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469. 授業準備時間にも報酬を=コマ講師 [47.「コマ給」をどう捉えるか]

 一月以上も前のことだが、2018年7月5日の毎日新聞(地方版)に公立高校のコマ講師を巡る衝撃的な記事が掲載された。

是正勧告
授業準備時間にも報酬を 東大阪労基署、府教委に3度 /大阪
 東大阪市にある府立高校の男性非常勤講師に賃金の未払いがあったとして、東大阪労働基準監督署が2017年~18年、府教委に3度の是正勧告を出していたことが分かった。府教委は非常勤講師について、準備などに要した時間に関係なく授業1コマ当たりの報酬を2860円に固定する制度(通称・コマ給)を採用しているが、労基署は労働時間に応じて対価を支払うよう求めた。府教委は勧告に従って、約20万円の支払いに応じた。
 授業教材作成などに従事した時間の対価が支払われないのは労働基準法違反だとして、非常勤講師が労基署に申告。府教委は「準備や成績評価などまで含めた対価として、コマ当たりの報酬は高めに設定している」と主張したが、労基署は認めなかった。府教委は勧告に従う一方、府立学校に2700人以上いる非常勤講師のコマ給の仕組みは維持。担当者は「管理職がすべての非常勤講師の勤務時間を管理、把握するのは難しい」と説明する。
 コマ給による未払い賃金は学習塾のアルバイト講師を巡っても問題になり、厚生労働省は学習塾業界などに改善を求めた。

 「コマ給」をどう捉えるか、をテーマに考察してきたこのノートにとっては、「ついに来たか!」との感想。ネットサーフィンしてみると、実は、2016年にも新聞記事になっていたようである。(2016年12月8日(木)朝日新聞朝刊)

講師賃金未払いで 豊中市教委に勧告
労働時間含め是正求める
 豊中市立中学校の非常勤講師1人に賃金の一部未払いがあったことが分かった。非常勤講師からの申告を受け、淀川労働基準監督署が豊中市教委を調査した。同市教委では、非常勤講師の賃金台帳に正確な労働時間数を記入していなかったことも分かり、労基署が合わせて是正勧告をした。
 市教委などによると、是正勧告は中学校で美術を教えていた非常勤講師1人対する賃金未払い(労働基準法24条違反)▽市費で採用しているすべての非常勤講師(約80人)の正確な労働時間を賃金台帳に記入していなかった(同108条違反)、とする内容。11月16日付。
 未払いがあった非常勤講師は、今年6~7月に作品の評価など、授業以外の労働に対して賃金未払いがあったとみなされた。市教委はすでに未払い分の計8万8660円を支払ったという。
 また、市教委では、非常勤講師の報酬を、準備も含めて1授業(中学校50分、小学校45分)2860円としており、賃金台帳には授業数のみ記入していた。各学校には労働時間数の報告を求めていなかったという。
 市教委は「適正な対応を取れていなかったと真摯に受け止めている。再発防止に取り組みたい」とした上で、「授業数に基づく報酬体系が否定されたわけではない」としている。

 う~ん。そうであったか。十分フォローできていなかった。
 毎日新聞が指摘するように、学習塾のアルバイト講師を巡ってコマ給による未払い賃金が問題になっていたことは知っていた。
 例えば、こんな記事がある。日本経済新聞2015年10月26日の記事。

明光義塾に是正勧告 バイト講師賃金未払いで仙台労基署
 仙台労働基準監督署は26日までに、学習塾「明光義塾」を運営する「明光ネットワークジャパン」(東京都新宿区)に対し、宮城県内の教室でアルバイト講師の賃金未払いがあったとして是正勧告をした。
 労働組合「個別指導塾ユニオン」によると、授業1コマ(90分)当たりで賃金を支払う「コマ給」という仕組みのため、前後の準備や報告書作成に対する支払いが不十分で、労基法違反と指摘された。アルバイト講師の大学院生の男性(23)が、労基署に事情を申告していた。勧告は6日付。
 同社は取材に、勧告を認め「事実関係を調査するとともに、労基署の指導に基づき誠実に対応する」とコメントした。
 男性のコマ給は1600円。授業前後の計30分間に相当する手当として1日400円が払われていたが、厚生労働省で記者会見した男性は「30分前には出勤して準備し、報告書も毎回1時間以上かかった」と証言した。〔共同〕

