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481. 令和元年全人連モデル [8.トピック]

 令和元年の全人連による旧教(二)(三)のモデル給与表を例によって点検してみた。

 令和元年の人事院勧告における行(一)以外の俸給表改定の考え方は、例年と同じく、「行政職俸給表(一)以外の俸給表についても、行政職俸給表(一)との均衡を基本に所要の改定を行う。」と述べている。
 では、例年同様、格合わせによって点検する。

 まず、令和元年の人事院勧告による行(一)の改定内容について、号俸ごとに改定率を計算する。
 次に、旧教(二)(三)の現行の各号俸について、行(一)との格合わせに基づき対応する行(一)の各号俸の改定率を乗じて仮の改定額を計算する。
 一応四捨五入してみた上で、旧教(二)(三)の計算結果を行(一)の改定内容と比較していく。そうすると、四捨五入の結果、0.1単位の改定率が一致しなくなる。
 例えば、教(三)の2級37号俸は対応する行(一)3級1号俸の改定率0.7(0.6521…)を乗じて四捨五入すると改定額が1,600円で改定率が0.6(0.6346…)となってしまう。そのため、モデルでは改定額を100円引き上げ1,700円とし、改定率は0.7(0.6743…)としている。逆に改定率が0.6ではなく0.7と高くなってしまう39号俸と40号俸については、改定額を100円低くして行(一)の対応号俸に併せている。さらに、41号俸から44号俸については改定率は0.6であるものの、上下の号俸の改定額が1,600円となる中で1,700円と100円高いことから、改定率を0.6で維持しつつ、改定額を各100円引き下げている。概ねこのような感じで、丁寧に凸凹の調整を行っている。

 その結果、旧教(二)(三)のモデル給与表の初任給については、教諭(大学卒)及び講師等(大学卒)に係る初任給について1,700円(対行一:+200円)、教諭(短大卒)に係る初任給について1,900円、実習助手等(高校卒)に係る初任給について2,100円(対行一:+100円)、それぞれ引き上げている。
 「30歳台半ばまでの職員が在職する号俸について、所要の改定を行う」考え方は、行(一)と同じである。

 今回、昨年度までのように特に首をかしげるような点は見当たらなかった。相変わらず、特2級と3級の逆転現象は解消されず、そのまま維持されている。


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480. 令和元年人勧の俸給表改定 [8.トピック]

 8月7日、令和元年の人事院勧告が行われた。今年も勧告による俸給表の改定内容を考察しておく。
 まず、報告から関係部分の記述を抜粋する。

(行政職俸給表(一))
 民間との給与比較を行っている行政職俸給表(一)について、平均0.1%引き上げることとする。
 具体的には、民間の初任給との間に差があること等を踏まえ、総合職試験及び一般職試験(大卒程度)に係る初任給について1,500円、一般職試験(高卒者)に係る初任給について2,000円、それぞれ引き上げることとし、これを踏まえ、30歳台半ばまでの職員が在職する号俸について、所要の改定を行う。
(行政職俸給表(一)以外の俸給表)
 行政職俸給表(一)以外の俸給表についても、行政職俸給表(一)との均衡を基本に所要の改定を行う。なお、専門スタッフ職俸給表及び指定職俸給表については、本年の俸給表改定が若年層を対象としたものであることから改定を行わない。


 初任給については、「民間の初任給との間に差があること等を踏まえ」とあるが、報告では具体的な差についての記述がない。仕方がないので、参考資料の「民間給与実態調査の概要」を見ると、「職種別、学歴別、企業規模別初任給」の「企業規模計」の「新卒事務員・技術者計」の金額は、大学卒が203,167円、高校卒が165,412円となっている。ちなみに昨年の報告の参考資料を見ると、大学卒は202,013円、高校卒は163,551円となっている。それぞれ1年間で、大学卒は1,154円、高校卒は1,861円高くなっている。
 さて、初任給の具体の改定状況を勧告された俸給表で確認する。

 <初任給基準である号俸の改定>
 総合職試験(大卒程度)2級1号俸 194,000円→195,500円(+1,500円)
            ※備考(二) 185,200円→186,700円(+1,500円)
 一般職試験(大卒程度)1級25号俸 180,700円→182,200円(+1,500円)
 一般職試験(高卒者) 1級5号俸 148,600円→150,600円(+2,000円)

 次に、「これを踏まえ、30歳台半ばまでの職員が在職する号俸について、所要の改定を行う」とある。

 まず、高卒初任給の号俸から大卒初任給の号俸までを見ると、1年に100円ずつ低減していく形となっている。
 基幹号俸について、改定額をピックアップする。
  1級5号俸 2,000円(一般職試験高卒者の初任給)
  1級9号俸 1,900円
  1級13号俸 1,800円
  1級17号俸 1,700円
  1級21号俸 1,600円
  1級25号俸 1,500円(一般職試験大卒程度の初任給)

 次に、大卒制度年齢29歳までの号俸については、1,500円の改定としている。
 両端の号俸について、改定額をピックアップする。
  年齢 経験  1級の改定額 2級の改定額 3級の改定額
  22歳 0年 25号俸 1,500円
  29歳 7年 53号俸 1,500円 21号俸 1,500円 5号俸 1,500円

 大卒制度年齢30歳以上は、号俸を上昇するに従って改定額を漸減させ、大卒制度年齢35歳6月の号俸の額定額200円で終了している。改定は、1級から5級までで、6級以上の改定は行われていない。35歳9月以降の号俸及び再任用職員の俸給月額は改定なしである。
 基幹号俸などについて、改定額をピックアップする。
  年齢 経験  1級の改定額 2級の改定額 3級の改定額
  29歳 7年 53号俸 1,500円 21号俸 1,500円 5号俸 1,500円
  30歳 8年 57号俸 1,400円 25号俸 1,400円 9号俸 1,400円
  31歳 9年 61号俸 1,200円 29号俸 1,200円 13号俸 1,300円
  32歳 10年 65号俸 1,100円 33号俸 1,200円 17号俸 1,200円
  33歳 11年 69号俸 1,000円 37号俸 1,100円 21号俸 1,100円
  34歳 12年 73号俸 700円 41号俸 700円 25号俸 800円
  35歳 13年 77号俸 400円 45号俸 400円 29号俸 500円
  35歳6月  79号俸 200円 47号俸 200円 31号俸 200円
  35歳9月  80号俸 - 円 48号俸 - 円 32号俸 - 円

 洋裁に見ていくと、33歳までの4年間で改定額を500円減額、改定率は0.7又は0.6から0.4に引き下げられている。さらに35歳9月までの2年9月で一気に改定額を1,000円又は1,100円減額している。
 なんとなく、これまでになく急激な改定額の逓減となっているように感じる。大卒制度年齢35歳前後で、給料表カーブが歪になってはいないのだろうか。点検してみる。
 分かりやすくするため、基幹号俸について、ピックアップする。
  年齢 経験  1級の号俸の間差額
  31歳 9年 61号俸 3,400円→3,300円
  32歳 10年 65号俸 3,400円→3,300円
  33歳 11年 69号俸 2,900円→2,600円
  34歳 12年 73号俸 2,700円→2,400円
  35歳 13年 77号俸 2,800円→2,400円
  36歳 14年 81号俸 2,700円→2,700円
  37歳 15年 85号俸 2,600円→2,600円
  38歳 16年 89号俸 1,500円→1,500円

