賃金の現状と課題を示してくれるまとまった著作であろうと思われたことから期待して読んだのだが、概略の説明と組合の主張がほとんどであった。正直な感想を述べると、「突っ込み方が鈍い」というのが第一印象であり、紙幅の関係でそうなったのかもしれないが、物足りなく、残点であった。

 例えば、2001年に閣議決定された公務員制度改革大綱によって意図された「能力等級制度の導入」がいかにして挫折するに至ったのかについては、経緯に触れるのみで、賃金論の立場からの深い考察がない。給与構造改革や給与制度の総合的見直しについても、説明が表面的なものに止まっている。
 地方公務員の立場からすると、国家公務員給与改定・臨時特例法に基づく平均7.8%の給与削減を巡る各自治体の反応を取り上げてほしかったし、総合的見直しを事実上地方に強制する際の根拠の一つとして示した総務省の「均衡の原則」の問題点ももっと突っ込んでほしかった。もちろん、この省を担当した松尾教授は注釈で問題意識を表明してはいるのだが…(p136)。
 という点などである。
 問題意識が違うのだから、仕方がない。


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