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398.臨時・非常勤教員(その10) [46.臨時・非常勤教員]

 このノートは教員給与がテーマであり、非常勤講師を取り上げるなら、その報酬について考察すべきなのだが、その前に、どうしても非常勤講師の身分というか、任用関係の本質というものを理解しなければならない気がしている。
 次のような行政実例がある。

○公立学校の非常勤講師は一般職か特別職か
(昭三二・八・二六 自丁公発第一○二号 自治庁公務員課長回答)
照会
 公立学校に勤務する非常勤講師は、地方公務員法上、一般職に属するか、特別職に属するか
回答
 非常勤講師は、地方公務員法第三条第三項第三号に該当し、特別職に属するものであるが、本来一般職であるべき職員が非常勤講師として発令されている例もあるように見受けられるので、いわゆる非常勤講師と称されている職員が特別職に属するか一般職に属するかは、その者の勤務の実態により判断するべきものと解される。


 前回紹介した『学校経営ハンドブック』では、「非常勤講師は特別職に属する」と明快に述べるのだが、前記の公務員課長通知を読む限り、そう単純に割り切ることはできないようにも思われる。典型的な非常勤講師、本来的な勤務実態の非常勤講師は特別職に属するものだけれども、非常勤講師と称されている職員のうち、その勤務の実態を踏まえると、一般職に属すると言わなければならないものもいるよと述べているのだが、この通知をどのように理解したら良いのだろうか。「非常勤講師には、特別職に属するものと一般職に属するものが存在する」と理解すべきなのか、「非常勤講師は特別職に属するものなのだから、一般職に属する職員のような勤務形態を採用するのはダメだぞ」、「一般職に属する職員のような勤務形態の非常勤講師は本来的な在り方ではないから、非常勤講師と称してはいけないよ」と言っているのだろうか。後者については、いくらなんでも言い過ぎだろうから、前者のように純粋に理解してもよいような気がするのだが…。公務員課長通知で具体例を示して説明してくれればよかったのだが、どのような勤務の実態を前提に述べているのか、残念ながら分からない。
こんな行政実例もある。

○非常勤講師はなぜ特別職といえるか
(昭三五・七・二八 自治丁公発第九号 自治省公務員課長回答)
照会
一 地方公務員法第三条第三項第三号に規定する職を特別職として地方公務員法の適用を排除したのは、これらの職のいかなる点が、地方公務員法を適用するのに不適当であると考えられるのか。
二 非常勤講師は、地方公務員法第三条第三項第三号に該当するという行政実例の解釈理由について
 イ 非常勤であるだけでは同号に該当しないことは明らかであるから、講師は同号中の「これらの者に準ずる者の職」に含まれると解すると思われるが、「準ずる」とは顧問、参与、調査員、嘱託員のうち、いずれに準ずると解するか、或いはそれらのすべてに準ずると解するのか。
 ロ~二 (略)
回答
一 地方公務員法第三条第三項第三号に掲げる職員の職は、恒久的でない職または常時勤務することを必要としない職であり、かつ、職業的公務員の職でない点において一般職に属する職と異なるものと解せられる。
二イ 非常勤講師は地方公務員法第三条第三項第三号の嘱託員に該当するものである。
 ロ~二 (略)

 この行政実例は、おそらく次の判例を意識したものと思われる。

○週三日、各四時間勤務の県立高校非常勤講師は、地方公務員法にいう特別職職員にあたるか
 (福井地方 昭三四・三・一一判決)
要旨
 県立高等学校のいわゆる非常勤講師として週の火、水、土曜日に各四時間勤務し、手当月額四千円の支給を受けている地方公務員の職は、地方公務員法第三条第三項第三号にいう非常勤の嘱託員およびこれに準ずる者の職に該当し、特別職に属するものと解すべきである。

 この裁判における判断の基礎となった非常勤講師は、週当たり12時間の勤務ということになるので、「常時勤務することを必要としない職であり、かつ、職業的公務員の職でない」職であるということになろう。そして、そのような性格の職であって、かつ、非常勤の嘱託員及びこれに準ずる者の職に該当するのだから、特別職に属するのだというのである。

 ところで、「非常勤講師は、非常勤の嘱託員及びこれに準ずる者の職に該当する」というのだが、この「嘱託員」とはいったいどのような職なのだろうか。とある国語辞典によれば、嘱託とは「①たのむこと。まかせること。②ある業務を臨時に委託された人」とある。有斐閣の『法律用語辞典』を開くと、嘱託とは、「①一定の行為をすることを他人に依頼すること。(略)公の機関が他の期間等に一定の行為を依頼するときに多く用いられる。嘱託登記(略)等がその例。②公の機関が、正式に職員に任命しないで、ある人に一定の業務に携わることを依頼したとき、その人の地位を「嘱託」又は「嘱託員」という。(略)」ある。嘱託に類似する「委嘱」の項を見ると、「①一定の事実行為又は事務を他人に依頼すること。「委託」とほぼ同じ。(略)②行政機関に置かれる審議会等の委員等に、当該行政機関以外の行政機関の職員、民間の学識経験者等を任命する場合に用いる。法令上は、この用例が一般。(略)」と説明されている。『法律用語辞典』は「正式に職員に任命しないで」とあるけれども、嘱託「員」となる場合には、やはり任命行為があると理解するのが普通だろうとは思うが…。
 前記の文章から「非常勤」を取り去ると、「講師は、嘱託員及びこれに準ずる者の職に該当する」ということになる。しかし、「常勤の嘱託員」というものはしっくりこない。どう考えても、少なくとも職業公務員ではない非常勤の職を想定していると思われる。

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397.臨時・非常勤教員(その9) [46.臨時・非常勤教員]

 今回からは、非常勤講師について考えていきたい。
 まず、手始めに文部科学省教職研究会編『全訂新版 学校経営ハンドブック(教職研修総合特集 教職ハンドブック4)』(教育開発研究所、平成2年)によって、非常勤講師の身分についての解説を見ておく。