 1級の73号俸及び77号俸の間差額がへこみすぎ、あるいは、81号俸及び85号俸の間差額が上がりすぎの感じで、号俸が上昇するに従って間差額が漸減していく美しさは少し失われてしまった。
 2級以上の間差額については、1級のような歪さにはなっていない。間差額のピークの位置が概ね上昇したような結果となっている。

 さて、全人連モデル給与表はどんな形になるのだろうか。

(追記)
 今回の俸給表改定は、高卒初任給を2,000円引き上げるとともに、20歳台を1,500円引き上げるという大胆な内容であった。これは、今年の月例給の官民較差が昨年に比べて小さく387円に止まったこと(昨年は655円)から、若年層、とりわけ30歳未満に重点的に配分したということだと思うが、2つの理由が考えられるのではないか。
 1つは、1級初号付近の号俸については、最低賃金の引上げの動向も意識して対応したのだと思う。平成30年度地域別最低賃金の全国加重平均は874円となっている。平成29年度の848円に対して26円上昇している。今年度はさらに27円引き上げ901円になりそうな勢いだ。ちなみに現行の行(一)1級1号俸の俸給月額144,100円の時給を単純計算すると858.16円となる。勧告後で計算すると870.07円(+11.91円)となっている。
 2つ目は、定年延長を見据えた給与カーブ見直しへの備えとして、40歳付近以上の号俸を据え置いたのではないかと考えられる。人事院は、「5 給与制度における今後の課題」で、「本院は、昨年行った国家公務員の定年を段階的に65歳に引き上げるための国家公務員法等の改正についての意見の申出において、60歳を超える職員の給与水準の引下げは当分の間の措置と位置付け、60歳前の給与カーブも含めて引き続き検討していくこと等に言及した。」と述べた後、「今後とも、(略)民間企業における定年制や高齢層従業員の給与の状況、公務における人員構成の変化及び各府省における人事管理の状況等を踏まえながら、60歳前の給与カーブも含めた給与カーブの在り方について検討を行っていくこととしたい。」と来年の勧告を予告するかのように含みを持たせた報告を行っている。
 

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479. 自己研鑽の時間(その3) [8.トピック]

 2回にわたって「自己研鑽の時間」を取り上げたが、正確に理解するために、改めて整理してみたい。

 教職調整額が4%とされた根拠については、「文部省が昭和41年度に行った教員の勤務状況調査の結果による超過勤務手当相当分の俸給に対する比率約4%という数字を尊重した」とされている。
 この調査では、服務時間外の勤務状況を調査したものだが、その際、自主研修や付随関連活動(関係団体活動等)は調査対象とされなかった。その上で、服務時間外に報酬を受けて補習を行っていた時間は差引かれ、服務時間内の社会教育関係活動等の時間は服務時間外の勤務時間から相殺減されたのであった。その結果得られら超過勤務時間をベースに4%がはじき出されたというのである。
 つまり、教職調整額4%の基礎には、自主研修の時間や学校関係団体活動の時間は含まれていない。しかも、服務時間中における学校関係団体活動の時間は相殺減されている。


 一方、文部科学省制定の「公立学校の教師の勤務時間の上限に関するガイドライン」では、ガイドラインにおける「勤務時間」について、「在校等時間」をガイドラインの対象となる「勤務時間」であるとする。
 そして、在校時間のうち、「所定の勤務時間外に校内において自らの判断に基づいて自らの力量を高めるために行う自己研鑽の時間その他業務外の時間については、自己申告に基づき除く」とするのである。
 諄いけれども、敢えて強調して述べると、「所定の勤務時間外にいわゆる「超勤4項目」に該当するもの以外の業務を教師の自発的な判断により行った時間は、使用者の指揮命令下に置かれている時間ではないから、労働基準法上の「労働時間」には含まれない」けれども、「「超勤4項目」以外であっても、校務として行うものについては、超過勤務命令に基づくものではないものの、学校教育に必要な業務として勤務していることに変わりない」ことから、「「超勤4項目」以外の業務が長時間化している実態も踏まえ」、「在校等時間」としてガイドラインの対象となる「勤務時間」とする、というのだ。

 以上を併せて整理すると、「自己研鑽の時間」は、「労働時間」でないことはもちろん、「在校等時間」に含まれる「労働時間には含まれない勤務の時間」にも含まれない時間なのだという二重の徹底ぶりとなっている。

 教職調整額制度の創設時、超勤裁判で労働者が勝ち取った業務は職員会議の時間や修学旅行などの時間でせいぜい0.4%、教職調整額は4%だからこちらの方お得ですよ、という趣旨の国会答弁を当時の人事院総裁がしている。
つまり、教職調整額4%の基礎には、自主研修や学校関係団体活動の時間は含まれていない(部活動指導の時間も含まれていない可能性が高いことは、以前このノートで取り上げた)が、労働時間に含まれない「超勤4項目」以外の業務に従事している時間が含まれており、これらの業務に従事する時間も給与措置の対象にしたということである。
 このことを意識しながら考えると、「在校等時間」は教職調整額の基礎とすべき時間の考え方と同じであると考えることもできるのではないか。そうすると、4%の水準は低いではないか、という議論にも繋がる。

 いずれにしても、自己研鑽の時間は、労働時間ではなく、校務に従事している時間と理解することもできない、純然たる自主的な活動の時間と理解されている。そして、繰り返しになるが、文科省は、この労働時間には含まれない「自己研鑽の時間」には、「校長会・教頭会・教科連絡協議会等のメンバーとしての活動」や「教科指導や生徒指導に係る自主的な研究会に参加」する時間も含まれると説明するのである。

 教育基本法で「法律に定める学校の教員は、自己の崇高な使命を深く自覚し、絶えず研究と修養に励み、その職責の遂行に努めなければならない」(第9条第1項)と言われ、教育公務員特例法で追い打ちをかけるように「教育公務員は、その職責を遂行するために、絶えず研究と修養に努めなければならない」(第21条第1項)と言われる。
 そのような責務が求められる下で、各種の研究会が組織され、当然のように教員は加入し、仕事の一環として研究会の研究指定の業務を担当し、研究発表会には研修の一環として参加している。勤務時間内であれは、校長が命じた仕事として扱われるのだろう(もしかすると、第22条第2項の承認研修にすべきとの頑な意見があるかもしれないが…)。これが勤務時間外に行われたならば、「自己研鑽の時間」として労働時間にも在校等時間にも含まれないことになるのか…。法令上の解釈として仕方がないのかもしれないが、やるせない気持ちにはなる…。



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478. 自己研鑽の時間(その2) [8.トピック]

 前々回「自己研鑽の時間」を取り上げ、教職調整額4%の基礎には、自主研修の時間や自主的な研究会等の活動の時間は含まれていない、つまり、それらは職務ではないと整理されてきたことを紹介した。
 この点に関して、厚生労働省がどのように考えているのか、確認しておきたい。