 続いて、毎日新聞2016年1月8日の記事。

アルバイト塾講師
授業準備も業務 賃金支払いを勧告
 アルバイト塾講師の賃金について、相模原労働基準監督署が、授業準備や報告書作成など授業以外の仕事も労働時間と認定し、半年間の未払い賃金22万円の支払いなどを学習塾に命じる是正勧告を出していたことが分かった。授業のコマ数(授業をしている時間)に応じ賃金を支払う塾業界の労働慣習が、見直しを迫られている。
 塾講師らが加入する個別指導塾ユニオンなどによると、勧告を受けたのは学習塾大手の湘南ゼミナール(横浜市)系列の「森塾淵野辺校」(相模原市中央区)。中高生を教える男子学生(19)が昨年11月、賃金不払いなどを申告した。勧告は同12月28日付。
 男子学生などによると、授業30分前に出勤し自分の授業の予習や生徒の出欠確認などを行い、休憩時間中は生徒の質問に対応。授業後は約50分間、報告書作成や塾生送り出し、清掃をする。だが、賃金は授業1コマ80分1500円でコマ数分のみ。授業以外の労働時間についても賃金の支払いを求めたが、塾側は応じなかった。
 勧告について、湘南ゼミナールは「真摯(しんし)に受け止め、誠意をもって対応したい」(広報部)としている。
 アルバイト塾講師を巡って厚生労働省は昨年3月、授業以外の準備に要する時間も労働時間として賃金を支払うよう求める文書を塾業界7団体に送った。ところが、同ユニオンによると、塾大手の明光義塾を運営する「明光ネットワークジャパン」(東京)の関係5教室でも、今回と同様の賃金未払いがあったとして労基署から是正勧告を受けたことが昨年10月に発覚。改善がなかなか進まない実態が浮かんだ。
 厚労省が昨年11月に公表した学生アルバイトに関する初の実態調査でも、アルバイト塾講師経験者の57%が、労働条件を巡るトラブルがあったと回答。「授業の準備や片付けの時間の賃金が支払われなかった」「採用時に合意した以外の仕事をさせられた」といった訴えが目立った。【東海林智、高場悠】

 やはり、というか、「コマ給90分1,600円+前後30分400円」や「コマ給80分1,500円」で授業前後それぞれ30分・1時間も拘束されたら、時給は実質的に500円~666円となり最低賃金を割り込んでしまう…。塾講師の実態は、ひどいと言うほかない。

 毎日新聞の記事には「厚生労働省は学習塾業界などに改善を求めた。」とある…。

 厚生労働省神奈川労働局が「学習塾における講師等の労働条件の確保・改善のポイント」と題する4ページもののパンフレットを作成している。少々長いけれども、前半部分を丸ごと引用する。

 神奈川労働局においては、これまで、学習塾経営事業者に対して、講師等の労働条件の確保を中心として監督指導等の実施を行ってきましたが、学習塾の中には、「授業の1コマ」等を単位として賃金額を決定し、講師に支払う賃金形態(以下「コマ給」といいます。)があることなどを原因として、賃金不払等の労働基準法違反が生じているなどの問題が認められました。
 学習塾における講師等を使用される事業者の方々を始めとして学習塾事業に携わる皆様には、このパンフレットをご活用いただき、講師等の労働条件の確保・改善に取り組んでいただきますようお願いします。