 3-6 非常勤講師の身分
要点
1 公立学校に勤務する非常勤講師は、地方公務員法第三条第三項第三号の「非常勤嘱託員に準ずる」の職に該当し、特別職に属する地方公務員である。
2 非常勤講師の勤務条件や服務取扱いについては、地方公務員法の適用はない(地公法第四条)
解説
 非常勤講師の任用
 非常勤講師の任用に関しては、地公法上に規定はなく、各地方公共団体の条例・規則により定めることとなる。地方公共団体は、あらかじめ、非常勤講師の待遇等に関する事項を条例・規則・事務執行規程等で定め、任用しようとする際にこれを明示し、周知しておかなければならない(労働基準法第一五条第一項)
 非常勤講師の任用期間は、労働基準法第一四条との関連で、第一回の任用は一年以内(編注=現行は3年以内。2003年改正)で行われなければならない。
(略)
 非常勤講師の勤務条件
 ①労働の対価 特別職の非常勤講師には報酬が支給され(地方自治法第二○三条第一項)、職務を行うために要する経費の弁償を受けることができる(同条第三項)。
(以下、略)


 この『ハンドブック』では、約めて言えば「非常勤講師は、特別職に属する地方公務員であって、労働の対価として報酬が支給される」と述べている。
 しかし、非常勤講師はすべて特別職なのだろうか。また、「労働の対価」と述べているけれども、そもそも労働者に当たるのだろうか…。考えれば考えるほど、悩みは深まるばかりなのである。よく分からないけれども、白黒付けないといけないので、とりあえず割り切って、「非常勤講師は特別職で、報酬は労働の対価として取り扱おう」というのなら分かるのだが、厳密に考えれば考えるほど、非常勤講師の任用形態は不思議だ。

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396.臨時・非常勤教員(その8) [46.臨時・非常勤教員]

 この間、常勤講師について考えてきた。
 後先になった感じはあるが、文部科学省所管の法律を確認していなかった。

 まず、思い浮かぶのは、市町村立学校職員給与負担法(昭和23年法律第135号)の規定である。第1条と第2条だけの短い法律なのだが、給与を都道府県の負担とする教職員のうち、講師については、「講師(常勤の者及び地方公務員法第二十八条の五第一項に規定する短時間勤務の職を占める者に限る。)」と規定している。一方、報酬を都道府県の負担とする教職員のうち、講師については、「講師(義務教育諸学校標準法第十七条第二項に規定する非常勤の講師に限る。)」及び「講師(高等学校標準法第二十三条第二項に規定する非常勤の講師に限る。)」と規定している。

 この規定は、給与の支給及び報酬の支給との関係で定義づけていることから、明らかに自治法を意識したものだと理解してよいだろう。
 自治法204条では「常勤の職員及び短時間勤務職員に対し、給料及び旅費を支給しなければならない」こと、同法203条の2では「非常勤の職員(短時間勤務職員を除く。)に対し、報酬を支給しなければならない」ことが定められている。 いわゆる常勤講師については、これまで見てきたとおり、給料表が適用される職と位置づけられており、給料及び手当が支給されていることから、自治法上の「常勤の職員」と理解されていることになる。

 公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律(昭和33年法律第116号)及び公立高等学校の適正配置及び教職員定数の標準等に関する法律(昭和36年法律第188号)のそれぞれにおける「教職員」の定義にも、「常勤の者に限る。」との限定が付されているのだが、これらの法律における「常勤」、「非常勤」の区分も市町村立学校職員給与負担法における用語の区分と同じと考えてよいだろう。

 以上、公立学校の常勤講師について考察してきたが、その「常勤」・「非常勤」の捉え方にかかわってまとめてみると、次のようになる。
 ①  給与制度  常勤の職員。ただし、旧教育職俸給表(三)1級の号俸構成は臨時の職に適用されることを想定して俸給制度上の最高号俸の位置が2級以上よりも低く設計されていると考えられる。
 ② 共済組合  常時勤務に服することを要しない地方公務員(非常勤の職員)
 ③ 公務災害  例外的に「常勤の職員」扱いとされる。


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395.臨時・非常勤教員(その7) [46.臨時・非常勤教員]

 前回、臨時的任用の期間が12月を超えて共済組合に加入するという事態になったらどうなるのか考えてみたのだが、そもそも臨時的任用という任用方法でもって年度を超えるような事態に至るのは望ましくないだろうし、制度設計上も限界があるだろうから、本来は根本的な解決策を見いだすべきだろう。この問題はこのノートの守備範囲を大きく超える内容になるし、指摘だけに止めておく。

 さて、常勤講師の身分取扱いを別の面で複雑にしているものがある。それは、公務災害における常勤講師の取扱いなのだが、公立学校における常勤講師などの沿革的経緯を踏まえて、他の職種にはない特殊なものとなっている。
 まず、地方公務員災害補償法の適用される職員の定義を確認しておく。

<地方公務員災害補償法>
(定義)
第二条 この法律で「職員」とは、次に掲げる者をいう。
一 常時勤務に服することを要する地方公務員(常時勤務に服することを要しない地方公務員のうちその勤務形態が常時勤務に服することを要する地方公務員に準ずる者で政令で定めるものを含む。)
二 (略)

 前に取り上げた地方公務員等共済組合法第2条の規定とほとんど同じ書きぶりであり、条文だけを読むと、政令で定めるもの、すなわち常勤的非常勤職員に該当しない限り、常勤講師には地方公務員災害補償法は適用されないのではないか、と思ってしまう。ところがどっこい、そんなに事は単純ではない。常勤講師には例外的に同法を適用する扱いになっているのである。
 その辺りの事情について、地方公務員災害補償基金が発行している『月刊 災害補償』の2000年・12月号にレポートが掲載されている。『地方公務員災害補償制度・実務講座② 地方公務員災害補償法の適用対象職員の範囲』である。少々長くなるが、該当箇所を引用する。