 まず、次のような行政実例がある。

「就業時間外に実施する自由参加の技術教育の時間は時間外労働か(労働基準法第32条、36条関係)」(昭和26年1月20日基収2875号、平成11年3月31日基発168号)
(問)
 使用者が自由意思によって行う労働者の技術水準向上のための技術教育を、所定就業時間外に実施する場合の、労働基準法第36条第1項の適用に関して左記の通り疑義があるが如何。
                 記
 右のような「教育」を実施した時間は労働基準法上「労働時間」とみなされ法第36条第1項の規定による時間外労働の協定を必要とするか。
イ、業務命令として職制を通じ所属長から通常の作業に準じて参加命令を発し拘束の態様が通常業務に対すると全く同一の場合
ロ、職制上直列系統に非ざる教育担当者から単なる「通知書」を以て参加を要請し建前としては自由参加の形式を採っている場合
(答)
 労働者が使用者の実施する教育に参加することについて、就業規則上の制裁等の不利益取扱による出席の強制がなく自由参加のものであれば、時間外労働にはならない。

 ちょっと分かりにくいが、次のガイドラインでも、自活的な能力開発の時間は労働時間ではないとの主旨を述べている。

「労働時間等見直しガイドライン(労働時間等設定改善指針)」(平成20年厚生労働省告示第108号)
(2) 特に配慮を必要とする労働者について事業主が講ずべき措置
へ 自発的な職業能力開発を図る労働者
 企業による労働者の職業能力開発は今後とも重要であるが、サービス経済化、知識社会化が進むとともに、労働者の職業生活が長期化する中で、大学、大学院等への通学等労働者が主体的に行う職業能力開発を支援することの重要性も増してきている。このため、事業主は、有給教育訓練休暇、長期教育訓練休暇その他の特別な休暇の付与、始業・終業時刻の変更、勤務時間の短縮、時間外労働の制限等労働者が自発的な職業能力開発を図ることができるような労働時間等の設定を行うこと。

 更に、厚生労働省の例のガイドラインでも次のように述べている。


「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(平成29年1月20日策定)
3 労働時間の考え方
 労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間のことをいい、使用者の明示又は黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に当たる。そのため、次のアからウのような時間は、労働時間として扱わなければならないこと。
 ただし、これら以外の時間についても、使用者の指揮命令下に置かれていると評価される時間については労働時間として取り扱うこと。
 なお、労働時間に該当するか否かは、労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんによらず、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものであること。また、客観的に見て使用者の指揮命令下に置かれていると評価されるかどうかは、労働者の行為が使用者から義務づけられ、又はこれを余儀なくされていた等の状況の有無等から、個別具体的に判断されるものであること。
ウ 参加することが業務上義務づけられている研修・教育訓練の受講や、使用者の指示により業務に必要な学習等を行っていた時間
4 労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置
(3)自己申告制により始業・終業時刻の確認及び記録を行う場合の措置
 上記(2)の方法によることなく、自己申告制によりこれを行わざるを得ない場合、使用者は次の措置を講ずること。
エ 自己申告した労働時間を超えて事業場内にいる時間について、その理由等を労働者に報告させる場合には、当該報告が適正に行われているかについて確認すること。
 その際、休憩や自主的な研修、教育訓練、学習等であるため労働時間ではないと報告されていても、実際には、使用者の指示により業務に従事しているなど使用者の指揮命令下に置かれていたと認められる時間については、労働時間として扱わなければならないこと。

 逆読みをすれば、「事業場内で実施されている研修、教育訓練、学習等の時間については、使用者の指示により業務に従事しているなど使用者の指揮命令下に置かれていたとまでは認められない自主的な形態・参加の下において実施されている時間であれば、労働時間には該当しない。」ということになる。

