SSブログ

479. 自己研鑽の時間(その3) [8.トピック]

 2回にわたって「自己研鑽の時間」を取り上げたが、正確に理解するために、改めて整理してみたい。

 教職調整額が4%とされた根拠については、「文部省が昭和41年度に行った教員の勤務状況調査の結果による超過勤務手当相当分の俸給に対する比率約4%という数字を尊重した」とされている。
 この調査では、服務時間外の勤務状況を調査したものだが、その際、自主研修や付随関連活動(関係団体活動等)は調査対象とされなかった。その上で、服務時間外に報酬を受けて補習を行っていた時間は差引かれ、服務時間内の社会教育関係活動等の時間は服務時間外の勤務時間から相殺減されたのであった。その結果得られら超過勤務時間をベースに4%がはじき出されたというのである。
 つまり、教職調整額4%の基礎には、自主研修の時間や学校関係団体活動の時間は含まれていない。しかも、服務時間中における学校関係団体活動の時間は相殺減されている。


 一方、文部科学省制定の「公立学校の教師の勤務時間の上限に関するガイドライン」では、ガイドラインにおける「勤務時間」について、「在校等時間」をガイドラインの対象となる「勤務時間」であるとする。
 そして、在校時間のうち、「所定の勤務時間外に校内において自らの判断に基づいて自らの力量を高めるために行う自己研鑽の時間その他業務外の時間については、自己申告に基づき除く」とするのである。
 諄いけれども、敢えて強調して述べると、「所定の勤務時間外にいわゆる「超勤4項目」に該当するもの以外の業務を教師の自発的な判断により行った時間は、使用者の指揮命令下に置かれている時間ではないから、労働基準法上の「労働時間」には含まれない」けれども、「「超勤4項目」以外であっても、校務として行うものについては、超過勤務命令に基づくものではないものの、学校教育に必要な業務として勤務していることに変わりない」ことから、「「超勤4項目」以外の業務が長時間化している実態も踏まえ」、「在校等時間」としてガイドラインの対象となる「勤務時間」とする、というのだ。

 以上を併せて整理すると、「自己研鑽の時間」は、「労働時間」でないことはもちろん、「在校等時間」に含まれる「労働時間には含まれない勤務の時間」にも含まれない時間なのだという二重の徹底ぶりとなっている。

 教職調整額制度の創設時、超勤裁判で労働者が勝ち取った業務は職員会議の時間や修学旅行などの時間でせいぜい0.4%、教職調整額は4%だからこちらの方お得ですよ、という趣旨の国会答弁を当時の人事院総裁がしている。
つまり、教職調整額4%の基礎には、自主研修や学校関係団体活動の時間は含まれていない(部活動指導の時間も含まれていない可能性が高いことは、以前このノートで取り上げた)が、労働時間に含まれない「超勤4項目」以外の業務に従事している時間が含まれており、これらの業務に従事する時間も給与措置の対象にしたということである。
 このことを意識しながら考えると、「在校等時間」は教職調整額の基礎とすべき時間の考え方と同じであると考えることもできるのではないか。そうすると、4%の水準は低いではないか、という議論にも繋がる。

 いずれにしても、自己研鑽の時間は、労働時間ではなく、校務に従事している時間と理解することもできない、純然たる自主的な活動の時間と理解されている。そして、繰り返しになるが、文科省は、この労働時間には含まれない「自己研鑽の時間」には、「校長会・教頭会・教科連絡協議会等のメンバーとしての活動」や「教科指導や生徒指導に係る自主的な研究会に参加」する時間も含まれると説明するのである。

 教育基本法で「法律に定める学校の教員は、自己の崇高な使命を深く自覚し、絶えず研究と修養に励み、その職責の遂行に努めなければならない」(第9条第1項)と言われ、教育公務員特例法で追い打ちをかけるように「教育公務員は、その職責を遂行するために、絶えず研究と修養に努めなければならない」(第21条第1項)と言われる。
 そのような責務が求められる下で、各種の研究会が組織され、当然のように教員は加入し、仕事の一環として研究会の研究指定の業務を担当し、研究発表会には研修の一環として参加している。勤務時間内であれは、校長が命じた仕事として扱われるのだろう(もしかすると、第22条第2項の承認研修にすべきとの頑な意見があるかもしれないが…)。これが勤務時間外に行われたならば、「自己研鑽の時間」として労働時間にも在校等時間にも含まれないことになるのか…。法令上の解釈として仕方がないのかもしれないが、やるせない気持ちにはなる…。



nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:仕事

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。