(2) 例外的な取扱い
 臨時的に任用された職員は、原則として常勤の職員には該当しないものとして取り扱われているが、義務教育学校等の教職員については例外的な取扱いがなされており、次に掲げる場合には臨時的任用であっても「常勤の一般職の職員」として取り扱うこととされている。
① 女子教職員の出産に再指定の補助教職員の確保に関する法律(以下「産休法」という。)第3条第1項(同条第3項において準用する場合を含む。)の規定に基づき臨時的に任用された教職員(校長(園長を含む。)、教頭、教諭、養護教諭、助教諭、養護助教諭、講師(常勤に限る。)、実習助手、寮母、学校栄養職員及び事務職員)
② 年度の中途で教職員の欠員が生じたとき又は教職員が結核性疾患その他の傷病により比較的長期にわたる休暇を受け若しくは休職にされたときに、当該学校の教職員の職務を補助させるため地公法第22条第2項の規定により任用された教職員(対象は①に同じ。)
③ 地方公務員の育児休業等に関する法律(以下「育休法」とい。)第6条に基づき臨時的に任用された教職員(対象は①に同じ。)
 これは、地公災法制定時における市町村立学校職員給与負担法(以下「負担法」という。)の改正及びその後の関連法改正の経緯に鑑みて特例を設けているものである。すなわち、地公災法が制定される以前は、負担法の適用となる職員の公務災害補償に係る費用については、同法第1条の規定により都道府県の負担によることとされていたが、地公災法の制定に伴いこれらの職員の公務災害補償に要する費用については同法第49条第1項において基金に対する負担金の形で都道府県が負担することとなり、負担法第1条の規定から都道府県が公務災害補償に要する費用を負担するという規定が削除された。一方、産休法第3条第1項の規定に基づき臨時的に任用された教育職員(いわゆる産休補助教員)についても負担法の適用があるものとされていることから、都道府県は当該職員に係る負担金を支払わねばならないが、当該職員について基金の補償の対象となる職員に該当しないとすると両者の取扱いに矛盾が生じるため、産休補助教員については、臨時的任用であってもすべて基金の補償の対象となる職員に該当することとされた。(昭43.1.13 自治省行政局決定、昭47.1.31 自治給第4号:資料①、③)
 同様に、教員に欠員が生じた場合等に地公法第22条第2項の規定により任用された教員についても、その勤務形態、勤務内容等に産休補助教員と差異はないため、基金の補償の対象となる職員に該当することとされた。(昭43.5.2 自治給第47号、昭47.1.31 自治給第4号:資料②、③)
 また、負担法は市町村立の義務教育学校及び高等学校の職員を対象とするものであるが、県立高等学校の職員等負担法の対象とならない職員で、その任用形態が負担法対象職員と同様であるものについても、その勤務形態、職務内容等に負担法対象職員と何ら差異はなく、財政負担区分の問題だけでこれらの職員と取扱いを異にすることは地公災法の目的、職員間の均衡からみて適当でないことから、同様にすべて地公災法上の職員に該当することとされた。(昭47.1.31 自治給第4号:資料③)
 当時の産休法の対象は「教育職員」とされていたが、昭和53年に行われた同法の改正により「学校栄養職員」及び「事務職員」も同法の対象とされ、法律名においても「教育職員」が「教職員」に改められた。これに伴い、地公災法の適用に関する取扱いにおいてもおれら「学校栄養職員」及び「事務職員」を含めたものとすることとし、これらの職員が産休又は長期休暇等のため不在となる場合に同法又は地公法に基づきんじてきに任用された者についてはすべて地公災法上の職員として取り扱うものとされた。(昭59.4.3 自治給第14号:資料④)
 廃止前の義務教育諸学校等の女子教育職員及び医療施設、社会福祉施設等の看護婦、保母等の育児休業に関する法律(以下「旧育休法」という。)は、昭和50年に制定されたものであるが、同法第2条第1項に規定する「義務教育諸学校等」に勤務する同条第3項に規定する「教育職員」が、同法第3条第2項の規定により、育児休業を許可された場合において、同法第15条に基づき臨時的に任用された「教育職員」については、上記産休法に基づき臨時的に任用された職員とその勤務形態、職務内容等に差異はないため、これも地公災法上の職員として取り扱うこととされた。(昭59.4.3 自治給第14号:資料④)
 なお、同法は、育休法の制定に伴い廃止され、育児休業及び代替職員の臨時的任用に関する規定は教育職員等に限らず他のすべての職種も同様に取り扱うものとされたが、「教育職員」については職務の特殊性及びそれまでの経緯から、地公災法上の取扱いは従前どおりとされている。また、旧育休法の対象とされていなかった「学校栄養職員」及び「事務職員」が育休法第6条に基づき臨時的に任用された場合についてであるが、産休又は長期休暇等のため臨時的に任用された同職種の職員とその勤務形態、職務内容等に差異はないため、これも地公災法上の職員として取り扱うこととされている。(14~16頁)

 現行制度の複雑さを理解するためには沿革的経緯を踏まえなければならない理由がここにも存在する。

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394.臨時・非常勤教員(その6) [46.臨時・非常勤教員]

 前回、多くの県で年度末に任用期間の空白(1日~数字)を設けているのは、任用期間が12月を超えるに至った日から共済組合員資格を取得する扱いとなることもあってのことなのではないかと思われる、と書いた。
 少し補足した方がよいのかもしれない。

 昭和62年通知が発出された頃は、共済組合費が国庫負担の対象なのであった。臨時的任用の期間が12月を超えて共済組合に加入するという事態になるケースとしては、産休代替から育休代替を連続して臨時的任用されたケースが想定できるけれども、地公法22条による臨時的任用でありながら共済組合に加入するという事態は、脱法的な任用をしていることを対外的にも証明するような意味合いをもってくると思われる。しかもそれが国庫負担の対象となるとすれば、またぞろ会計検査院の指摘を受けるかもしれない、と慎重になるのも分かるような気もする。当時、各県の担当者たちは、どのような想いでいたのだろうか…。