 その点を徹底したものとして、厚生労働省から、医師の研鑽に係る考え方が示された。教員の自己研鑽の時間を考える上でも参考になるので、長いが全文掲載しておく。

「医師の研鑽に係る労働時間に関する考え方について」(令和元年7月1日基発0701第9号都道府県労働局長あて厚生労働省労働基準局長通知)
 医療機関等に勤務する医師(以下「医師」という。)が、診療等その本来業務の傍ら、医師の自らの知識の習得や技能の向上を図るために行う学習、研究等(以下「研鑽」という。)については、労働時間に該当しない場合と労働時間に該当する場合があり得るため、医師の的確な労働時間管理の確保等の観点から、今般、医師の研鑽に係る労働時間該当性に係る判断の基本的な考え方並びに医師の研鑽に係る労働時間該当性の明確化のための手続及び環境整備について、下記のとおり示すので、その運用に遺憾なきを期されたい。
                記
1 所定労働時間内の研鑽の取扱い
 所定労働時間内において、医師が、使用者に指示された勤務場所(院内等)において研鑽を行う場合については、当該研鑽に係る時間は、当然に労働時間となる。
2 所定労働時間外の研鑽の取扱い
 所定労働時間外に行う医師の研鑽は、診療等の本来業務と直接の関連性なく、かつ、業務の遂行を指揮命令する職務上の地位にある者(以下「上司」という。)の明示・黙示の指示によらずに行われる限り、在院して行う場合であっても、一般的に労働時間に該当しない。
 他方、当該研鑽が、上司の明示・黙示の指示により行われるものである場合には、これが所定労働時間外に行われるものであっても、又は診療等の本来業務との直接の関連性なく行われるものであっても、一般的に労働時間に該当するものである 。
 所定労働時間外において医師が行う研鑽については、在院して行われるものであっても、上司の明示・黙示の指示によらずに自発的に行われるものも少なくないと考えられる。このため、その労働時間該当性の判断が、当該研鑽の実態に応じて適切に行われるよう、また、医療機関等における医師の労働時間管理の実務に資する観点から、以下のとおり、研鑽の類型ごとに、その判断の基本的考え方を示すこととする。
(1) 一般診療における新たな知識、技能の習得のための学習
ア 研鑽の具体的内容
 例えば、診療ガイドラインについての勉強、新しい治療法や新薬についての勉強、自らが術者等である手術や処置等についての予習や振り返り、シミュレーターを用いた手技の練習等が考えられる。
イ 研鑽の労働時間該当性
 業務上必須ではない行為を、自由な意思に基づき、所定労働時間外に、自ら申し出て、上司の明示・黙示による指示なく行う時間については、在院して行う場合であっても、一般的に労働時間に該当しないと考えられる。
ただし、診療の準備又は診療に伴う後処理として不可欠なものは、労働時間に該当する。
(2) 博士の学位を取得するための研究及び論文作成や、専門医を取得するための症例研究や論文作成
ア 研鑽の具体的内容
 例えば、学会や外部の勉強会への参加・発表準備、院内勉強会への参加・発表準備、本来業務とは区別された臨床研究に係る診療データの整理・症例報告の作成・論文執筆、大学院の受験勉強、専門医の取得や更新に係る症例報告作成・講習会受講等が考えられる。
イ 研鑽の労働時間該当性
 上司や先輩である医師から論文作成等を奨励されている等の事情があっても、業務上必須ではない行為を、自由な意思に基づき、所定労働時間外に、自ら申し出て、上司の明示・黙示による指示なく行う時間については、在院して行う場合であっても、一般的に労働時間に該当しないと考えられる。
 ただし、研鑽の不実施について就業規則上の制裁等の不利益が課されているため、その実施を余儀なくされている場合や、研鑽が業務上必須である場合、業務上必須でなくとも上司が明示・黙示の指示をして行わせる場合は、当該研鑽が行われる時間については労働時間に該当する。
 上司や先輩である医師から奨励されている等の事情があっても、自由な意思に基づき研鑽が行われていると考えられる例としては、次のようなものが考えられる。
・ 勤務先の医療機関が主催する勉強会であるが、自由参加である
・ 学会等への参加・発表や論文投稿が勤務先の医療機関に割り当てられているが、医師個人への割当はない
・ 研究を本来業務とはしない医師が、院内の臨床データ等を利用し、院内で研究活動を行っているが、当該研究活動は、上司に命じられておらず、自主的に行っている
(3) 手技を向上させるための手術の見学
ア 研鑽の具体的内容
 例えば、手術・処置等の見学の機会の確保や症例経験を蓄積するために、所定労働時間外に、見学(見学の延長上で診療(診療の補助を含む。下記イにおいて同じ。)を行う場合を含む。)を行うこと等が考えられる。
イ 研鑽の労働時間該当性
 上司や先輩である医師から奨励されている等の事情があったとしても、業務上必須ではない見学を、自由な意思に基づき、所定労働時間外に、自ら申し出て、上司の明示・黙示による指示なく行う場合、当該見学やそのための待機時間については、在院して行う場合であっても、一般的に労働時間に該当しないと考えられる。
 ただし、見学中に診療を行った場合については、当該診療を行った時間は、労働時間に該当すると考えられ、また、見学中に診療を行うことが慣習化、常態化している場合については、見学の時間全てが労働時間に該当する。
3 事業場における研鑽の労働時間該当性を明確化するための手続及び環境
の整備
 研鑽の労働時間該当性についての基本的な考え方は、上記1及び2のとおりであるが、各事業場における研鑽の労働時間該当性を明確化するために求められる手続及びその適切な運用を確保するための環境の整備として、次に掲げる事項が有効であると考えられることから、研鑽を行う医師が属する医療機関等に対し、次に掲げる事項に取り組むよう周知すること。
(1) 医師の研鑽の労働時間該当性を明確化するための手続
 医師の研鑽については、業務との関連性、制裁等の不利益の有無、上司の指示の範囲を明確化する手続を講ずること。例えば、医師が労働に該当しない研鑽を行う場合には、医師自らがその旨を上司に申し出ることとし、当該申出を受けた上司は、当該申出をした医師との間において、当該申出のあった研鑽に関し、
・ 本来業務及び本来業務に不可欠な準備・後処理のいずれにも該当しないこと
・ 当該研鑽を行わないことについて制裁等の不利益はないこと
・ 上司として当該研鑽を行うよう指示しておらず、かつ、当該研鑽を開始する時点において本来業務及び本来業務に不可欠な準備・後処理は終了しており、本人はそれらの業務から離れてよいことについて確認を行うことが考えられる。
(2) 医師の研鑽の労働時間該当性を明確化するための環境の整備
 上記(1)の手続について、その適切な運用を確保するため、次の措置を講ずることが望ましいものであること。
ア 労働に該当しない研鑽を行うために在院する医師については、権利として労働から離れることを保障されている必要があるところ、診療体制には含めず、突発的な必要性が生じた場合を除き、診療等の通常業務への従事を指示しないことが求められる。また、労働に該当しない研鑽を行う場合の取扱いとしては、院内に勤務場所とは別に、労働に該当しない研鑽を行う場所を設けること、労働に該当しない研鑽を行う場合には、白衣を着用せずに行うこととすること等により、通常勤務ではないことが外形的に明確に見分けられる措置を講ずることが考えられること。手術・処置の見学等であって、研鑚の性質上、場所や服装が限定されるためにこのような対応が困難な場合は、当該研鑚を行う医師が診療体制に含まれていないことについて明確化しておくこと。
イ 医療機関ごとに、研鑽に対する考え方、労働に該当しない研鑽を行うために所定労働時間外に在院する場合の手続、労働に該当しない研鑽を行う場合には診療体制に含めない等の取扱いを明確化し、書面等に示すこと。
ウ 上記イで書面等に示したことを院内職員に周知すること。周知に際しては、研鑽を行う医師の上司のみではなく、所定労働時間外に研鑽を行うことが考えられる医師本人に対してもその内容を周知し、必要な手続の履行を確保すること。
 また、診療体制に含めない取扱いを担保するため、医師のみではなく、当該医療機関における他の職種も含めて、当該取扱い等を周知すること。
エ 上記(1)手続をとった場合には、医師本人からの申出への確認や当該医師への指示の記録を保存すること。なお、記録の保存期間については、労働基準法(昭和22年法律第49号)第109条において労働関係に関する重要書類を3年間保存することとされていることも参考として定めること。



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477. 私立高で残業代未払い [8.トピック]


 数日前、東京都内の私立高校で教員の残業代を支払っていなかったとして、労働基準監督署が是正勧告を行っていたとの報道があった。

都内私立高で残業代未払い 労基署が是正勧告 - 産経ニュース
2019.7.25 20:31
 東京都文京区の私立京華商業高校で、教員の労働時間を管理せず残業代を支払っていなかったとして、中央労働基準監督署が是正勧告していたことが25日、分かった。元教員が加盟する労働組合「私学教員ユニオン」が東京都内で記者会見し、明らかにした。勧告は12日付。
 ユニオンによると、残業は授業の準備や部活動の指導のためで、休日出勤もあったが残業代は支払われなかった。学校は出欠を確認するだけで労働時間は把握していなかった。労基署が調べたところ、パソコンの利用履歴などから未払いが判明。月平均で残業が約50時間に上った教員もいた。
 ユニオンは「学校側がボランティアと主張していた部活動が労働時間と認定された意義は大きい」と話した。学校側の代理人を務める弁護士は「是正勧告に対し、適正な対処に向け検討を進めている」とした。

 報道によれば、一つは、教員の労働時間を把握していなかったこと、二つは、残業は授業の準備や部活動の指導のためで、残業代を支払っていなかったこと。おそらく、未だに多くの私立学校では残業代を支払っていないのではないかと思われる。これは以前から指摘されていたことだ。

2018年1月に公開された公益社団法人私学経営研究会が取りまとめた「第3回私学教職員の勤務時間管理に関するアンケート調査報告書」によれば、出勤は出勤簿で確認する私立高校が6割を超えるものの、退勤を全く確認していない私立高校は3割を超え、いずれも時刻の記録はないようである。また、法定の時間外勤務手当を支給している私立高校は12%に止まり、公立高校に準じて教職調整額若しくは定額の業務手当又は教職調整額プラス定額の業務手当の支給をしている私立高校は7割を超え、一切残業手当を支給しない私立高校も0.6%存在している。一方、労働基準監督署から指導や是正勧告を受けた私立高校は全国で約2割に止まっており、労働基準監督署が本腰を入れて私立高校の臨検に入ったら、8割以上は是正勧告等を受けることになるのではないか。