1 労働条件の明示について(労働基準法第15 条及び労働基準法施行規則第5 条)
 講師等と労働契約を締結した際、法定の労働条件について、書面で交付する必要がありますが、この際、時間給やコマ給により賃金が支払われる学生アルバイト等については、特に以下の事項に留意する必要があります。
【従事すべき業務を具体的に明示しましょう】
 主たる業務である授業のほか、授業以外で想定される具体的な業務内容を可能な限り記載しましょう。
【労働条件通知書への記載例 ※下線部は、特に明示すべき事項。】
A 授業
B 授業の準備・片付け、生徒からの質問・相談対応、テスト監督・採点、報告書作成、スケジュール作成・管理、システム入力、ミーティング、テキスト等作成、生徒・保護者との面談、保護者への連絡、販売促進活動、講師研修、朝礼・終礼、生徒の出迎え・見送り、清掃、戸締まり 等
【従事すべき業務に対する時間単価を明示しましょう】
 授業時間に対する時間単価と授業以外の労働時間に対する時間単価が異なる場合は、具体的に明示した業務に対応する時間単価をそれぞれ明示しましょう。
なお、学習塾の中には、授業の1コマ等の単位を基礎として労務管理を行っている場合もありますが、
 その場合であっても、授業時間に対する時間単価を明示しましょう。
 ただし、以下1~4の事項をいずれも満たす場合に限り、コマ給を時間単価に換算した賃金額を併記した上で、1コマ当たりの時間数及び賃金額を明示することは差し支えありません。
  1.従事すべき業務が具体的に明示されていること。
  2.コマ給に含まれる業務が明示されていること。
  3.従事すべきそれぞれの業務に対する時間単価が明示されていること。
  4.時間単価の異なる業務ごとに労働時間が把握されていること。
【労働条件通知書への記載例(時間給等の場合) ※下線部は、特に明示すべき事項。】
1.原則
・授業給 時間額 ◎◎◎円
・業務給 時間額 ◆◆◆円(「従事すべき業務の種類」のBに掲げる業務)
※ ただし、生徒からの質問・相談等により授業が延長した場合は、授業給◎◎◎円で支払う。
2.コマ給(授業時間のみに対してコマ給を設定)の場合 注:□□□円=○○○円÷80 分×60 分
・授業給 1コマ80 分 ○○○円(時間額□□□円)
・業務給 時間額 △△△円(「従事すべき業務の種類」のBに掲げる業務)
※ ただし、生徒からの質問・相談等により授業が延長した場合は、当該時間に対し時間額□□□円
で支払う。
3.コマ給(授業時間及び付随業務に対してコマ給を設定)の場合 注:■■■円=●●●円÷100 分×60 分
・授業給 1コマ100 分 ●●●円(時間額■■■円)
※ 1コマは、授業80 分と準備10 分、片付け10 分で合計100 分とする。
・業務給 時間額 ▲▲▲円(「従事すべき業務の種類」のBに掲げる業務)
※ ただし、生徒からの質問・相談等により授業が延長し又は準備、片付けにより100 分を超えた場合は、当該時間に対し時間額■■■円で支払う。

2 労働時間について(労働基準法第32 条、労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン)
 「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」に基づき、適正に労働時間を把握してください。
【労働時間の適正な取り扱いを徹底しましょう】
 労働時間とは、使用者の指揮監督の下にある時間をいい、授業を行っている時間に限るものではありません。特に、次のような時間について、労働時間として取り扱っていない例がみられますが、労働時間として適正に把握、管理する必要がありますので留意してください。
 使用者の指示により実施する授業前の準備時間、使用者の指示により実施する授業後の報告書等の作成時間、生徒からの質問対応時間、テキスト作成時間、研修等を行う時間、休憩時間に、生徒からの質問に対応する時間、休憩時間とされていても実際には使用者の指示により質問対応のために待機している時間、等
【労働日ごとの始業・終業時刻を確認・記録を行いましょう】
 労働時間と判断した時間を適正に把握するため、始業・終業時刻の確認・記録に当たっては、原則として、
 1 使用者が、自ら現認して、
 2 タイムカード等の客観的な記録を基礎として、
確認・記録を行いましょう。
 また、書面において明示したそれぞれの業務に対する時間単価が異なる場合は、賃金を適切に支払う観点から、時間単価が異なる業務ごとに、労働時間を把握する必要があります。
(以下、省略)

 極めて具体的な指導内容が示されている。労働基準法の規定を踏まえるならば、このような指導内容となるのは当然だろう。
この内容を公立学校の講師に当てはめられると現状では直ちに対応できないのではないかと思うが…。しかし、大阪府内の公立高校では労働基準監督署が是正指導しているのだ。全国の教育委員会の担当者の皆さん、大丈夫ですか?
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