 そのことはさておき、仮に臨時的任用が12月を超えて共済組合に加入した場合には、いったいどうなるのだろうか。現行制度では、共済組合費は国庫負担の対象ではなくなったのだから、構わないではないかと思うのだが…。
 そこで、臨時的任用職員に対する法令の適用関係を確認してみた。そうすると、臨時的任用の場合には適用除外となる法令の規定がいくつもあることが分かる。
 真っ先に説明されるのは、分限に関する規定と不利益処分に関する不服申立ての規定が適用されないことであろう(地公法29条の2)。これは、「雇用期間が相対的に短期であるため身分を保障する実益がない」からだと理解されているようだ(『逐条地方公務員法』332頁)。
 また、各種の休業制度、地方公務員法に定めのある自己啓発休業や配偶者同行休業、教育公務員特例法に定めのある大学院修学休業も適用されない。地方公務員の育児休業等に関する法律を見ると、育児休業も育児短時間勤務も適用除外になっている。(部分休業については適用除外とはなっていない。)
 そのほか、教育公務員特例法に定める初任者研修などの法定研修も適用除外となっている。
 これらの適用除外とされた制度のうち、このノートで気になるのは、育児休業にかかわって、平成22年10月に新設された国における期間業務職員の取扱いとの差異だ。
 国の期間業務職員の制度は、従来の日々雇用の仕組みを廃止し、非常勤職員として会計年度内に限って、臨時的に置かれる官職に就けるために任用する制度であるが、「1会計年度内に限って」とはいうものの、実際には3年程度は再度採用されることが見込まれるようなものとなっている。そのため、育児休業が適用されることになっているらしい。
 一方、臨時的任用職員の場合はどうかというと、先程述べたとおり育児休業は適用除外とされている。しかし、事実上だけでなく、実際の任用期間としても1日の空白もなく引き続いて12月を超えて任用された場合には、育児・介護休業法第5条第1項ただし書きの規定との関係が問題になる。すなわち、「ただし、期間を定めて雇用される者にあっては、次の各号のいずれにも該当するものに限り、当該申出をすることができる。 一 当該事業主に引き続き雇用された期間が一年以上である者 二 (略)」となっているからである。
 また、民間の労働者の場合には、雇用保険から育児休業給付金が給付されることになっているのに対して、公務員の場合には雇用保険制度が基本的には適用されないことから、共済組合から育児休業手当金が給付されることになっている。逆に言うと、育児休業給付を実施するための労働者負担分について、民間の労働者は雇用保険料の一部として、公務員は共済掛金の一部として支払っていると思われる。ところが、臨時的任用職員である公務員のうち給料表が適用される者については、基本的には雇用保険に加入しないし、共済組合にも加入しないので、育児休業給付のために必要な労働者負担分の支払いも行っていないことになっている。そうすると、臨時的任用の期間が12月を超えて共済組合に加入するという事態に至った場合には、制度上、育児休業が適用除外とされる者であるにも関わらず、共済掛金の支払いを通じて、制度上受給することの不可能な育児休業給付のための労働者負担分の負担をしていることにならないか、と思ってしまうのである。そうして考えてくると、任用期間が12月を超えるに至った臨時的任用職員については、地方公務員育児休業法では適用除外であったとしても、法の谷間としておくのではなく、いわゆる育児・介護休業法の第5条第1項ただし書きを準用あるいは類推適用すべきと理解するのが、関連法令全体の趣旨に叶うように思うのだが、どうだろうか…。
 もっとも、そもそも年度末に任用期間の空白(1日~数日)を設けるという人事運用が変更されなければ意味はないが…。

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393.臨時・非常勤教員(その5) [46.臨時・非常勤教員]

 臨時的に任用される常勤講師については、地公法22条による臨時的任用にせよ、地公法17条による期限付き任用にせよ、給料表を適用することが基本とされている。そして、公立の小中学校等に勤務する常勤講師のうち、いわゆる標準法に定めるものに係る給与は国庫負担されることになっている。(義務教育費国庫負担法)
 この国庫負担額には国が負担する限度額が定められているのだが、具体的には、「義務教育費国庫負担法第二条ただし書の規定に基づき教職員の給与及び報酬等に要する経費の国庫負担額の最高限度を定める政令施行規則(平成16年文部科学省令第28号)」に別表として定められている。その別表は職種別に分かれており、講師については、別表五が適用される。
 国庫負担制度自体はこのノートの考察の対象外なので詳しく見るつもりはないのだが、一応確認しておく。

別表第五(抜粋)
 経験年数
 1年未満     192,700円
 10年以上11年未満 251,200円
 20年以上21年未満 300,400円
 30年以上32年未満 308,000円
 32年以上     308,400円

 一見して分かるとおり、旧教育職(三)1級の水準をベースにしている。

 さて、臨時的に任用する常勤講師をテーマに考え始めたのだが、色々興味深い課題がありすぎる。何を取り上げるべきか悩んでしまう…。
 給与から離れることにはなるが、「常勤」という言葉に着目して考察してみたいと思う。これまで、常勤講師を対象に考えてきた訳だが、ここでいう「常勤」とは正規採用の教員同様の勤務時間、勤務態様を当然のごとく想定している。にもかかわらず、「常勤」講師の理解は異なっている。

 まず、給料が支給される点に着目する。
 地方自治法に基づき、地方公共団体の非常勤の職員には報酬を支給し(第203条の2第1項)、常勤の職員には給料を支給しなければならない(第204条第1項)ことになっている。次の規定を前提とすると、給料が支給される常勤講師は、地方自治法上の常勤の職員と理解されていることは間違いない。

 ところが、地方公務員等共済組合法の適用については、微妙である。
 同法では、同法の適用対象を「職員」とし、「常時勤務に服することを要する地方公務員をいう」と定義付けている。常勤講師は自治法上の常勤の職員であるのだから当然地共済法のいう「常時勤務に服することを要する地方公務員」に該当するのかと思いきや、直ちに該当するものではないのである。ご存じのとおり、常勤講師は共済組合には加入せず、協会けんぽと厚生年金に加入している。
 ちなみに当該規定は次のとおりである。

<地方公務員等共済組合法>
(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
 一 職員 常時勤務に服することを要する地方公務員(地方公務員法 (昭和二十五年法律第二百六十一号)第二十七条第二項 に規定する休職の処分を受けた者、同法第二十九条第一項 に規定する停職の処分を受けた者、法律又は条例の規定により職務に専念する義務を免除された者及び常時勤務に服することを要しない地方公務員のうちその勤務形態が常時勤務に服することを要する地方公務員に準ずる者で政令で定めるものを含むものとする。)をいう。

 常勤講師については、上記規定でいうところの「常時勤務に服することを要しない地方公務員」という理解になっている。産休代替に引き続き育休代替になった場合には1年を超えて任用されることとなる可能性があるが、そのような場合にはここにいう政令で定めるものに該当することとなり、共済組合員の資格を得ることになるのである。(「常時勤務に服することを要しない地方公務員のうちその勤務形態が常時勤務に服することを要する地方公務員に準ずる者で政令で定めるもの」のことを「常勤的非常勤職員」と呼ぶことがある。)