 今年も、次のような報道があった。

「勤務時間管理せず」6割 私立校、働き方改革遅れ 教員の残業、把握できず
2019/5/14 9:52
 私立学校教員の働き方改革を巡り、公益社団法人「私学経営研究会」(大阪市)が昨年12月~今年1月、アンケートを実施した結果、回答した181校のうち6割超の115校が「勤務時間管理をしていない」と答えたことが14日、分かった。うち13校は「(時間管理を)する予定はない」としている。
 働き方改革関連法により、罰則付き残業時間の上限規制が大手企業や団体で今年4月に始まった。私立校も企業と同様で、運営する法人が常時使用する労働者が100人超であれば対象だが、労働時間の管理すらせず、残業の状況を把握できていない学校が多い。対応の遅れが鮮明になった。
 アンケートは同研究会のセミナーに参加した学校に実施。181校のうち大学は53校、高校56校、中学校16校などで、幼稚園や専門学校も含む。
 勤務時間管理をしていない115校のうち、「2019年4月から行うことを検討または予定」としたのは37校。65校は「検討課題」とし、13校は「する予定はない」とした。時間管理をしていると答えたのは66校。うち「タイムカードなど客観的な記録」が39校、「自己申告で記入」が27校。
 「働き方改革」への着手の有無については、半数近い88校が「必要性を感じるが着手していない」と回答。3校は「着手の予定はない」とした。
時間外手当(残業代)について尋ねると、実際の残業時間にかかわらず一定時間分を支払う「固定残業代」を支給しているのが83校で最多。50校は「支給しておらず、今後も支給予定はない」。
 残業の上限規制は「月100時間未満(休日労働含む)」「年720時間以内」などと定め、違反には罰則がある。公立校は対象外だが、文部科学省は今年1月、同水準を目安とするガイドラインを定めている。〔共同〕

 労働基準監督署の監督官は人数が少なくて忙しいとの話も聞くが…。

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476. 自己研鑽の時間 [8.トピック]

 先日「474. 教師の勤務時間の上限ガイドライン」で、文部科学省制定の「公立学校の教師の勤務時間の上限に関するガイドライン」を取り上げ、このガイドラインでは「在校等時間」という概念を作り出し、それをガイドラインにおける「勤務時間」とするとしていることを紹介した。
 今回注目したいのは、「具体的には,教師等が校内に在校している在校時間を対象とすることを基本とする。」と述べた後、次のように続ける記述である。

 「なお,所定の勤務時間外に校内において自らの判断に基づいて自らの力量を高めるために行う自己研鑽の時間その他業務外の時間については,自己申告に基づき除くものとする。」

 これに関して、文科省の「公立学校の教師の勤務時間の上限に関するガイドラインの運用に係るQ&A」は次のように解説する。

問9 「在校等時間」から自己申告により除かれる「所定の勤務時間外に校内において自らの判断に基づいて自らの力量を高めるために行う自己研鑽の時間」とは、具体的に何を指すのか。
○ ここでいう「所定の勤務時間外に校内において自らの判断に基づいて自らの力量を高めるために行う自己研鑽の時間」とは、上司からの指示や児童生徒・保護者等からの直接的な要請等によるものではなく、日々の業務とは直接的に関連しない、業務外と整理すべきと考えられる自己研鑽の時間を指しています。
○ 具体的には、例えば、所定の勤務時間外に、教師が幅広くその専門性や教養を高めるために学術書や専門書を読んだり、教科に関する論文を執筆したり、教科指導や生徒指導に係る自主的な研究会に参加したり、自らの資質を高めるために資格試験のための勉強を行ったりする時間のようなものを想定しています。

 この解説では、なぜ自己研鑽の時間を業務外の時間とするのかを積極的に説明していないが、最高裁の判例によれば、「労基法上の労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいう。労基法上の労働時間に該当するか否かは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものであり、労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんにより決定されるべきものではない」とされている。その立場から考えると、「上司からの指示や児童生徒・保護者等からの直接的な要請等によるものではなく」、「自らの判断に基づいて」行う行為である限り、そのような自己研鑽の時間は、「労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価すること」はできず、労基法上の労働時間とは評価できないということになる。

 とりわけ強調しておくと、このQ&Aは、「教科指導や生徒指導に係る自主的な研究会に参加」することも、業務外の自己研鑽の時間と述べている。
 この点に関して、宮地茂監修・文部省初等中等教育局内教員給与研究会編著『教育職員の給与特別措置法解説』(昭和46年、第一法規)における次の記述を思い出す。

 二 昭和四一年の教職員勤務状況調査
 一で述べた経緯により、昭和四一年四月三日から昭和四二年4月1日までの一年間にわたり、教職員の勤務状況の調査が行われた。この調査は、教職員の勤務状況を、条例・規則等の規定に基づいて割り振られた毎日の勤務開始時刻から勤務終了時刻までのいわゆる服務時間内に仕事をした状況と、校長の超過勤務命令のいかんにかかわらず、服務時間外に仕事をした状況とを調査したものである。このうち、本調査の主目的である服務時間外の勤務状況は次に述べる方法によって調査している。
(1) 服務時間外の勤務でも学校敷地内における勤務は、原則として調査対象としたが、自主研修、付随関連活動(関係団体活動等)および宿日直勤務については調査対象としなかった。
(2) 服務時間外の学校敷地外における勤務のうち、修学旅行、遠足、林間・臨海学校、対外試合引率、命令研修、事務出張にかかるものについては調査対象とし、次の方法で時間計算した。
(略)
 この調査の調査対象校数と、調査の結果は、二四、二五頁の表のとおりであった。(23~26頁)
※ 調査の結果の表によれば、1人当たり週平均で、自主研修の時間は、小学校30分、中学校34分、付随関連活動(関係団体活動、社会教育関係活動)は、小学校31分、中学校28分
※ 「関係団体活動」については、「PTA活動(事務を含む),校長会・教頭会・教科連絡協議会等のメンバーとしての活動」を事例としている。(262頁)

 (2) 教職調整額を四%とした根拠
① 教職調整額が四%とされたのは、人事院の意見申出にあるとおりの率とされたからであるが、人事院の意見において四%とされたのは、文部省が昭和四一年度に行った教員の勤務状況調査の結果による超過勤務手当相当分の俸給に対する比率約四%という数字を尊重したからである。
② 文部省調査結果の四%の率は、次のような計算によって算定されたものである。
ア 八月を除く一一ヵ月の平均週当たり超過勤務時間は次のとおりである。
 小学校 二時間三六分
 中学校 四時間三分
イ 右の時間から、次のような時間を差引きまたは相殺減する。
(ア) 服務時間外に報酬を受けて補習を行っていた時間を差引く。
(イ) 服務時間外まで勤務する業務がある一方において、服務時間内において社会教育関係団体等の学校関係団体の仕事に従事した時間等があるが、今後においては、個々の教員についての校務分掌および勤務時間の適正な割り振りを行なう野措置により、各教員の勤務の均衡を図る必要がある。右の調査結果は、教員自身の申告に基づくものであるが、これを、職務の緊急性を考慮し、超過勤務命令をかけるという観点から見直してみ、これら社会教育関係活動等の服務時間内の勤務時間は、服務時間外の勤務時間から相殺減することとした。
ウ 右の結果、次の時間が今後における一週平均の服務時間外勤務時間数と想定することができる。
 小学校 一時間二○分
 中学校 二時間三○分
 平 均 一時間四八分
エ 以上の結果に基づく一週平均の超過勤務時間が年四四週(年間五二週から、夏休み四週、年末年始二週、学年末始二週を除外)にわたって行われた場合の超過勤務手当に要する金額が、超過勤務手当算定の基礎となる給与に対し、約四%に相当したものである。(110~112頁)

