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500. 給料表カーブの公表 [8.トピック]

 平成31年3月29日付けで「地方公共団体における職員給与等の公表について」(昭和56年10月13日付け自治給第45号自治事務次官通知)の一部改正が行われ、国の行政職俸給表(一)と当該地方公共団体の行政職給料表(一)のカーブを比較した表を公表することとなった。
 この比較表は、縦軸に俸給(給料)月額、横軸に号俸(号給)を置いて俸給表及び給料表のカーブを描くグラフとなっている。これは、以前このノートでも取り上げた「地方公務員の給与決定に関する調査研究会報告書」(平成31年3月一般財団法人自治総合センター)によって示された「わたり」を点検するための給料表カーブの比較手法に基づいている。(475. 自治総合センター31年3月報告書)
 https://hayamitaku.blog.ss-blog.jp/2019-07-19

 今回、東京都が公表した比較表を見てみた。「東京都人事行政の運営等の状況」ちという資料の12頁に掲載されている。
https://www.soumu.metro.tokyo.lg.jp/03jinji/pdf/hakushotousin/01jinjigyousei.pdf

 東京都の行政職給料表(一)はいわゆる独自給料表であるため、国の行政職俸給表(一)とは構造やカーブが大きく異なっている。まず、職務の級の構成は、国が10級制を採用しているのに対して、東京都は5級制を採用している。

<国の行政職俸給表(一)> 俸給月額は平成31年4月較差改定後
 職務の級 本省の職 号俸数 俸給月額      上下の幅
 10級  特重課長  21 521,700~559,500円  37,800円
 9級   重要課長  41 458,400~527,500円  69,100円
 8級   困難室長  45 408,100~468,600円  60,500円
 7級   室長    61 362,900~444,900円  82,000円
 6級   困難補佐  85 319,200~410,200円  91,000円
 5級   課長補佐  93 289,700~393,000円 103,300円
 4級   困難係長  93 264,200~381,000円 116,800円
 3級   係長   113 231,500~350,000円 118,500円
 2級   主任   125 195,500~304,200円 108,700円
 1級   係員    93 146,100~247,600円 101,500円

<東京都の行政職給料表(一)> 給料月額は平成31年4月較差改定後
 職務の級 基準職務 号給数 給料月額      上下の幅
 5級   部長     4 494,000~526,700円  32,700円
 4級   課長    97 284,000~455,000円 171,000円
 3級   課長代理 141 224,800~415,100円 190,300円
 2級   主任   129 199,100~362,500円 163,400円
 1級   主事   149 141,300~324,300円 183,000円

 こうして見ると、東京都の給料表の級別の水準に相当する国の級は、概ね次のような感じになるか。

<東京都行一VS国行一>
 東京の級      国の級
 (なし)      10級(特重課長)
 5級(部長)    9級(重要課長)
 4級(課長)    5級(課長補佐)~7級(室長)・8級(困難室長)
 3級(課長代理)  3級(係長)~6級(困難補佐)
 2級(主任)    2級(主任)~3級(係長)・4級(困難係長)
 1級(主事)    1級(係員)~2級(主任)・3級(係長)

 国の俸給表は本省だけでなく、管区機関や府県単位期間、地方出先機関に置かれる様々な職に対応する必要があり、必然的に2つの級にまたがる「わたり」を内包する構造となっている。もっとも総務省は、国の俸給表を「わたり」とは言わないが。
 これに対して、東京都の場合は、シンプルな職制に対応したシンプルな級構成となっている。これはこれで職務給を追求した姿となっているのだが、ざーと見た感じでは、逆に課長職以下については年功的で、国よりも手厚いようにも思える。総務省が示している都道府県の標準職務と比べるとワンランクアップなのは、東京都ならではと思うけれども…。

 さて、しかしである。総務省が示した比較方法では、独自給料表にはしっかりと対応できないことは明らかだろう。東京都のようにシンプルな級構成の場合、国の何級と比較すべきか、一見して分からない。号給の数が多くてカーブが長くなりがちであるが、国と比較して号給を延長しているのかどうか判然としない。こうした課題を克服するには、やはり俸給制度表を作成し、各級の職務を照らし合わせつつ比較するしかないのではないか。つまり、縦軸は俸給(給料)月額でよいのだが、横軸には号俸(号給)ではなく、制度年齢(経験年数)を置いて比較すべきである。そうすることで、更に分析が進み、違った様相が見えてくる。

 例えば、東京都の1級(主事)は、大卒制度年齢30歳を超えた辺りから国の2級(主任)の水準を超え、2級(主任)と3級(係長)との中間水準のカーブを描いて大卒制度年齢53歳に至る。
 東京都の2級(主任)は、大卒制度年齢30歳から国の3級(係長)の水準を超え、3級(係長)と4級(困難係長)との中間水準のカーブを描いた後、制度年齢40歳を超えてカーブが徐々にフラットになるに従って4級(困難係長)の水準から離れ、3級(係長)を12,000円~12,500円程度上回る水準で進み、大卒制度年齢56歳に至る。
 東京都の3級(課長代理)は、国の3級(係長)や4級(困難係長)、5級(課長補佐)の水準を上回るカーブを描き、6級(困難補佐)と同水準を走ったあと、40歳を過ぎた辺りから水準が下がるものの、国の6級(困難補佐)の最高号俸が大卒制度年齢57歳であるのに対して、最高号給は大卒制度年齢61歳まで延長されており、最終的には4,900円上回る水準に到達する。

 ちなみに、平成22年2月に公表された「地方公務員の給料表等に関する専門家会合とりまとめ」(座長:稲継裕昭早稲田大学大学院公共経営研究科教授)に添付の資料17「国と独自構造の給料表を用いる団体Aの給料カーブ比較」は、俸給制度表を作成した上で給与カーブをグラフ化して比較している。


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