 このことにかかわって、過去に次の通知が発出されている。

○「義務教育費国庫負担金における共済費の取り扱いについて」(昭六二.一二.一五 文教財第一四九号 各都道府県教育委員会あて 文部省教育助成局長、文部省大臣官房総務審議官通知)
 このたび、会計検査院の昭和六二年度実地検査において、一部の都道府県において、女子教職員の出産に際しての補助教職員の確保に関する法律(昭和三○年法律第一二五号)及び義務教育諸学校等の女子教育職員及び医療施設、社会福祉施設等の看護婦、保母等の育児休業に関する法律(昭和五○年法律第六二号)に基づき臨時的に任用される産休補助教職員及び育児休業補助教育職員に係る共済費について、公立学校共済組合の組合員資格を有しないと解される者を加入させ、その者に係る共済費を負担し、これを国庫負担対象額に計上していることが指摘されました。
 ついては、産休補助教職員及び育児休業補助教育職員等に係る共済組合員資格等及び義務教育費国庫負担金における共済費の取扱いについては、下記事項に十分留意し、適正に行うように願います。
 なお、このことについては、貴管下の市町村教育委員会及び学校長に対し、周知徹底されるよう願います。
            記
1 産休補助教職員及び育児休業補助教育職員等の共済組合員資格等について
(1) 産休補助教職員及び育児休業補助教育職員等の期限を付して臨時的に任用される職員が地方公務員等共済組合施行令(昭和三七年政令第三五二号。以下「施行令」という。)第二条第五号に掲げる者に該当する場合には、地方公務員等共済組合法(昭和三七年法律第一五二号)第二条第一項第一号及び第三九条第一項並びに施行令第二条の規定により任用期間が一二月を超えるに至った日から公立学校共済組合の組合員資格(以下「組合員資格」という。)を取得するものであること。
(2) したがって、上記(1)の取扱いに反して、法令上組合員資格を有しない者を公立学校共済組合に加入させている場合には、速やかにその適正化を図ること。また、このことについては、別途公立学校共済組合あて通知していること。

 昭和62年のこの通知が発出される以前は、常勤講師のうち任用期間が6か月以上のものなどの条件を満たすものについて、公立学校共済組合の加入資格を認めていた都道府県支部が存在していたのであった。
 多くの県で年度末に任用期間の空白(1日~数字)を設けている。それは、地公法22条による臨時的任用が1年以内の任用を前提していることを理由に挙げていると思われるが、それだけではなく、この通知の記書きにあるように、任用期間が12月を超えるに至った日から共済組合員資格を取得する扱いとなることもあってのことなのではないか、と思われる。

 なお、蛇足ながら、臨時的に任用される国家公務員が共済組合員資格を有しない取扱いになっていることについては、法的に明確になっている。

○国家公務員共済組合法(昭和33年法律第128号)
(定義)
第二条  この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
 一  職員 常時勤務に服することを要する国家公務員(国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)第七十九条又は第八十二条の規定(他の法令のこれらに相当する規定を含む。)による休職又は停職の処分を受けた者、法令の規定により職務に専念する義務を免除された者その他の常時勤務に服することを要しない国家公務員で政令で定めるものを含むものとし、臨時に使用される者その他の政令で定める者を含まないものとする。)をいう。

○国家公務員共済組合法施行令(昭和33年政令第207号)
(職員)
第二条  (略)
2  法第二条第一項第一号に規定する臨時に使用される者その他の政令で定める者は、次に掲げる者とする。
 一  国家公務員法第六十条第一項の規定により臨時的に任用された者
 二  国家公務員の育児休業等に関する法律第七条第一項又は国家公務員の配偶者同行休業に関する法律第七条第一項の規定により臨時的に任用された者
 三~四 (略)

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391.臨時・非常勤教員(その4) [46.臨時・非常勤教員]

今回は、臨時的に任用する常勤講師の給与上の格付けなどについて見ておきたい。便宜上、教員給与を考える際のベースとなる小中学校の講師を基本にする。

 手始めに、このノートで何度も考察の手がかりにしてきた「国家公務員等の旅費に関する法律の運用方針について」(昭27.4.15 蔵計922 大蔵省主計局長通牒)を確認する。国立大学が法人化される前のものであるので、当時の11級制に基づく職務の級を「旧何級」と表記し、現行10級制に基づく職務の級に切り替えた上で( )内に「新何級」と表記する。

別表第一 行政職俸給表(一)の各級に相当する職務の級
 行政(一)     教育(三) *教育(二)も同じ
旧4級(新3級)  -
旧3級(新2級)  旧1級の12号俸以上(新1級の41号俸以上)
旧2級(新2級)  旧1級の6~11号俸(新1級の17~40号俸)
旧1級(新1級)  旧1級の5号俸以下(新1級の16号俸以下)

 号俸の存在しない再任用職員の格付けの方も見ておく。

別表第二 再任用職員の行政職俸給表(一)の各級に相当する職務の級
 行政(一)     教育(三) *教育(二)も同じ
旧4級(新3級)  -
旧3級(新2級)  旧1級(新1級)
旧2級(新2級)  -
旧1級(新1級)  -

 つまり、教育(三)1級は、行政(一)旧3級(新2級)と同格とみるのが基本となっている。ちなみに、教育(三)2級は、行政(一)旧6級(新4級)と同格とみるのが基本となっている。
 行政(一)の級別標準職務表を見ておく。

職務の級 標準的な職務
旧1級(新1級)
 定型的な業務を行う職務
旧2級(新2級)
 相当高度の知識又は経験を必要とする業務を行う職務
旧3級(新2級)
 1 主任の職務
 2 特に高度の知識又は経験を必要とする業務を行う職務
旧4級(新3級)
 1 本省、管区機関又は府県単位機関の係長又は困難な業務を処理する主任の職務
 2 地方出先機関の相当困難な業務を分掌する係の長又は困難な業務を処理する主任の職務
 3 特定の分野についての特に高度の専門的な知識又は経験を必要とする業務を独立して行う専門官の職務

 つまり、教育(三)1級が適用される講師は、行政(一)が適用される職種の旧3級(新2級)の主任と同格の職務と責任を有すると見なされている。複数の部下を監督する立場の係長より職務と責任の度合いは低いとみていることになる。
ちなみに、教育(三)2級の教諭については、同通牒では、行政(一)旧6級(新4級)の本省困難係長、管区機関の課長補佐等と同格とみていることになっている。

 それでは、例によって、格合わせ方式により制度上の対比を行う。金額は、27年4月改正後、つまり給与制度の総合的見直しによる見直し後のもの。1級なので高卒ベースで制度表を作る。紙幅の関係から、ピックアップして掲載する。(★は最高号俸)

<教育(三)1級VS行政(一)1級>
 制度年齢   教育(三)a    行政(一)b    差引(a/b)
  18歳  1-1 150,900円  1-5 142,100円   8,800円(1.06)
  22歳  1-17 181,400円  1-21 163,600円  17,800円(1.11)
  30歳  1-49 237,000円  1-53 213,300円  23,700円(1.11)
  40歳  1-89 288,100円 ★1-93 244,900円  43,200円(1.18)
  49歳 ★1-125 304,400円 -