 以上長々と引用したが、詰まるところ、教職調整額4%の基礎には、自主研修の時間や学校関係団体活動の時間は含まれていない。つまり、文科省は、今も昔も「教科指導や生徒指導に係る自主的な研究会に参加」することは、業務外すなわち職務ではないと整理してきたということだ。


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475. 自治総合センター31年3月報告書 [8.トピック]

 平成31年3月に取りまとめられた一般財団法人自治総合センター「地方公務員の給与決定に関する調査研究会報告書」に目を通した。地方公務員のラスパイレス指数が漸増傾向にあり、その要因分析が喫緊の課題となっていることから、今回は、「わたり」、「昇格メリット」等をテーマに調査研究したということらしい。

 「わたり」について見ると、その定義を「一義的には「給与決定に際し、等級別基準職務表に適合しない級へ格付けを行うもの」である。一方で、等級別基準職務表に反しない場合であっても、実質的に「わたり」と同一の結果となる等級別基準職務表又は給料表などについても、「わたり」とみなして是正を助言してきた経緯がある」ことを紹介しつつ、「実質わたり」要件の課題を上げた後、A県市町村担当課の意見や課題に対する委員の意見を掲載し、まとめの記述をしている。
 独自構造の給料表を適用している場合の比較点検が困難なことなどに触れつつ、「実質わたり」を含めた「わたり」の是正に向けた点検を行うために、総務省において、各地方公共団体の給料表カーブの公表と地方公共団体の職の格付けの比較方法の探求を検討するよう求めている。

 確かにこの手法によれば、一定比較可能になるだろうと思われる。しかし、「わたり」の是正の観点からすれば、突っ込み方が浅いのではないかと思う。そもそも国の行政職俸給表(一)自体を職務給の原則と言いつつ、フラット化が進みつつあるものの年功的な俸給表構造としてきたことや、標準職務表の規定も「わたり」を許容しかねないものであることについての省察がない。標準職務表の規定の仕方では、「職名等級制」と呼ばれる旧教育職俸給表(二)(三)と比べると、大きく異なっている。

 脱線するが、佐藤三樹太郎『教職員の給与』(学陽書房)から引用しておく。
31 等級の“わたり”を認められないか
 わたりとは 等級の“わたり”とは、正規の昇格要件を伴わずに等級を昇格させることを指している用語と解されるが、教育職俸給表が職名等級制であり、また学校内部の教員組織と密接に関連する問題でもあり、昇格要件が伴わないで等級のみ昇格することは適当でない。…
教諭が教頭に昇任し、昇格の要件を満たせば当然一等級に昇格するし、実習助手が実習教諭に昇格すれば当然二等級に昇格するが、この場合の“わたり”とは、そのような職務上の昇格要件を伴わなくても等級を昇格させるという意味に使われている。…
 一般行政職員の昇格 一般行政職員については、…しかし、一般的には、一定資格を有する一般事務職員が数年経験すれば係長またはこれに相当する職務に充てられ、さらに何年かすれば課長補佐またはこれに相当する職務に充てられる場合が多いことから、一般行政職員の多くは順調に等級の昇格が行われ、あたかも等級の昇格が先行して、職務がこれについてゆくかのように見え、これが“わたり”式に昇格するとみられるようである。…
 教職員の場合は、教諭の免許状を取得しなければ教諭に昇任させることができないし、また校長に必要な資格要件が満たされなければ校長に昇任させることはできない。このため職務上の昇任がなければ等級の昇格はありえない。…(113~115頁)

 教育職では昇任しなければ昇格はないのだが、行政職の場合には適切に運用するとしても昇任しなくても昇格する場合がある。ここに「わたり」を生み出す構造的な原因がある。だから、級別定数を設定したのではなかったのか。
 級別定数の設定は、職務給の原則を定数面の規制を通じて確保しようとするものとされている。この級別定数の設定は、少なくとも、「形式的わたり」の防止には役立つと考えられるのだが、なぜか今回の調査研究の対象とはなっていない。

 いずれにしても、「わたり」の点検には難しさを伴う。とりわけ独自構造の給料表を採用している団体の場合には、困難さが増すだろう。しかし、そのことを翻して考えてみると、国の俸給表構造を所与のものとして、どの団体にも適用すべきものとの前提に立っていることの裏返しではないのかと思う。民間企業の場合、それぞれの企業にふさわしい給与制度を構築するため、同じ給料表が用いられている訳ではない。そうしてみると、地方公共団体であっても、それぞれの団体規模や組織の在り方によって、異なる給料表が作成されたとしても本来的には当然のことではないか。であるならば、給料表の違いや「わたり」の有無などにかかわらず分析できる手法を研究したらどうか、とも思う。

 新規採用者以外は、原則、内部市場から人材を調達しながら、長期にわたり人材を育成していく人事管理を前提とした場合、幹部職員については、職務給の原則を徹底して「わたり」を認めない運用をしたとしても、スタッフ職員については、今なお、ある程度年功的な運用をした方が職員のモチベーションを維持し、能力を発揮させるためには良いという考え方があっても良いのではないか、と思う。また、年齢構成が国とは大きく異なり、団体ごとにも相違があることから、昇格運用の実態が異なっても仕方がない側面もあるのではないか。国においてもそおうした状況も想定して、級別定数の運用に一定の弾力性を持たせている。そう考えると、ラスパイレス指数を問題にするのであれば、「わたり」など個別の問題に着目するのではなく、給料表の構造等にかかわらない、もっと汎用性をもった分析の方法が確立できないのだろうか、とも思う。

 その際、「職務給の原則」を外すことはできない。とはいえ、職階制が廃止され、職務分析が実施されていない下で、本来的な意味合いで「職の格付けの比較方法」を確立することなど望むべくもないのではないか。そうすると、ここは割り切って、妥協するしかない。その方がすっきりする。人事院の民間給与実態調査では、官民比較における職種の対応関係を明確にして実施しているが、同じように国公比較における職の対応関係を明確化した上で、給料表の構造にかかわりなく給与水準を比較してはどうだろうか。そして、「わたり」かどうかは、その団体の給料表に基づいて判断すれば良いのではないか。給与制度の実際は、給料表の構造と実際の運用とを見なければ、良いとも悪いとも言えないのではないか。級を統合することが良いのか悪いのか、その団体の組織の在り方を見なければ分からないではないか。少々「実質わたり」に見えたとしても、それが職員の士気を高め、パフォーマンスを高めることになっているのか、課長や係長を目指す人材を減少させ、組織の維持に支障を生じさせているのか、一概には言えないのではないか…。

 などなど、色々なことが頭の中をよぎる。いずれにしても、報告書の読後感は、“物足りない”又は“消化不良”である。



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474. 教師の勤務時間の上限ガイドライン [8.トピック]

 平成31年1月25日、文部科学省が「公立学校の教師の勤務時間の上限に関するガイドライン」を制定し、服務監督権者である教育委員会に対し、所管の公立学校に勤務する教育職員についての方針等を策定するよう求めている。先月23日には、東京都教育委員会が都立学校の教育職員についての方針を策定・公表したが、今後、その他の道府県でもそれぞれ策定することになるのだろう。

