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419.「人事院月報」第1号 [49.「人事院月報」拾い読み]

 今回から「人事院月報」を取り上げ、思いつくままに拾い読みをしてみたい。

 人事院月報の第1号は、人事院事務総局広報局から昭和25年5月1日に発行されている。巻頭には、初代総裁である浅井清の「創刊のことば」が掲載されており、当時の人事院を取り巻く雰囲気を伝えている。

 すべて公務員は全体の奉仕者であって、一部の奉仕者でないことは、新憲法の明示しているところである。
 この「国民全体の奉仕者」たるにふさわしい国家公務員制度を樹立するため、国家公務員法が制定され、同法の完全な実施を確保し、その目的を達成するために人事院が設けられた。
 (中略)
 この法律実施の任を負う人事院としては、基礎的根本的部面より着手し段階的にその施策の展開をはかってきたのである。国の行政内容が複雑多岐となり、行政担当者の専門化が要請せられる今日、国家公務員法の意図する公務員制度が一日も早く実施されることは、民主国家完成のためにも極めて肝要である。人事院としては、国家公務員法に規定された施策を一日も早く全面的に展開するよう鋭意努力している次第である。
 巷間人事院に対し色々な批判がなされているようであるが、これは国家公務員法、あるいはこの法律に基づく人事院の施策に対する認識の欠如によるものが多いかと思われる。
 今般人事院月報が刊行されることとなったが、この月報が幸いに国家公務員法及び人事院に関する認識を少しでも深める助けとなることを希望してやまない。(表紙裏)

 「創刊のことば」に続いて、「人事院の機構」が紹介され、その次には「職階制制定作業の経過」が報告されている。冒頭のタイトル横に小さな囲み記事があり、そこで次のように述べている。(3頁)

 職階制とは統一的で合理的な官職の分類計画のことであって、公正な給与準則の基礎となり、また任用、能率増進等一連の新しい人事行政にとって極めて有用なものである。人事院はこの職階制の制定に鋭意努力してきたが、ようやく第7国会において、職階法の成立を見るに至った。そこで人事院の行ってきた職階制制定作業の経過についての概略を以下にかかげる。

 本文では、職階制が制定実施されるまでの段階を(1)職階制の立案、(2)職階法の制定、(3)職階制の実施の3段階に分けた上で、(1)と(2)の経過を説明している。
 職階制の立案作業は、現在に至るまでに、①準備作業、②職種調査、③職級(仮)決定調査、④試験的格付(歯科技工および写真技術)の順序で行われたと述べている。それによれは、1950年2月7日現在で、職種数は454、職級決定ずみの職種数は159(35%)となっている。
 その後、職階法の制定とその後の経緯が説明され、最後に次のように述べている。

 (略)まことに職階制の確立は各省関係者はもちろんのこと全公務員ひいては全国民の深き理解と不断の協力なくしては、その全きを期し難いのである。(5頁)

 人事院は昭和27年末には格付表の作成を概ね終了し、その翌年には給与準則案の国会及び内閣への提出準備を行ったのだが、結局は実施が見送られたのであった。
 そして、国家公務員法の制定から約60年が経過し、平成19年の第166国会において改正国家公務員法が成立し、平成21年4月新たに人事評価制度が導入され、国家公務員の職階制は一度も実施されることなく静かに廃止されたのであった。(地方公務員の職階制についても、平成26年4月に改正地方公務員法が成立し、平成28年4月に国家公務員同様廃止となる運命にある。)

 なお、次の頁には「用語解説」が掲載されている。いくつか拾っておく。

 格付(allocation) 官職を職級にあてはめること。
 官職(position) 一人の職員に割りあてられる職務と責任。
 職階制(position-classification plan) 官職を職務の種類および複雑と責任の度に応じ分類整理する計画。
 職級(class[of position]) 人事院によって職務と責任が十分類似しているものとして決定された官職の群であって、同一の職級に属する官職については、その資格要件に適合する職員の選択にあたり同一の試験を行い、同一の内容の雇用条件においては同一の俸給表をひとしく適用し、及びその他人事行政において同様に取り扱うことを適当とするもの。
 職務(duty) 職員に遂行すべきものとして割あてられる仕事。
 職務分析(position analysis) 職務と責任に関する事実を、格付の要素により分析し、配列し、その事実の相互関係および全体としてのその官職に対する関係を検討する手続。
 職種(occupation) 職務の種類が類似していて、その複雑と責任の度が異なる職級の群。
 責任(responsibility) ある職員が職務を遂行し、又は職務の遂行を監督する義務。

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