<教育(三)1級VS行政(一)相当級>
 制度年齢   教育(三)a    行政(一)b    差引(a/b)
  26歳  1-33 211,100円  2-5 194,700円 16,400円(1.08)
  30歳  1-49 237,000円  2-21 222,200円 14,800円(1.07)
  40歳  1-89 288,100円  2-61 275,400円 12,700円(1.05)
  49歳 ★1-125 304,400円  2-97 293,500円 10,900円(1.04)
  56歳   -         ★2-125 301,900円

 教育(三)1級と行政(一)相当級の俸給制度上の水準差をみると、最高号給付近の1.04から大卒初任給基準の1.11までとなっている。ちなみに教育(三)2級の場合は、高い制度年齢は1.02~1.03で大卒初任給基準当たりは1.13となっている。
 制度設計上何歳まで号俸が用意されているかに着目すると、教育(三)2級は制度年齢56歳(大卒ベース)まで号俸が用意されているのに対して、1級は49歳(高卒ベース。大卒ベースに置き直せば48歳)までしか号俸が用意されていない。
 一方、行政(一)の方は、1級は40歳(高卒ベース)で頭打ちとなっているが、2級は主任に適用される職務の級であることもあって、56歳まで号俸が用意されている。
 講師の職務は、学校教育法で「教諭(略)に準ずる職務に従事する」と規定されており、実際上、正式採用の職員として生涯にわたって勤務することは想定されていないと言ってよいだろう。制度年数上の号俸数が少ないのは年功的要素が現在以上に色濃かった時代からのものなのだが、その理由については、そのような臨時の職であるとの前提に立って設計したのだと理解するほかないのではないかと考えている。


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390.臨時・非常勤教員(その3) [46.臨時・非常勤教員]

 前回、臨時的に任用された職員の給与の取扱いについて、公立の義務教育諸学校等の教職員として勤務する場合には給料表が適用されることが多いが、それ以外の職場で勤務する職員の場合には給料表が適用されないのはなぜなのか、との疑問を示した。
 まず、『自治体の新臨時・非常勤職員の身分取扱(第1次改訂版)』(学陽書房、2002年)ではどのように解説しているのか、確認しておく。

 「② 臨時的任用職員の勤務条件は、通常勤務職員と同様、条例で定めなければならないが、必ずしも、すべての勤務条件が通常勤務職員と同一でなければならないものではない。例えば、給料については給料表を適用しても構わないし、給料表以外の賃金単価を用いても差し支えない。定期昇給も特別昇給も適用されないが(適当な給料表の級に格付けすることが必要ならば行っても構わない。)
 給料は賃金で支給されるが、その額は条例で定めるより、年度毎に予算で決められるのが通常である。(略)」(51頁)

 この記述では、要するに、「給料表を適用しても構わないし、賃金単価を適用しても構わない、どちらでもよい」と説明している。
 別の箇所では、次のような記述もある。

 「(1) 臨時的任用職員は一般職の職員として地公法の適用を受けるので、勤務の対価は、原則として、給与条例によることになるが、臨時的任用職員という性格から、日給であり手当は時間外勤務手当と休日給に限定されるのが通常である。(略)」(120頁)

 こちらの方は、給料表の給の字も出てこない。
 「身分取扱いの実際」と題した第2部の記述も見てみる。

 「臨時的任用職員の給料は、正規任用の通常勤務職員とは切り離し、任命権者が事務執行規程で定めるのが一般的であることはすでに触れたところである。具体的には、「給料については、日額とし、賃金予算の範囲内において支給する」等と規定し、予算上の統一単価(時間単価)によるのが一般的である。しかし、採用候補者名簿がない場合に行う臨時的任用の場合は、理論的には職自体が恒久的であると考えられることから、その場合は、正規任用の通常勤務職員の給料体系に準じたものを考える必要もあろう。」(183頁)

 「正規任用の通常勤務職員の給料体系に準じたもの」と述べているが、正規任用の職員と同じ給料表を適用してよいとまでは述べていない。
 しかし、その続きに教職員の場合の記述が出てくる。

 「臨時的任用職員のうち、産休法又は育休法の規定に基づき任用された教職員の場合は、産休又は育休に入る教職員と同等以上のレベルで教科を担当し、授業の継続性を確保する必要性がある等の理由から、給料額の決定を初め、正規の教職員が適用を受ける給与制度がそのまま適用される。すなわち、採用の時点で、正規任用の通常勤務教職員と同様に、経験年数、学歴免許等を考慮した上で、給料額が決定される。また、給料の調整額や諸手当も正規の教職員と同等の条件で支給される。」(183頁)

 教職員には正規任用と同様に給料表を適用すべきことが示され、その理由も簡単に述べている。その説明に違和感はない。
 そして、この記述に続いて、「いずれにしても、任用形態の相違を無視し、画一的に統一単価で給料額を決定するのは、合理的とは言いがたい。」と述べるのである。
 例えば、こんな行政実例がある。

○昭三一.三.八 自治丁発第三三号 石川県総務部長あて 自治庁公務員課長回答「地方公務員法の疑義について」
照会
三 臨時的任用の職員は給与、勤務時間その他の勤務条件について、別個に条例で定めない限り、他の職員と同様の取扱となすべきか。
回答
三 臨時的任用の職員の給与、勤務時間等について、他の職員と異なる取り扱いをしようとする場合は、その異なる措置についての定めがなければならないものと解する。

○昭三六.六.五 自治丁公発第四七号 高知県総務部長あて 自治省公務員課長回答「臨時職員の給与の取り扱いについて」
照会
 地方公務員法第二二条の規定により雇用される臨時的任用職員は、一般職の公務員であり職員の給与に関する条例の適用を受けるものと解されるが、この場合
(1) 一般職の職員の給与に関する条例中に「臨時職員の給与については、この条例の規定にかかわらず予算の範囲内で任命権者が別に定める」と規定するのは、地方公務員法第二四条第六項の規定に違反するか否か、またその理由。
(2) 適法であるとすれば適当か否か。不適当である場合その理由。
回答
 地方公務員法第二二条の規定に基づく臨時的任用職員の給与については、他の職員と同様に給与に関する条例を適用すべきものであるが、同条例中に特別の定めをして差支えないものと解する。