 ところで、このガイドラインでは「在校等時間」という概念を作り出し、それをガイドラインにおける「勤務時間」とするとしている。抜粋する。

「3-(1)本ガイドラインにおいて対象となる「勤務時間」の考え方
 教師は,社会の変化に伴い子供たちがますます多様化する中で,語彙,知識,概念がそれぞれに異なる一人一人の子供たちの発達の段階に応じて,指導の内容を理解させ,考えさせ,表現させるために,言語や指導方法をその場面ごとに選択しながら,学習意欲を高める授業や適切なコミュニケーションをとって教育活動に当たることが期待されている。このような教師の専門職としての専門性や職務の特徴を十分に考慮しつつ,「超勤4項目」以外の業務が長時間化している実態も踏まえ,こうした業務を行う時間も含めて「勤務時間」を適切に把握するために,今回のガイドラインにおいては,在校時間等,外形的に把握することができる時間を対象とする。
 具体的には,教師等が校内に在校している在校時間を対象とすることを基本とする。なお,所定の勤務時間外に校内において自らの判断に基づいて自らの力量を高めるために行う自己研鑽の時間その他業務外の時間については,自己申告に基づき除くものとする。
 これに加えて,校外での勤務についても,職務として行う研修への参加や児童生徒等の引率等の職務に従事している時間については,時間外勤務命令に基づくもの以外も含めて外形的に把握し,対象として合算する。また,各地方公共団体で定める方法によるテレワーク等によるものについても合算する。
 ただし,これらの時間からは,休憩時間を除くものとする。
 これらを総称して「在校等時間」とし,本ガイドラインにおいて対象となる「勤務時間」とする。」

 この「在校等時間」について、文科省のQ&A(「公立学校の教師の勤務時間の上限に関するガイドラインの運用に係るQ&A」(平成31年3月29日))は次のように解説する。

「問2 「勤務時間」の概念について、本ガイドライン上の「勤務時間」すなわち「在校等時間」は、労働基準法上の「労働時間」とは異なるのか。
○ 「勤務時間」という言葉の意味は、使用する文脈によって、「働いた時間」を一般的に指している場合や、「始業時間から終業時間までの所定の時間」を指している場合、特定の法令上の「勤務時間」を指している場合など様々な場合が考えられますので、その定義をしっかりと確認する必要があります。
○ 地方公務員法上の「勤務時間」は、基本的には労働基準法上の「労働時間」と同義であると考えられますが、厚生労働省が作成した「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」によれば、労働基準法における「労働時間」とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間とされています。
このことから、教師に関しては、校務であったとしても、使用者からの指示に基づかず、所定の勤務時間外にいわゆる「超勤4項目」に該当するもの以外の業務を教師の自発的な判断により行った時間は、労働基準法上の「労働時間」には含まれないものと考えられます。
○ 一方、本ガイドラインにおける「勤務時間」の考え方は、「超勤4項目」以外の業務が長時間化している実態も踏まえ、「超勤4項目」に該当するものとして超過勤務を命じられた業務以外も含めて、教師が校内に在校している時間及び校外での勤務の時間を外形的に把握した上で合算し、そこから休憩時間及び業務外の時間を除いたものを「在校等時間」とした上で、上限の目安を導入しようとするものであり、労働基準法上の「労働時間」とは異なるものです。」

 この記述を読んで真っ先に浮かんだのは、次の国会答弁である。

153-参-文教科学委員会-2号 平成13年10月30日【抜粋】
○畑野君枝君 (略)
 私は、ことしの五月にこの問題、教職員の長時間過密労働について取り上げて質問をいたしました。その点について再度伺いたいわけでございます。
 四月の六日に厚生労働省から出されました、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準について」の通達につきましては、その委員会の中で、総務省からは、四月二十七日に通知を行って、教育委員会も対象になると答弁されました。また、文部科学省からは、厚生労働省の基準は私立学校の教職員には当然適用され、公立学校教職員にも基本的には適用されると答弁をされております。
 そこで伺いたいのですが、一つは、総務省のおっしゃった教育委員会も対象になるという点につきまして具体的に伺いたいと思います。あわせて、文部科学省からは、公立学校教職員にも基本的には適用される、この具体的な中身について伺いたいと思います。
○政府参考人(板倉敏和君) 総務省といたしましては、地方公務員には原則として労働基準法の適用があることから、従来より労働基準法に関しまして各地方公共団体に必要な情報提供を行ってまいっております。
 厚生労働省が定めた基準は労働時間を適正に把握するためのものでございまして、その点につきましては公立学校の教職員も基本的に対象となるものでございます。したがいまして、教育委員会も対象となる旨お答えをしたところでございます。
○政府参考人(矢野重典君) 私の方からは、地方教育公務員についてのお答えを申し上げたいと思います。
 地方公務員にもこれは適用されるわけでございますので、当然のことながら公立学校の教職員にも基本的に適用になるわけでございまして、具体的には、この基準の項目のうち、一般的に申し上げますと、少し細かい話で恐縮でございますけれども、始業・終業時刻の確認及び記録についての項目でございますとか、またその確認、記録の原則的な方法についての項目、さらには労働時間の記録に関する書類の保存に関する項目、また労働時間を管理する者の職務に関する項目、こうした項目が適用になるものと考えているところでございます。
○畑野君枝君 そうしますと、総務省に伺いたい、確認したい点ですけれども、教育委員会も対象になるということは当然学校にも周知徹底されるということになるわけですか。
○政府参考人(板倉敏和君) そのように考えております。
○畑野君枝君 次に、文部科学省に御確認なんですが、労働時間の適正な把握の問題につきましては、当然、始業・終業時刻の確認及び記録と言われました。
 そこで、始業・終業時刻なんですけれども、これは、例えば命令のない超過勤務というのも始業・終業時刻の確認及び記録というのに入りますか。
○政府参考人(矢野重典君) 個々のケースでその判断が難しい場合もあろうかと思いますが、一般的には命令のない勤務につきましても始業時刻に入るものと思っております。
○畑野君枝君 そうしますと、命令のある超過勤務ですとか部活動などについてもこれは当然入るということでよろしいですか。
○政府参考人(矢野重典君) そのとおりでございます。

 政府参考人である当時の初中局長は、「厚生労働省が定めた基準は労働時間を適正に把握するためのもので、公立学校の教職員も基本的に対象となる」という趣旨の答弁をしている。
 続いて、「命令のない超過勤務も始業・終業時刻の確認及び記録に入るか」との質問に対して、緒中局長は、「一般的には命令のない勤務についても始業時刻に入る」と答弁し、更に「命令のある超過勤務とか部活動などもこれは当然入る」との突っ込みに対して、初中局長は「そのとおりでございます。」と述べるのである。
 このやりとりの入り口は、「労働時間」、どう考えても労基法上の「労働時間」の話であり、その流れで、「部活動指導も含めた超勤4項目以外の業務への従事時間も当然入る」との趣旨の答弁をしている。直接的には、「始業・終業時刻の確認及び記録に入る」ということなのだけれども、それはイコール「労働時間に入る」と理解するのが素直な読み方だと思って来た。
 部活動指導業務は、命じて行わせることはできないけれども、学校が責任を取る体制の下に実際に従事した場合には、「勤務した」と評価されるのだ。だからこそ、部活動指導業務に従事した場合には、著しく特殊な「勤務」に従事する職員に支給される特殊勤務手当が支給されるのだ、と理解してきたものだった。部活動指導はボランティアなんかではないのだと。
 ところがである。今回の文科省のQ&Aの記述には驚いた。「使用者からの指示に基づかず、所定の勤務時間外にいわゆる「超勤4項目」に該当するもの以外の業務を教師の自発的な判断により行った時間は、労働基準法上の「労働時間」には含まれないもの」と言い切っているのだ。
 どう考えたらよいのか…。
 文科省だって、自分勝手な解釈ではなく、おそらく厚労省とすりあわせをして記述しているのだろうと思う。Q&Aの答えに基づいて考えるしかないとすれば、時間外の部活動指導業務の従事時間は労基法上の「労働時間」には含まれないけれども、それは「勤務」に従事したのだと理解しなければならない。そうしないと手当は支給できない。当該業務への従事は「勤務」なのだけれども、「勤務」なのだから業務も含めて「労働時間を適正に把握するための始業・終業時刻の確認の対象に入る」けれども、「労働時間=勤務時間」には含めない、という。う~む。