 臨時的任用の教員に関しては、次の実例がある。

○昭三一.八.二○ 委初第九一号 北海道教育委員会教育長あて 文部省初等中等教育局長回答「『女子教育職員の産前産後の休暇中における学校教育の正常な実施の確保に関する法律』の施行に伴う臨時的任用職員の身分取扱等について」
照会
一 臨時的に任用される職員は、地方公務員法第三条に規定する一般職に属する職員と解し、身分等は一般正規任用職員と同様の取扱を実施してよいか。
二 前号の場合「可」とすると、教員給料表を適用させなければならないと考えるがどうか。
三 臨時的に任用される職員の任用期間の特殊性にかんがみ、給料、扶養手当及び勤務地手当のみを支給し、その他の給与を支給しない旨、条例をもつて定めても差支えないか。
回答
一 女子教育職員の産前産後の休暇中における学校教育の正常な実施の確保に関する法律(以下「法律」という。)第四条の規定により、臨時的に任用される教育職員は、地方公務員法第三条に規定する一般職の職員である。
二 教員としての給料表が適用される。
三 法律第四条の規定により、臨時的に任用される教育職員は一般職の職員であるから、地方公務員法第二四条第六項の規定により、給与は条例で職員の職務と責任に応じて定めなければならない。なお、教育公務員特例法第二五条の五の規定の適用がある。

○昭三一.八.二七 委初第二二五号 岩手県教育委員会教育長あて 文部省初等中等教育局長回答「女子教育職員の産前産後の休暇中における学校教育の正常な実施の確保に関する法律に基づき臨時的に採用される教育職員の諸給与について」
照会
二 諸手当の支給について
  市町村立学校職員給与負担法第四条に基づき支給すべきと思われるがどうか。
回答
二 市町村立学校職員給与負担法第一条及び第二条の教員には臨時的に任用される教員も含まれる。

 以上要するに、臨時的任用職員の給与は、他の職員と同様に給与条例を適用すべきであり、従って給料表を適用すべきであるが、条例に基づき別の取扱いをしても差し支えないと考えられている、ということだ。
 また、少なくとも産休代替の教員については教育職給料表を適用すべきであること。そして、少なくとも都道府県が給与負担すべき公立学校教員には臨時的任用の教員も含まれる、すなわち、報酬や賃金ではなく給料の支給が前提である、ということなのである。産休代替にせよ、欠員補充にせよ、児童生徒に対する教育をつかさどる、すなわち、小学校での学級担任をはじめ、教科指導だけでなく、生徒指導も含めてフルタイムの業務に責任を持って従事する必要があることを踏まえると、正規教員と同様の身分取扱いを基本とすべきことは言をまたないのではないだろうか。同僚がカバーするとともにアルバイトを採用することでなんとか執行体制を確保できる可能性が比較的高い他の一般行政分野とは、大きく異なる。

 ちなみに、国家公務員の場合は、国家公務員法第60条第1項の規定により、地方公務員同様に臨時的任用を行うことができる。臨時的任用をした場合に国家公務員の人事異動通知書には給料はどのように記載されるのだろうかと思い、「人事異動通知書の様式及び記載事項等について」(昭和27年6月1日13─799、人事院事務総長発)を見てみたが、明らかにはならなかった。そこで、『国家公務員 任用実務のてびき』を見てみた。第5節の「臨時的任用」の説明には、「臨時的職員(臨時的任用された職員のこと=編注)は常勤職員であり、定員法上も、定員内である」とある。また、臨時的任用を行う場合の人事異動通知書については、「係員(○○局○○課)に臨時的に任用する 任期は平成○○年○○月○○日までとする 行政職俸給表(一)○級○号俸を給する」という記載例になっている。
 国においては、臨時的任用であっても、給料表を適用するのが基本であるらしい。

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389.臨時・非常勤教員(その2) [46.臨時・非常勤教員]

 非正規社員の雇用情勢について、3月27日に日経新聞が次のように報じた。

雇用の質、改善進む 非正規社員が2月減少
2015/3/27 21:45
 雇用の質が改善しつつある。パートや派遣など非正規社員は2月に1974万人と前年同月より15万人減った。マイナスは月次データをさかのぼれる昨年1月以降で初めて。正社員数の伸びも最大になった。人手不足が深刻になるなかで企業は正社員への転換を進めている。個人消費の押し上げにもつながりそうだ。
 総務省が27日まとめた2月の労働力調査によると、完全失業率(季節調整値)は3.5%と、前月から0.1ポイント下がった。就職が進んで2カ月ぶりに改善した。職を探す人1人に対する企業の求人数を示す有効求人倍率も、1.15倍と0.01ポイント上がった。22年11カ月ぶりの高水準だ。
 働く人にとっては仕事を見つけやすい一方、企業から見れば採用が難しくなっている。そのため待遇を改善して人材を囲い込もうとしている。
(以下、略)

 非正規社員の雇用や待遇が改善されることは、本当に喜ばしい。
 さて、臨時・非常勤教員についてであるが、臨時・非常勤の教員といえば、講師の存在をぬきには考えられない。
 講師は、教諭又は助教諭に準ずる職務に従事する職であり(学校教育法37条16項)、必置の職とは位置づけられていない。また、講師は、常時勤務に服しないことができる(同施行規則64条)とされている。つまり、教諭はすべて常勤でないといけないが、講師は常勤でも非常勤でもよい、ということになっている。
 まず、常勤の講師について考えてみたい。

 手始めに、文部科学省教職研究会編『全訂新版 学校経営ハンドブック(教職研修総合特集 教職ハンドブック4)』(教育開発研究所、平成2年)を開いて関連しそうなページを見てみよう。常勤講師の制度的理解に役立ちそうな部分は、「3-5 臨時的に任用される教員の身分」である。(非常勤講師の身分については、3-6で解説されている。)

 3-5 臨時的に任用される教員の身分
要点
1 教員の臨時の任用には、地方公務員法第二二条による場合と、地方公務員法第一七条による場合がある。
2 これらの教員の身分取り扱いについては、地方公務員法第二二条による場合に身分保障等の規定がないほかは、地方公務員法の規定が適用される。
解説
 教員の臨時的任用とその身分取り扱い
 教員が休職になったり、産前産後の休暇や育児休業中の教員の補充等の場合に臨時的に任用された教員が学校に配属されている。
 教員を臨時に任用する方法には次の二つの方法がある。
① 地方公務員法第二二条第二項により、任命権者が緊急の場合や臨時の職に関する場合に六月をこえない期間で臨時的任用を行う。なお、この場合には、人事委員会の承認を得て六月をこえない期間で更新し、最長一年間の臨時的任用ができる。
② 地方公務員法第一七条に基づく正式の任用を期限を付して行う。
 また、これらの臨時に任用された教員の身分取り扱いについては、前者の臨時的任用については、地方公務員法第一七条に規定する正式任用の特例であって同法第二二条第六項により、正式の任用に際してはいかなる優先権も与えられないこととされており、また、同法第二九条の二第一項により、地方公務員法の身分保障および不利益処分に関する不服申し立てに関する規定ならびに行政不服審査法の規定は適用されないが、その身分取り扱いについては、地方公務員法の規定が適用される。
 期間を付して正式に任用した教員については、正式な任用であり、地方公務員法の規定はすべて適用される。(202頁)

 『学校経営ハンドブック』では、臨時的に任用される教員を講師に限定していない。そのことは翻せば、講師に限定されるどころか、実際に教諭として臨時的任用している自治体は存在するし、制度的には臨時的任用の校長や教頭のありうる。
 なお、臨時的任用については、地公法22条によるもののほか、産休代替法(女子教職員の出産に際しての補助教職員の確保に関する法律)3条や育児休業法(地方公務員の育児休業等に関する法律)6条によるものがある。

 ところで、これらの規定に基づき臨時的に任用された職員の給与の取扱いについてだが、公立の義務教育諸学校等の教職員として勤務する場合には給料表が適用されることが多いが、それ以外の職場で勤務する職員の場合には給料表が適用されず、賃金が支給される臨時職員という位置付けになっていることが多いと思われる。なぜそうなっているのか…。

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387.臨時・非常勤教員(その1) [46.臨時・非常勤教員]

  日本の非正規労働者は年々増加し、今や労働者全体の約4割を占めるといわれている。
 公立小・中学校の非正規教員については、平成17年度では教員全体の12.3%(8.4万人)であったが、平成25年度では教員全体の16.5%(11.6万人)に増加している。平成25年度の状況を詳しく書くと、正規教員584,801人に対して、非正規教員は臨時的任用教員63,695人+非常勤講師52,050人=115,745人、そのほか再任用短時間勤務教員等2,812人となっているらしい。(初等中等教育局財務課調べ)

 地方公共団体における臨時・非常勤職員にかかわる問題の理解するには、学陽書房発行の『自治体の新臨時・非常勤職員の身分取扱(第1次改訂版)』(地方公務員任用制度研究会編、2002年)が入門書となる。発行されてから15年近く経過しているが、基本的な問題についてはほぼ網羅されていると思う。読み進めるに従って、頭の中がこんがらがってきて、深い霧の中に迷い込んだ気分になる。
 この臨時・非常勤職員を巡る問題にかかわって、2012年に2冊の大変興味深い本が出版された。1冊は、非正規公務員をめぐる裁判例の系譜と傾向について解説した上林陽治『非正規公務員』(日本評論社、2012年)、もう1冊は、戦後日本における公務員の定員政策と臨時・非常勤職員問題の歴史的変遷からはじめて、地方自治体における臨時・非常勤職員をめぐる様々な問題を論じた早川征一郎・松尾孝一『国・地方自治体の非正規職員』(旬報社、2012年)である。非正規公務員=臨時・非常勤職員が全国で増大する中、いずれも最近の動向を理解するために大変役に立つ本である。
 これらの著作について内容を取り上げるだけの余裕はないが、もう一つ紹介しておきたいレポートがある。それは、「地方公務員月報(平成25年12月号)」に掲載された濱口桂一郎(労働政策研究・研修機構統括研究員)『非正規公務員問題の原点』である。濱口氏の著作は何回かこのノートでも紹介しているが、今回取り上げるレポートもきわめて明快な論理で、非正規公務員めぐる根本問題を解説してくれている。いつも感じるのだが、氏は、実際に生起している現象について、制度の基本を押さえつつ、歴史的変遷を踏まえて、問題が発生する核心を平易なモデルの形で示してくれている。

1 「公務員」概念のねじれ
 公務部門で働く者はすべて公務員であるというのは、戦後アメリカの占領下で導入された考え方である。戦前は、公法上の勤務関係にある官吏と、司法上の雇傭契約関係にある雇員(事務)・傭人(肉体労務)に、身分そのものが分かれていた。これは、現在でもドイツが採用しているやり方である。そもそも、このように国の法制度を公法と私法に二大別し、就労関係も公法上のものと司法上のものにきれいに分けてしまうという発想自体が、明治時代にドイツの行政法に倣って導入されたものである。近年の行政法の教科書を見ればわかるように、このような公法私法二元論自体が、過去数十年にわたって批判の対象になってきた。しかし、こと就労関係については、古典的な二元論的発想がなお牢固として根強い。
 ところが、アメリカ由来の「公務部門で働く者は全員公務員」という発想は、公法と私法を区別しないアングロサクソン型の法システムを前提として生み出され、移植されたものである。公務員であれ民間企業労働者であれ、雇用契約であること自体は何ら変わりはないことを前提に、つまり身分の違いはないことを前提に、公務部門であることから一定の制約を課するというのが、その公務員法制なのである。終戦直後に、日本が占領下で新たに形成した法制度は、間違いなくそのようなアメリカ型の法制度であった。それは戦前のドイツ型公法私法二元論に立脚した身分制システムとは断絶したはずであった。
 ところが、戦後制定された実定法が明確に公務員も労働契約で働く者であることを鮮明にしたにもかかわらず、行政法の伝統的な教科書の中に、そしてそれを学生時代に学んだ多くの官僚たちの頭の中に生き続けた公法私法二元論は、アメリカ型公務員概念をドイツ型官吏概念に引きつけて理解させていった。その結果、公務部門で働く者はすべて(ドイツ的、あるいは戦前日本的)官吏であるという世界中どこにもあり得ないような奇妙な事態が生み出されてしまった。結論を先取りしていえば、その矛盾を背負って生み出され、増大していったのが、非正規公務員ということになる。(3~4頁)

 そして、「この八方ふさがりの状況に穴を開けるにはどうしたらいいのか、一つの提案を披露させていただきたい」と述べ、ジョブ型正社員のアイデアを公務部門に応用した「ジョブ型公務員」の導入を提唱するのである。(2以後の論述も紹介したいところだが、紙面の都合もあるので割愛する。)

 公立小・中学校の非正規教員=臨時・非常勤教員の給与を考えるにしても、その身分取扱いの特殊性を理解しなければ正しく理解することなど難しいだろう。どこまで考察できるか分からないが、次回以降、思いつくままにテーマを取り上げて少しずつ考えていきたい。

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