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473. 中教審働き方改革答申=給特法の今後の在り方 [8.トピック]

 1月25日、中教審答申「新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について」が取りまとめられた。
 この答申は、「給特法の今後の在り方について」も述べている。教員の勤務時間制度の面から記述しているのであるが、その中で、給与処遇の観点からの意見もあったことを紹介している。

○ 給特法に定める諸制度については,一部の委員からは,給特法の下での教師の勤務時間管理に関する実態や問題意識がある中で,労働基準法に定められた時間外勤務に関する36 協定や労働時間の上限規制,割増賃金などの規定が,適切な時間管理を通じて勤務の縮減を図るという蓋然的な意義を有することからして,給特法を見直した上で,36 協定の締結や超勤4 項目以外の「自発的勤務」も含む労働時間の上限設定,すべての校内勤務に対する時間外勤務手当などの支払を原則とすることから働き方改革の議論を始めるべきとの認識が示された。
 この意見に対しては,教師の職務の本質を踏まえると,教育の成果は必ずしも勤務時間の長さのみに基づくものではないのではないか,また,給特法だけではなく,学校教育の水準の維持向上のための義務教育諸学校の教育職員の人材確保に関する特別措置法(以下「人確法」という。)によっても形作られている教師の給与制度も考慮した場合,必ずしも教師の処遇改善につながらないのではないかとの懸念が示された。

 ざっくり言えば、「時間外勤務手当を支払う制度にすべき」との一部の委員の意見に対して、「給特法だけではなく、人確法によっても形作られている教師の給与制度を考慮した場合、必ずしも教師の処遇改善につながらない」との懸念が示された、というのである。

 一部の委員の意見というのは、おそらく、10月15日の働き方改革特別部会第18回における相原委員(連合事務局長)の次の意見を踏まえた記述と思われる。

【相原委員】  ありがとうございます。大きく3点申し上げたいと思います。
 1点目は、公立学校の教員について、労基法37条を適用して、ICT、タイムカードによる客観的な勤務管理を徹底し、36協定を締結して時間外労働に対する割増賃金も支払うこと、これを原則として、議論のベースに置くべきではないかと思っています。
 論拠は2点あります。1点は、働き方改革関連法案には47の附帯決議が付きましたが、その11に教員の働き方についても言及がなされています。ICTやタイムカード、勤務時間の客観的な把握を行いなさいということが1つ。それと、学校における36協定の締結届出、時間外労働の上限規制は法令遵守の徹底を図ると明記されたことが1つです。給特法の関係についても、既に国立大学や私立の小中学校の教員には給特法は適用されておらず、労働基準法が適用されています。したがって、給特法を維持する観点からすると、職務と勤務対応の特殊性があるということは裏付けになりにくいということを申し上げたいと思います。

 後半の「給特法だけではなく、人確法によっても形作られている教師の給与制度を考慮した場合、必ずしも教師の処遇改善につながらない」との懸念については、現時点で公開されている議事録を見ても、誰が、どのように示したのか、よく分からなかった。

 時間外勤務手当制度に移行すれば、単純に考えれば給与支給額が増えるのだから、その意味で処遇改善になると考えるのが普通ではないのかと思うのだが、そうではないようである。そうすると、「給特法だけではなく、人確法によっても形作られている教師の給与制度を考慮した場合…」をどう理解すれば良いのか。

 給特法に基づく教職調整額は、超過勤務手当の一律支給という性格の給与ではなく、教育職員の勤務態様の特殊性に基づいて勤務時間の内外を問わず、包括的に評価して支給される俸給相当の性格を有する給与というべきである」(宮地茂監修『教育職員の給与特別措置法解説』(第一法規、昭和46年))と理解されている。そして、それは、「教育というものは教員の創意と自発性というものにまつところが多い」という考え方(当時の佐藤人事院総裁国会答弁)をベースとしている。更に、給特法制定を巡る国会論戦においては、それが教員の処遇改善に繋がるものとの意見が表明されていたのではなかったかと思う。

 この給特法の考え方は、「学校教育が次代をになう青少年の人間形成の基本をなすものであることにかんがみ、義務教育諸学校の教育職員の給与について特別の措置を定めることにより、すぐれた人材を確保し、もつて学校教育の水準の維持向上に資することを目的とする」と高らかに謳う「人確法」(学校教育の水準の維持向上のための義務教育諸学校の教育職員の人材確保に関する特別措置法)の発想に相通ずるところがあるように思う。

 こう考えてくると、歴とした田中角栄内閣時代の閣法である人確法を「議員立法」などとミスリードする財務省的発想からすれば、「時間外勤務手当を支給しろというのなら、教職調整額を支給しないのは当然として、それだけでなく、人確法に基づいて1ランク引き上げられた給与の格付けを人確法制定以前に戻せ。そうでないと筋が通らない…。」と言い出しかねないのではないかと思われる。そうとでも理解しないと、「必ずしも教師の処遇改善につながらないとの懸念」がまったく理解できない。

 さて、どのように読み解くべきなのか…。


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471. 平成30年勧告による俸給表の改定(2) [8.トピック]

 今年の人事院勧告による俸給表の改定について、細かく見ていくと、本来は400円の改定と考えられる号俸の改定額が500円となっている箇所がいくつかある。

 例えば、行政(一)で見ると、2級の77号俸、93号俸、94号俸などである。これらの号俸の前後を含めて抜粋する。

<本来400円改定を500円改定としている箇所>
 号俸   現 行   改定後  改定額(改定率)
 76号俸 289,200円 289,600円 400円(0.1)
 77号俸 289,300円 289,800円 500円(0.2)
 78号俸 289,700円 290,100円 400円(0.1)

 92号俸 294,100円 294,500円 400円(0.1)
 93号俸 294,100円 294,700円 500円(0.2)
 94号俸 294,400円 294,900円 500円(0.2)
 95号俸 294,800円 295,200円 400円(0.1)

 行政(一)以外の俸給表においても、本来400円改定とすべきところ、500円改定としている箇所がある。
 これらを点検していくと、どうも間差額が100円となっている号俸の次の号俸の改定額について+100円し、間差額が最低でも200円となるように調整したのだと思われる。

 元々、間差額が100円の号俸は、基幹号俸単位での間差額、つまり標準で昇給しても昇給額が1,000円台前半となる当たりで過去の改定経緯から生じてしまっていたものだと思うが、今回、思い切って整理したのであろう。

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